第18話 RPGあるある その2・その3

「まぁ、とにかく。これでアルマスも俺たちも橋を通れるな!」


「そうですね」 


「そういえば、あいつら懸賞金をかけられていなかったか?」


「そうでしたね! 忘れちゃいけません! カリール兵の所に戻りましょう!」


「ははっ、さすがココちゃん! 商人の鏡! お金のことは忘れないなっ」


「当たり前ですよ!」


 小走りで、カリール兵の所に戻った。


 


 コマンド選択。


 はなす


『兵士「盗賊をたおしてくださり ありがとうございました! こちらを お受けとりください!』


『ココは 100,000マネー 手に入れた!』


「……」


 10万。リアルでやっている時はどれだけ苦労したことか。


 このミラクエにも、お金をたくさん持っているモンスターはいる。が! やっぱり固い! すぐ逃げる! 中々出会えない! 

 マネーも課金をすれば増える。……マネーに課金? ふっ、それは愚か者する事だ。そういうのを無駄遣いというのだ。


 マネーなどモンスターを倒しまくれ! 手に入れた武器などを売れ! 又はそう! 推しになれ! 闘技場コロシアムの覇者に!


 闘技場はその名の通り、バトルトーナメントなんだが、勝ち残ればマネーゲット、そして、残れば残る程、もらえるマネーは増えていく。


 推しは、闘技場の覇者は、まず10万、次、100万と、ゼロが一つずつ増えていく。億万長者!


 じゃあ、億万長者ゴロゴロいるかと聞かれれば、否! いなし! 推しのみ!


 最後まで勝ち残った人は何人もいるけど、殿堂入りしたのは推しのみ!


 推し! のみ! おーし!


 が! 推しは、テイオスさんは優しいし妻一筋だから、貯金か彼女の治療費に当て、散財などしていないだろう。


 私の課金? あれは散財ではない! 推し活、そう! おしかつだ! 推しを応援しているだけだ!

 と、思っている間に主人公アルマスがやっと来た!


「テイオスさん! 隠れましょう!」


「そうだな! でも、隠れられそうな所がねぇな」


「あー、そうですね。うー、あー、あ! エンウーの後ろに隠れましょう!」


「コケ!?」


「そりゃあいいな! 俺よりでかいからな!」


 推しとエンウーの後ろに隠れた。そして、エンウーにしか聞こえないように。


「いいか? エンウー。動いたらローストチキンにすんぞ」


 低い声で囁いた。


「コッ……」


 エンウーはビクッと体が跳ね、硬直した。

 その間に主人公アルマスは橋を渡っていく。が! 遅っ! 動きが2Dのまま! もっと滑らかにせーい! はい、またメンテー。


「行ったみたいだな」


「……そうですね」


 主人公アルマスを見ていて忘れていたが、近っ! 距離近っ! 匂い! 推しのニホイがー! しかもこれっ、香水とかじゃない! 体臭! 体臭って漢字が嫌だな。……体芳たいほう、そう体芳!


 50歳以上から加齢臭が本格的に発生するって、何かのネットニュースで見たことあるが。否! これはダンディ臭、いや、ダンディ芳である!


 息を吐いてはならぬ! 吸って吸って吸いまくれー!


「すー、すー……、がっ……。……ぷはぁー! し、死ぬかと思ったー!」


 息を吐けないのってめっちゃしんどい!


「はははっ。顔が赤くなったり青くなったり、ココちゃんは面白いなー!」


「……」


 この豪快だけど、少年のような笑顔に、勝てる気がしない。






 こうして、推しの笑顔補給をし、ワスタ橋を渡った。

 少し歩けばカリール城だ。せっかく手に入れた10万。今度こそ武器や防具を城下町で買おう。


 


 歩く事、数分。


 カリール城下町に来た。

 フィールドが美麗グラフィックになったということは、町もそうなるわけで。


「アールピージー……」


 リアルな城下町となっていた。

 一番奥にそびえ立つのが、カリール城。その前に扇状に広がっているのが、カリール城下町だ。

 茶色屋根に薄茶壁の家が並び、白煉瓦道のきれいな町。


 ちょこっとやったMMORPGでも思ったけどさ、リアルな町並みって感動するよね。そんでもって実際に来るとなると。


「圧巻……」


 すごすぎて、あんぐりと口を開けちゃうよね。


「ココさん、大口おおぐち開けてアホに見えるコケ」


「うっさいわ」


「いやー、こりゃすげーわー! 大口も開いちゃうなー!」


 隣に来た推しが、城下町を見上げ大口を開けた。


「ドヤァ」


 私はエンウーを見上げた。


「コケェ……」


 エンウーは「またかよ」みたいな呆れた顔をした。


「さて、まずはどーっすか」


「宿屋で休みませんか? テイオスさんも疲れましたよね?」


 入ってすぐ右奥に『INN』と書かれた看板が見える。わかりやすくてありがたい。


「ん? 俺はまだまだ大丈夫だ。でも、女の子のココちゃんは疲れたよな? よっし! 宿屋に行くか!」


「はいっ」


 自分よりヲタを気遣う優しさ。ラビュ。




 宿屋。


 フロントまでやって来た。


 RPGあるあるその2。

 ドアも仕切りもない、プライバシーのプの字もないフロント。客室もこのタイプだ。


 フロントにいる女性NPCに話しかける。


 コマンド選択。


 はなす


『※「ひとばん 10マネーですが おとまりになりますか?」』


『はい


 いいえ』


 はい


『※「それでは ごゆっくり」』


 テレレレレッテテー。


『そして 夜が あけた』


「…………」


 いや、寝たんだから明けるわ! そして、いつの間にかの客室! 三人なのにベッドは一つ! これもあるあるだけど、どうやって寝たのー!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る