#05 死

 ふっと思い出す。あの放置されたタイムマシンを。


 完成しているのか、いないのかが気になったのだ。


 マシンが置いてある部屋に向かい、ゆっくりと扉を開けた。


 そこにも、あれから時が止まっていたのか、完成間近のソレが、そのままで……、


 僕を待っていたかのようひっそりと鎮座していた。


 そうだ。


 間違いなく完成されずに放置されていたワケだ。とても信じられなかったけども。


「そうか。でも何故……?」


 僕は、また電話を手に取って再び共同研究者の自宅に電話をかけた。


「また貴方? 先ほどからなんなんですか? 彼は死んだんです。間違いなく……」


 と、名乗る前に聞きたい事を答えられてしまった。


 死んでいた、やつは既に。


「昨日、死んだんです、彼。もうかけてこないで。こっちの気持ちを考えて下さい」


 そう。死んでいたワケだ。


 電話口に出たのは、やつの奥さん。画面に表示された研究所の番号を見て即座に応えたんだろう。死んだと。いや、死んだのはいい。むしろ手間が省けた。しかし、やつはタイムマシンの利権を独占する為に僕をハメたはずなのだ。じゃ、何故……、


 ……肝心のマシンは完成していないんだ?


 ともかく、僕は意味がない電話を切った。


 そして、


 僕だけが残された研究室は水を打ったかのよう静かな空間に変貌する。昨日、やつは死んだ。まるで図ったように僕の出所と合わせて。加えて、タイムマシンは完成していなかった。彼では完成させられなかった。じゃ、誰にハメられたのだ?


 ……一体、誰に?


 そうだ。


 今、考えれば不思議な点が一つだけ在る。


 やつは自分がタイムマシンを完成させる事が出来ないと分かっていた。多分だが。


 だとしたら、完成させたあとに僕をハメれば良かったはず。


 でもそうしなかった。完成間近とはいえ、完成する前だった。それは何故なのか?


 そして、僕をハメて利益を得る人間とは誰なんだ?


 また頭を抱え込む。力一杯。ワカラナイ。


 ボクは、ダレにオカエシすればイイのだ?

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