第32話 千本狐花


時を刻み出す逢瀬の時には


逢い方の血まみれの狐花 


この上なく美しく似合う、そんな君


血潮の鮮血の優美さ可憐なこと 


狐花の目ん玉を舐めまわしたら


僕を持って歩けばいい


僕の想い人はここにいるのだから 


赤く染まった黒い斧を追っ払って



でも、滴る快楽とは裏腹に胸の鼓動は頼りない 


悲しく時を刻んでびくびくと


指先の血を舐めまわすと


狐花の顔と目線が合った 


それでも、僕は狐花を舐め続け、


人の顔はこの世に生きる魔物が巣食う藁人形なのに



ねえ、空っぽの狐花は


温かい母から受け継いだ血を穢していく 


無性にその狐花の冷え切った唇に己の血が滲んだ 


死の接吻を隠して母の血に帰らせる 


これでいいのか、そうだ、いいともね 


甘い声音の音楽を諳んじる 

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