第4話 作品の添削にお金を払うのではなく

 ということで、二種類の添削サービスを使ってみて、得られたことをまとめます。


1.気付けない悪癖を発見するには、非常に役立つ。


 ボクら、デビュー前の人間には、かなりの書き癖があります。

 書き癖は、味わいでもありますが、読みにくさでもあります。

 文学系の新人賞では「下読みさんによる『振り落とし』機能」が発生するので、読みにくさは障害でしかないです。

 特に一次の下読みさんは「いい作品を探す」というよりも「欠点のある作品を落とす」作業だそうで、最初の数枚で欠点がある場合、そこで止まります。

 商業的に良いとされる作品は、欠点が少ないわけですから、理にかなっているとも言えます。

 ボクの場合は地の文に「断定形」が頻出するという部分が見つかりました。

 これ、自分では全く気付いていませんでした。読み直しても気付けない「悪癖」です。指摘されて初めて「確かに、多いかもな」と感じました。

 ということで、新人賞の下読みさん対策という意味では、非常に有意義でした。

 書き癖を直しても、そこにある文学性やストーリーは失われないし、読みやすい文章にしたほうが、何よりも読者の為です。


 カクヨムでも、読んでいて「変な癖があるなぁ」という人は多いです。

 自分では気付けない癖があることに、気付くというのは、読みやすい文章を作る上では、重要なことだと思います。


 例えば、今の文章では、句読点の打つ位置が、微妙に癖のある位置です。

 こういうところも欠点なのです。


 ワインの渋みを抜くように、ゴルフのスイングを改良するように、より理想に近づける為には、この「第三者の指摘」というのは、重要だなと、痛感しました。


 一方で、全てを添削者の意向通りにするのも、また違うなと感じました。

 添削する方々は「ここは言わなくても分かる」とカットできる箇所を教えてくれますが、言う通りにカットしていくと、かなり読者の読解力に委ねる文章になります。

 これに関しては、塩梅ではないかな? と。

 全部、読者の想像力に委ねるよりも、ここぞというところで委ねるべきではないかと思っています。スタイルの問題でもありますが。



2.基本的な部分は、セルフで直してから添削サービスを使う方が良いかも。


 添削者も慣れているので、どれくらいセルフでやってきたのか、一目でわかる様子です。それで依頼者の作者としての能力を計っている様子が窺えます。

 また、基本的な部分の添削をさせられると疲れるのか、かなり指摘が大雑把になりがちです。

 この「基本的な部分」を知るために添削サービスを使うというのはアリかナシかで言えば、ボクはナシだったなぁと、反省しています。


 なので、ある程度、自分で直してから、添削サービスを受けるといいと思います。

 ちなみに、ボクの指摘された基本的な部分は、以下になります。


(主に、2の作家先生の添削)

・「~と言う」「~と言った」「~ということ」は使うな

・「その」「それ」は使うな

・当たり前のことは書くな

・「つまり」は使うな。言い換えるな。

・「~の為」は「~のため」に開け。

・「出来た」は「できた」に開け。

・「事」は「こと」に開け。

・「筈」は「はず」に開け。


※ 延々と「そこは漢字を開け」という話が続くので飛ばします。


・強調の言葉を使い過ぎる悪癖(指摘されるまで気付かなかった)

・断定形を使い過ぎる悪癖(指摘されるまで気付かなかった)

・「この街」「あの二人」「その紙」は、名前が登場した後は固有名詞に変えろ。

・セリフに返事を入れるな。「ああ、そうだよ」「うん」「お、おう」は使うな。

・セリフにオウム返しは使うな。例えば、

 「ジパングから来た」

 「ジパングだって?」

 は駄目。

・熟語は平仮名と漢字を絶対に混ぜるな。「おとぎ話」は「御伽話」。

・登場人物の情報は早めに出せ。名前、風貌、その他を後出しするな。後で名乗ることをさせるな。

・「何故ならば~だったからだ」は駄目。理由を後から書くな。先にかけ。読者は書かれた順にしか理解できない。

・「仲間」「希望」「自由」はこの時代(十五世紀末の話)にはない単語だから、言い換えろ。


 ……ふぅ。鬱になりそうなので、この辺で。

 こういうのが延々と100ページくらい続きます。


 こんな感じで出版界の伝統的な小説作法を全く知らなかったことが分かりました。

 これってボクだけですかね?

 デビュー前の方々は、割と知らないような気もします。


 指摘された部分は、ほとんど修正しましたが、これはやはり新人賞云々以前の基本の事だったかもしれないなぁと。

 もったいないことをしました。

 調べればわかったかもしれないのに……。


 ちなみに、反論するわけじゃないですが、ラノベはこれらの理の外にいるのか、「~と言った」なんかの表現は、人気の作品にも普通に登場します。時代物のライトノベルにも、割と「自由」とか「君」とか出ます。


 ただ、この先生が無知なわけでは決してありません。

 新旧エンターテインメント文学全般に知識があり、幅広い見識があります。

 悔しいかな、それだけは間違いないと実感できる添削を受けました。

 なので、ライトノベルの現状は理解していると思います、


 それを踏まえたうえで、果たして、この添削は、有効だったのか……。んー。

 恐らく、この添削先生の願いが込められているのだと解釈します。




3.自信を失っているのなら、褒めてくれる人を選んだ方が良い。


 メンタルに課題を抱えている方は、慎重になってもいいと思います。

 作者先生の添削は、正直、自信を失う力が大きく、メンタルが弱い人には不向きかもしれないと思いました。ですが、出版の為の常識を知るという上では、避けて通れない知識でもありました。

 

 ばっちこーい!

 と胸を張って言える強心臓の人か、ドMの人は、厳しい意見を言ってくれる作家先生の添削を受けることをお勧めします。

 あと知的好奇心の高い人にもお勧めします。面白い発見もありました。

「文章には基本のルールが存在する」ということを知るだけで、多少、文章はよくなるように思えます。

 つまり、文章力に課題を感じる方は、厳しい添削をしてくれる人がいいでしょう。


 一方、メンタルの弱い人は、1で依頼した、優しい編集者のような方がお勧めです。ただし、文章の矯正はしてくれません。文章力はあがりません。

 しかし、全体の構成を見てくれます。小説力があがります。

 僕が、この編集者の力を引き出せなかったのは、僕がプロットを持たずに書いたからです。もしもプロットから話が出来たら、もう少し、まともな添削を受けられたと思います。


 物語の起伏を早めたり、緩めたり、盛り上がりの位置を変えたり、分かりにくい箇所、想像できない箇所を指摘してくださり、スムーズに読める小説に変えてくれました。

 何よりも、いちいち誉めてくれるので、大作家も夢じゃない気持ちになって、仕事がはかどりました。とても重要なことだと思います。仲間意識すら芽生える、優秀なコーチでした。


 ……だけど、文章は直してもらえないんだよなぁ。


 このように、添削サービスにも、傾向があります。

 できれば、お金を払う前に、どのような添削サービスなのかを教えてもらえるとありがたいのですが、やらないと分からないという形になっています。


 また、自分の実力レベルで、有意義になるか、無意味になるかも変わっていきます。

 何回も使うしかないのかなと思います。

 


4.結局、添削サービスは受けるべきか否か?


 ということで合計で十二万ほどお金をかけて、添削サービスを受けた結果。

 やるべきか、やるべきでないかで言えば、「やるべき」です。


 たとえ、小説スクールのような内容にしかならなかったとしても。あんな有閑マダムのサロンの中に飛び込むよりも、有意義なお金の使い方です。


 ただし、商業作家デビューを目指す人だけでいいと思います。


 添削サービスは、ボクたちが、プロとして、商業として、今後に足りない部分を補ってくれる、コーチであり、コンサルタントです。

 基本的な型を、実技指導してくれます。

 本を読んだだけの知識よりも実践的です。

 守破離の守が出来ているのかどうかを確認する為にも、受けるべきだと思います。


 ですが、小説作法の本も読まずにいきなり添削を受けるのは、かなり無謀かもしれません。


 ただ、ボクよりもレベルの高い作品が多い、カクヨムの小説家の卵の皆さんは、是非、身銭を切った方が良いと思います。

 だって、ホントに惜しい作品が多いのです。

 嗚呼。ここ、こうするだけで……。という作品が山ほどあります。


 カクヨムは、ブログのように書ける手軽さもあるので、カクヨムに投稿する作品と新人賞に提出する作品のクオリティが同じとは限らないと思いますが、プロレベルで書くことを目指すのであれば、プロの指摘を受けるべきかなと思います。


 それに、何よりも。

 これを読んでいるあなたの好奇心は、他の人に比べて、ほぼ、無限でしょ?

 この情報を読んでしまった以上、「やらない」という選択肢を採ります? 

 いやぁ、無理でしょ? 

 


5.まとめ


 結論。

 ある程度のレベルになった小説家の卵が添削サービスを受けるのはアリです!

 是非、皆さんも使ってみてください。


「作品の添削」にお金を使うというよりも、「作家としての能力開発」にお金を払う意味があると思います。

 もしも、何も添削されなければ、能力として認められたわけですから、それはそれで確信に近づけるかと。

 きっとみなさん、自信はあるでしょうけど、賞が取れるまでは確信はないはずです。


 作家の卵同士、連携して、添削しあうという方法もあると思います。添削サービスによって添削された情報を共有しあうのも良いと思います。

 出版業界に細かいルールがあるとして、少なくとも、そのルールが「古からの当たり前」とされてしまい、小説家の卵たちに伝わっていない可能性も大いにあります。

 少なくとも、ボクは一般教養として習っていません。


「写経しなさい」


 という指導がもしかしたら、それを伝達する方法かもしれませんが、それは寿司職人に「技を盗め」と言うのと同じで、何か変化が起こった時に産業衰退のきっかけになると思うのです。

 そして現代の小説創作術として、ハリウッドのシナリオライティングなどがBaseになっているので、日本固有の小説作法の細かい部分は伝承されていません。


 出版社も情報を公開し、共有することで、レベルの高い小説を作っていくことが出来ると思います。


 どれだけアイデアが優れていても、どれだけドラマチックであっても、どれだけ構成が革新的であっても、単純に読みにくければ、駄目な作品です。ですが、何が読みにくさになっているのか、漢字を開いていないからだとか、知る方法がないわけです。


 皆さん。添削などで指摘されたことを恥じずに、どんどん公開していきませんか?小説の基礎レベルがあがると思います。

 情報の出し惜しみは、業界を停滞させる原因です。カトリックが聖書の出版によって崩壊したように、情報は、壁を破っていく突破口になります。


 恥は晒したところで、一円も損をしませんからね!

 隠したところで、一円も儲けになりません!

 もしも、皆さんが添削サービスを受けたりしたら、是非、公開してみてください!


 そうやって、レベルを上げていくことが、ボクらのような「つながった時代の小説家の卵」がやれるレベルアップ戦術だと思います。


                 (了)



☆☆☆ あとがき ☆☆☆


 乱文失礼しました。あとで、修正とか入ると思います。ごめんなさいね。

 添削を受けているのに、文章は荒いのは、この文章は全くセルフ校正していないからです。


 ひとつだけ、用語解説。

「パンツァー」とは、思いついた話を直接書いていく作家のこと。対義語は「プロッター」。ボクは構成を考えずに書くタイプなので、いま、それを修正中ですが、カクヨムだけは、パンツァー天国だと思って、思いつくままに書いています。


 そんなパンツァーが得意とするのが「短編」ですが、異世界を舞台にしたショートショート集を書きました。


【異世界俳人会】ダンジョンの細道【短編集】


https://kakuyomu.jp/works/16817139558173654804/episodes/16817139558174509855


 もし、よろしければ、是非。

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