Chapter4 オロチ降臨

Chapter 4-1

 水輝みずきがドアを閉めたとき、ダンスホールの穴も閉じてしまった。


「ふむ……」


 一人、取り残されたシュラはシルクハットを外す。

 自身のサーベルをシルクハットに入れ、京太が残していったサーベルも同様にしまう。二本のサーベルはシルクハットに溶け込むように消えた。


 と、ここでどこからかバイブ音が鳴り始めた。シルクハットに手を入れると、取り出したのはスマホだった。

 バイブ音はそこからしていた。画面には着信の文字が。


「はい」

《首尾はどうだい?》


 電話に応じると、聞こえてきたのは忍の少年のものだった。

 シュラは慇懃いんぎんな微笑みを崩さないまま応える。


「いやぁ、それが逃げられてしまいまして」

《あひゃひゃひゃは!! そうかよ! で、どうだったよ扇空寺の鬼は?》

「そうですねぇ。正直、手負いでありながらあれだけできるとは。彼が万全なら、私も本気が出せるかもしれません」

《へぇ、思ったより感触いいじゃん》

「ふふっ、また会える日が楽しみですよ」

《ま、それまで生きてるかはわからねぇけどな》

「ええ、それもその通りですね」


 笑い合い、通話を終える。スマホをしまい、シルクハットを被り直す。


「ですがもし、再び剣を交えることになれば――」


 シュラの口元から笑みが消える。


「――そのときは我が聖剣にてお相手しよう。扇空寺京太せんくうじ きょうた


 突如、シュラの姿が無数の黒い羽根に包まれて見えなくなる。

 ひらひらと舞い落ちる黒羽根が落ちたとき、そこにシュラの姿はなかった。

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