第33話 魔物花


血染めの月の丑三つとき 


死者を悼んで虫が鳴いている


それは母を呼んでいるのだろうか 


妖しい声でお互いを呼んだ不吉な夜から


恐ろしい魔物が僕の顔に潜んでいるのだ 


ああ、僕もあの狐花を弄んだ少年と同じ藁人形 



闇の中に壊されて


この疲れ切った世界に生きているのだから


狐花は温かい 


狐花は僕らを救う


聖なる母の面影と同じで


穢れた血筋や出生の秘密をも消してくれる


この切りつけられた胸に


狐花は壊れた心臓をも癒し、修復してくれる




この狐花を一生抱きかかえたい 


そうならば僕は永劫の間、母に抱かれ、幸せを掴みとれる 


生まれたばかりの赤ん坊が母を求めて乳を吸うように

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