Chapter24. 抗争の終結
爆発の正体は、もちろんC4プラスチック爆弾だった。
それの扱いに長けているエスコバーが起爆したものだったが、最初から警察に「全面抗争に発展しないように、警察官の味方をして、相手の中国人側を威嚇して欲しい」と言われていたから、蠣崎としては、「威嚇」に使ったつもりだった。
だが、威力が強すぎたのか、数人の中国人は負傷しているようだった。
それに対し、当然ながら、中国人たちからは怒号が響いてきた。
中国語と一口に言っても、標準の北京語以外にも広東語など実は7種類もの言語があるという。
もちろん、そもそも中国語を理解していない蠣崎には、何と言っているかまったくわからないが、ひとまず「怒って」いるのは、相手の表情を見ていればわかる。
当然、銃を撃ってきた。
(マズい)
当初の目論見以上の抗争に発展しそうな勢いに、蠣崎が戸惑うが。
「ちょっと行ってきますね~」
「じゃあ、私も」
シャンユエと、JKが、少しも躊躇せずに、いきなり歩いて、銃弾飛び交う中に、突っ込んで行った。
「おい」
呼びかけるも、背中を見せるだけで、右手で手を振るだけの二人。
そして、
―キン!―
―カン!―
ナイフと日本刀の甲高い金属音だけが響き渡り、辺りは銃声と怒号、鬨の声のような歓声と、硝煙に包まれ、蠣崎のいる位置からはよく見えなくなっていた。
おまけに、警察官たちは拡声器から中国語で呼びかけ、盾を持って、彼ら中国人に向かって行く。
つまり、蠣崎からはまったく状況が把握できない様子になる。
だが、直後、彼は信じられないものを目撃することになる。
「一体、どうなってるんでしょうか、社長?」
心配そうに呼びかけてきた、小山田に、
「わからん」
とだけ回答していたら。
硝煙が晴れて、銃声が止んでいた。
そこにあったのは、後ろ手を縛られて、大人しくしている多数の中国人たち。一方で、同じように日本人たちも警察官に取り押さえられていた。
つまり、「喧嘩両成敗」という形で、「騒乱」を招いたとして、双方が警察官に連行されていた。
もっとも、その裏には、彼ら自体を「取り押さえた」シャンユエやJKの活躍があったが。
何事もないように戻ってきた、シャンユエとJKのそれぞれの「得物」を見ても、少しも血に染まっていなかった。
「どうやったんだ?」
問いかける彼に、彼女たち「女傑」が答える。
「大したことはしてません。ちょっと関節を決めて、抑えただけです」
「私、父から格闘術も教わっていてね。武器を使わずに、相手を制圧することもできるの」
何でもないことのように、まるで散歩から戻ってきたかのように言っている、シャンユエとJKが、蠣崎は恐ろしい存在だと思うのだった。
自衛隊には、「自衛隊格闘術」というのがあり、これは日本拳法をベースに、柔道と相撲の投げ技、合気道の関節技を採り入れたものだという。
もちろん、蠣崎も習ったが、ここまで簡単に相手を制圧、しかも多数ということを考えると、目の前で起こった光景が信じられないのだった。
まさに、文字通り「電光石火」の早業で、相手を瞬く間に制圧してしまったのだ。
こうして、「事件」はあっさりと解決し、カムイガーディアンズは、警察から多額の報酬金を受け取ったが、蠣崎はどうも釈然としない思いがするのだった
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