第3話 某公募雑誌系の先生に添削をお願いした結果

2.公募のアノ雑誌関連で、スクールとかやってそうな作家さんが添削指導


 お金を払う以上、甘い話が聞きたいわけではない。

 もう少し、厳しい指導をいただきたいと、見つけてきた作家先生の添削に五万円支払ったのですが……。


 ちなみに、この作家先生は、お弟子さんを数々の新人賞でデビューさせた実績もあり、小説作法の本もお書きになっています。


 結果、大変な目に遭いました。

 メンタルもってかれます。


 まず、そもそも添削の依頼に、サービス運営会社ルートと、直接個人ルートがあって、直接ルートのほうが安いんですけど、めちゃくちゃ分かりにくい表現なんですよね。小説家でも、説明が苦手な人っているんですねぇ。


 この時点でかなり不安しかないです。


 サービスルート側は運用会社を介しているらしくて、その分、割高です。

 で、ちょっと質問をしたところ、すごく作家先生にも気を使っていらっしゃって、ああ、これは相当、気難しそうな方なんだろうなと……。


 不安は倍増です。


 ですが仕事は早い。

 一週間もしないうちに、添削されて帰ってきました。全体の30%しか添削してくれないのは、そう書いてあったので、そこはいいのですが、全体を見てくれないので、テーマ、コンセプト、登場人物についての指摘はいれることが出来ません。

 要するに


「下読みが一次選考でこれを読んだら、何を指摘するか?」


 という添削と思われます。

 こちらは箇条書きではなく、原稿に直接修正を書き込んでいくスタイル。


 まず全体的に語尾の修正。

 これは断定の語尾を無意識に多用していたので、参考になりました。


 そして、一行空白の禁止。これは意外でした。

 ものの本では、時間や視点や場所が変わるときに、空白行で切り替えを促せと書いてあったのですが、「一行じゃ足りない!」とのことでした。

 一行空白は紙にした時に、空白行なのかどうか分からないから、大変読みにくいというのが理由でした。

 特にページをまたぐときに、空白行があったのかどうかも分からないと。

「下読みに迷惑だ! 三行あけるか、◇とかのマークを入れろ!」

 ということで、三行あけるのは枚数的に厳しいので、マークに変えることにしました。

 この稿でも先生に倣って「下読み」とか呼び捨てで言ってますが、下読みしてくださる人って、作家さんですからね。ホントにありがたいことです。


 カクヨムのようなWeb小説では、ネット上での読みやすさの為に空白行を頻繁にいれますが、それと同じように紙でもヴィジュアル的な読みやすさが大事なんだなぁと。


 次に、言い回し。今回添削をお願いしたのが時代小説だったので、その時代までに登場していない言葉を使うなという時代小説作家の心得を教わりました。


「仲間」は使うな。「自由」は使うな。カタカナの外来語は使うな。その言葉の由来は云々で、この時代にはまだ生まれていない。代わりの言葉はこれこれだ。

 というのが大半で、それを守っていたら、話が黴臭くなってしまうなぁと閉口しました。

 ですが、物凄い、いや凄まじいまでの言葉に関する知識です。


 もう、絶対にWeb小説家の領域ではカバーしきれない制約です。

 制約とか、気軽に使いましたが、これの語源を調べて、時代的に正しいのかをチェック……、おっと時代という言葉を気軽に使いましたが、それも語源を調べて……。


 という感じに書かないといけないらしいです。


 いや、待って待って!

 江戸の下町の人情噺ではなく、十六世紀末の欧州の話だから、いいでしょ? 外来語。駄目なの? うーん、でも侍が登場した時点で、やっぱり時代言語的に使うのはよくないのか……。悩むなぁ。


 ということで、参考にした隆慶一郎先生の本を読み返したら、「急ピッチ」とか、めちゃくちゃ多用しているので、申し訳ないけど、一旦、この話は、無視することに。

 多分、隆慶一郎クラスから使っていいのが「急ピッチ」という言葉なのかもしれませんが。いや、もしかしたら、戦国時代から、急ピッチは急ピッチって言ってたかもしれません。

 加藤清正とか「急ピッチでお城を作るんだがや」とか言ってたのかも。

 

 あとは「作者の視点になっていて視点が混在している」という視点問題。

 これ、自信があるわけじゃないのですが、割と視点問題は直してから添削をお願いしたんです。ですが「作者の視点」はおかしいと指摘を食らいました。


 いや、でも、この小説、最初から「作者」という登場人物がいるから……。神の視点とはわけが違う。これをダメって言われたら、小説のスタイルがおかしくなってしまう箇所だったのですが、恐らく、先生の作風には合わないのかもなぁ……。


 読み返してみても、この指摘が承服できないので、こっそりと前回の「編集経験者の添削」に追加の質問として「作家の視点が混在するところ、気になりますか?」と投げたところ、


「それが、あなたの持ち味ですよ! いいアクセントです!」


 と言われました。

 ……悩む。どっちも信用できねぇ。こっちはこっちで甘すぎるんだよなぁ。


 あと、これはさすがに見たくなかったんですが、他の作家さんの悪口が登場。

 いや、指摘をしてほしいだけで、批評をしてほしいわけではないのですが……。しかも、他の作家さんの悪口とか……。余程嫌いなんだなぁ……。


 作家って別にいい人がやる仕事じゃないけど、言い方は選べたと思うんだよねぇ。作家だから。


 でもまあ、彼の場合、そこも含めて愛すべきキャラクターというか、社会不適合感たっぷりの無頼の方なので、メンタル削ってくるのは大目に見るしかないと、サイコパスを見る目で、優しく見守ることにしました。


 いや、でも、お金払ってるのこっちだけどね。


 で、最後にまとめとして、「ABCD評価のDで、一次選考も通過できない作品ですが」とコメント。言いたい放題ですね。


「おいおい、編集者の添削では『今年三本の指に入る筆力』と言われた作品が、『D評価』とか、どっちを信用すりゃいいんだいっ」と突っ込むことになりますが、添削内容と推敲のコツとしては、非常に勉強にはなりました。


 そのコメントの後に、ご自身の小説スクールの紹介があって、「興味があるのなら、こちらで、面倒をみてもいいです」と。


 ……。

 まあ、そりゃ、先生もビジネスですもんね。

 でも先生。ボク、時代小説作家は諦めます! 無理です! 言葉が何時代からあるのかを調べて使うとか、そんなの勉強し始めたら、世の中の時代ブレした言葉が気になって生きていけないです。


 で、言われたことを修正し、まあ、最低限C評価は目指そうと、時代小説を受け入れてくれる新人賞に応募しました。


 結果、時代小説を諦めるという決断に至るには十分な指摘は得られました。


 これについて、五万円の価値があったかどうかでいえば、非常に微妙で、正直、この先生の書いた小説作法の本に書かれていた内容と、同じことが指摘されていたので、正直、その本を読んでおけばよかったなぁと。


 ちなみに、この先生の小説作法の本は、古本で大変お安く……。

 ……もう本屋では売ってないんだもん。ごめんね。先生。


 次章で、添削指導についてお金を使った結果について、所感をまとめます。

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