第1章 マルクス主義の背景

第1話 産業革命

 最初にマルクスの資本論が発刊された当時の社会情勢から考察に入りたいと思います。マルクスの資本論が発刊されたのが1867年であり、続編の第二部がマルクスの死後、マルクスの遺稿をもとに1885年に第2部、1894年に第3部がフリードリヒ・エンゲルスによって編集・刊行されています。

 当時の国際情勢を書きますと下記のような列強が世界を支配していた時代であり、勢力圏を軍事力で支配する帝国主義の時代でした。


・当時の列強諸国

オスマン帝国・オーストリア帝国(ハプスブルク帝国)・ロシア帝国・大英帝国・フランス・ドイツ帝国・アメリカ・日本


また、産業革命が各国で始まっていた時期でした。


・イギリスの産業革命

・アークライトの水力紡績機(1771)

・ワットの蒸気機関ピストン(1785)カートライトの蒸気機関紡績機(1785)

・1830年代にスティーヴンソンの蒸気機関車の実用化によって鉄道が急激に普及


・産業革命の普及

・1830年に独立を達成したベルギーで産業革命が始まる

・同時期にフランスの産業革命が始まる

・1840年代にドイツの産業革命が始まる

・アメリカの産業革命は1830年代に北東部で始まる、本格的な発展は南北戦争後

・ロシアの産業革命はようやく1860年代に農奴解放が行われる

・1890年代に工業化が進んだ

・日本の産業革命は1868年の明治維新で近代化の歩みを始める


社会情勢

 こうした動きの中で産業資本家層は旧来からの地主貴族層と結合を深め支配層の仲間入りを果たしましたが、労働者の権利や最低賃金の制度がなく、長時間労働が当たり前の時代であったことから富は集中し、所得格差は拡大しました。そして貧困層が増え、鉱山や工場においては児童労働などの問題も深刻でした。

 資本家と労働者の対立は、産業化が進むにつれてより一層深刻となっただけでなく、資本を蓄積した各国の利害が衝突し、軍備が拡大されて、海外植民地の争奪戦が激化した時代でした。

 さて、マルクスの資本論が発刊されたのが1867年頃の社会情勢をまとめますと、国内では資本家と労働者の対立が非常に深刻となり、国家間では海外植民地の争奪戦が激化していたと言えます。また、各国は軍事費の増大により、財政危機に陥るなど社会的に不安定な要因を抱えていたと思われます。

 それだけでなく、民族独立・王政打倒をめざす19世紀の革命運動が続き、1848年のフランス2月革命、3月革命がオーストリア、プロイセン、イタリアなどで起き、民族独立運動、反王政運動が激化したことから非常に政情が不安定な時代であり、時代の大きな転換点であったと思われます。

 これらの状況を考えますと、当時のヨーロッパ全土を巨大な闇が覆っていたのではないかとの仮説が成り立ちます。イギリスの産業革命は1970年代から始まっていますが、一気に加速したのは、1830年代に蒸気機関車の実用化によって鉄道が急激に普及したことであり、同時期に他の国でも産業革命が起きていることを考えますと、各国で労働環境に対する不満や所得格差の拡大などの不満が増大していた可能性が高いと思われます。

 この巨大な闇の力が現実世界の動きとなった場合に民族独立・王政打倒をめざす19世紀の革命運動となったのではないかと推測します。勿論、民族独立・王政打倒の動きを否定するつもりはありませんが、これらの政治活動の原動力は、民衆の怒りと不満であったことは否定できないと思います。そしてそれが正当な怒りや不満であったとしても民衆の怒りや不満を利用するのが、闇の勢力の手口となります。

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