第17話 季節限定イベント

「……そうだよ。現実はもうすぐクリスマスなんだよ。クリスマス、雪、サンタ、ツリー……。エンウーよ」


「コケ? どうしたコケ?」


「少し前に、私は限定衣装を提案したな?」


「コケッ。さすがヌルゲーマーでミラクエしか完クリしてないココさんの、いいアイデアだと思ったコケ」


「落として上げる、どーもありがと。だが、私は甘かった。許せエンウー」


「どういう事だコケ?」


「有料限定衣装はそのままで、季節限定イベントを行うんだよ!」


「季節限定イベント?」


「そう! 例えば! その季節にしか出ないモンスター! 冬ならサンタにちなんだ、サンタウロスとかを出す!」


「ふむふむ」


 エンウーはどこから出したかわからないメモ帳に、右の翼で器用に書き始めた。……神って、手からインクが出るの?


「そして、プレイヤーは景色を楽しむ! スクショを撮る! 雪を降らせろ、ツリーを飾れ、町もデコれ!」


「ふんふん」


「高難易度クエを出せ! そのイベクエでしか手に入らない武器や防具、または、魔法や特技でもいい! そこでしか手に入れられないものを餌にしろ!」


「ほぉほぉ」


「トドメは! そのイベクエをクリアするのが楽になる、課金特攻アイテムやガチャを出してやれー! そうすればお金がジャランジャラン」


 私はニヤァと笑い、右手の親指と人差し指で丸を作った。


心屋ここや、お主も悪よのう」


「いやいや、お運営様こそ」


「「わっはっはっは!」」


「……僕、ずっと思っていたんだけど」


「何じゃ、お運営」


「ココさん、根暗でコミュ障なのに、すごくテンション高いコケ」


「ふっ。さすがに神でもそこまで見通せないか。ならば、教えてやろう。私がこんなテンションなのはな」


「コケ」


「根暗コミュ障を隠すためだよ! 深夜テンションでいないとボロが出るんだよ!」


「……根暗でコミュ障、しかもヲタだと、苦労するコケね」


「そうだよ! 今年こそは根暗は根暗なりのクリぼっちを楽しもうと! 推しケーキを作ろうと思っていたのに! どうしてくれんだ!」


「ココちゃん、ケーキ作れるのか」


「いいえっ、料理は苦手ですが、推しのためならケーキをぅおぅ!?」


 振り向くと、推しがいた。


 だから、気配を殺して来ないでほしい。色んな意味で心臓が止まりそうになる。

 本当に伝説の暗殺者じゃなかろうか。その内、暗殺者と武闘家を極めた、特別な特技を覚えそうだ。


「ところで、推しケーキって何だ? ココちゃん」


「推しケーキは、推し……、おー……し込めた、そう! 美味しさを押し込めたケーキ! 略して押しケーキなんです!」


 無ー理ー! 無理がありすぎるー!


「なるほどなー、美味そうだなっ」


「……」


 無理がありすぎる無理ケーキを、すぐに信じてくれる、天使かよ。


 そうだ、ケーキで思い出した。


 もし、ミラクエをアプデでき、サ終を防いで、現実に帰った時のために。推しケーキを作るために、聞いておこう。こんなチャンス、絶対にもうない。


「……ちなみにテイオスさん、甘いものはお好きですか?」


「んー、嫌いじゃねぇが、やっぱり肉だな!」


「ケーキより肉と」


 脳内メモ。


「やっぱりお肉は鶏肉ですか?」


「そうだなっ、低カロリーで良質なタンパク質を含んでいるし、美味いから好きだなっ」


「肉は鶏と」


「だから、エンウーを見ていると腹が減るんだよなー」


「コケー! 僕は美味しくないコケー!」


 わざとらしく、怖がって走り回る巨大鶏。


「はははっ。だから、ココちゃんの相棒は食べねーって」


「コケー……」


 わざとらしく、ホッと息を吐いた巨大鶏。このわざとらしさが、毎回腹が立つ。


「私の頼れる可愛い相棒だから、絶対に美味しいと思いますけどねー。おっとぉ! 本音が出ちゃったぁ」


「コケケー!?」


 巨大鶏が、推しの後ろに行こうとした。


「私の頼れて可愛く強く素敵な相棒は、テイオスさんをまた盾にしないよねー? ねー?(暗黒微笑ダークネススマイリング)」


「も、もちろんコケ!」


 慌ててエンウーはこっちに戻ってきた。ざまぁ。


「そうだ、テイオスさん。私は腿肉の塩焼きが好きなんですが、テイオスさんはお好きですか?」


「塩焼きか! 俺も好きだなっ」


「……じゃ、じゃあ。いい鶏肉を手に入れたら、お、お、お作りしましょうか?」


「ココちゃんの手料理か! そりゃあ楽しみだな!」


「…………」


 推しが、手料理と聞いて喜んでくれました。現場からは以上です。


−−−−−−


 あとがき。


 深夜テンションは大事です(笑)

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