第2話 労働時間

 最初に産業革命が起きる前の農民の労働時間について調べてみました。


産業革命前

13世紀イギリスの農民の労働時間は、平均して年1620時間

14世紀イギリスの労働者の場合、年間の推定労働時間は240日×6時間=1440時間


産業革命後

1840年のイギリスの労働者は年に3105時間~3588時間

1850年のアメリカの労働者は年に3150時間~3650時間


 ウィキペディアには「産業革命当時のイギリスでは平均的な労働時間は1日に10時間から16時間で休日は週に1日のみでした。」とありましたので、計算してみますと毎週一回の休日を引くと年間の労働日数が約307日となります。最低でも一日10時間以上の労働をしていたと思われます。勿論、単純に一週間に一日の休日を前提として計算していますので、現代ならばブラック企業扱いされる過酷な労働条件です。

 また、マルクス主義について調べていますと当時の児童労働の問題を取り上げていることも少なくありませんが、現代の感覚で考えるべきではないとの指摘もあります。これは、当時の状況を考えるならば、児童労働は工場に限られた話ではなく、子供たちは家庭内労働や農業を手伝うことが当然であるとされていたことが理由です。そのため、工場労働は、家内労働やその他の仕事と比較して、特別過酷ではなかったとの指摘もあります。

 産業革命前と産業革命後では、労働時間に極端な差があることから理由を調べてみましたが、資料がほとんど見つかりませんでした。見つかったのは、イギリスの事例であり、農家の没落でした。それは「第1次囲い込み/エンクロージャ」と呼ばれた15世紀末から16世紀に行われた領主および富農層(ジェントリー=地主)が、農民(小作人)から取り上げた畑や共有地だった野原を柵で囲い込んで、羊を飼うための牧場に転換したことで土地を追われた農民の多くは浮浪人となって全国をさまよい歩いたことに始まります。

 そして産業革命にともなう人口の増加、ナポレオン戦争の不景気による小規模農家の没落、17世紀後半から18世紀には農業革命により商業的穀物生産が普及し、「第2次囲い込み/エンクロージャー」と呼ばれる地主・農業資本家が小生産者の開放農地(共同耕地)を囲い込みなどを行ったことで農業人口が減少して都市労働者になったようです。

 また、フランスの場合には、ナポレオン革命後に農地を取得した小規模な農家の遺産相続による土地の細分化の問題があったようです。このほかにも1873年から1879年までヨーロッパと北アメリカで不況を生じさせた金融危機も影響していたようですが、調べ始めますと際限がなく、お手上げ状態となりました。しかし、鉄道や蒸気船の発達によって、アメリカなどの安い穀物がヨーロッパに流入したことからヨーロッパの農業は打撃を受けたことが大きいと思われます。

 いずれにしても様々な要因が重なって農民が減少して都市労働者にならなければならなかった時代背景がありました。また、この時代のヨーロッパの農民について調べていたところ、多少なりとも経済的にゆとりのあった農民は、都市労働者になることを選択せずに移民の道を選んだとありました。そのため、都市労働者の道を選んだのは経済的に困窮した人々であったと思われます。

 マルクスの資本論が発刊されたのが1867年の社会情勢を農民が都市労働力に変わっていった観点から調べてみたいと考えましたが、余りにも数多くの要因がありました。これでは資本主義の行き詰まりと受け取られても仕方がないと思われるような時代背景です。産業革命が始まる以前は、農奴の解放などの変化はあっても基本的には、中世から続く社会生活であったと思われますが、産業革命が社会体制を大きく変化させたと思われます。そのことが貧困層を増大させたと思われます、また、大量の移民がいたことを考えますと、当時のヨーロッパの各国には、強い閉塞感と不満に覆われていたことだけは、確実であると思われます。

 マルクス主義が生まれれた背景には、これらの社会不安や人々の絶望感があったことから新しい経済学してマルクス主義が歓迎されたのではないかと思われます。また、受け入れられたのではないかと思われます。


参考サイト

GIGAZINE 産業革命が起こる前は労働時間が現代よりもずっと短かった

人文研ライブラリー:近代移民の社会的性格(4)

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