#06 手紙

 困惑しまって自然と視線が泳いでしまう。


 泳いだ視線の先、タイムマシンの上に手紙が置いてある事に気づく。


 それは、誰からの手紙なのか分からない。


 それでも困り果ててしまっていた僕はゆっくりと手紙を手に取った。


 ……意を決して開封する。


*****


 僕から、僕へと書き記す。


 君は、共同研究者のやつがタイムマシンの利権を独り占めする為に君をハメたと思っていた。それは、ある意味で間違っていない。言うまでもないが、やつは確かにマシンの利権を独り占めしようとしていた。君が邪魔だった。それも確かだ。


 ただし、彼は、君が考えるより、はるかに酷いやつだった。


 つまり、


 マシンが完成したあと、君を殺そうと画策していたワケだ。


 もちろん、莫大なカネを生む、利権を独り占めする為にだ。


 だから、僕は、それを阻止する必要が在った。たとえ過去の君に辛酸をなめさせて恨まれようとも、そうする必要があった。何故だかは改めて確認するまでもないだろう? でも、まあ、敢えて、万全を期すれば、僕が生き残る為にだ。


 だから一芝居うった。君をハメたワケだ。


 タイムマシンとは彼からの出資を無心する為の詐欺だと刑務所に送り込んだのだ。


 僕が、今、言ってる事の意味が分かるか?


 そうだ。


 ハメたのは実のところ僕自身だったんだ。


 未来にいる僕が、過去の君をハメたんだ。


 つまり、


 命の安全が保証されている刑務所に送り込む事で、やつが企てていた暗殺計画から守ったワケだ。やつでも手を出せない場所へと送り込んでだ。無論、やつが、昨日、死んだ事も偶然ではない。何故ならば、僕は未来から来た君なのだから、


 やつが、死ぬ時期も分かっていたからな。

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