エイルの挑戦状10 コラボ企画

 10回目もプロット指定そしてコラボです。

 

 毎月突破されるたびにネタを変えて開催です。今回も間口を広げて、ファンタジーから現代ドラマまでなんでも行けますぜ!!

 

 なおネタ提供よろしくお願い申し上げます(≧∇≦)b

 

 エイル公認タグは エイルの挑戦状 です(*^_^*)使用は自由ですよ(≧∇≦)b

 

 細かいルールと他の参加者様の作品は企画アドレスを、下記に掲載しますのでご確認し楽しんで来て下さい。

 

 【エイルの挑戦状10】

 

 2023年ゴールデンウィーク https://kakuyomu.jp/user_events/16817330656078000711

 

 

 私はとある家電メーカーに勤務している。私の仕事は新製品や素材、部品の耐久性や強度などを調べて、クレームや故障、なによりリコールを防ぐことだ。

 

 設計や研究開発と比べると裏方で出世ルートからは外れている部署となる。私が女だからガラスの天井があるのかもね。ここは楽しいから出世よりも満足してるけど。

 

「室長、この冬の新作石油ファンヒーターの耐久性試験の依頼が英 優央はなぶさ ゆうおうさんから来ました」


 この部署は私と部下の二人だけ、上司は私だけどほぼ同士みたいなものね。

 

「あぁ、あの出世頭の慢心天才くん、耐熱温度広い素材やら部品を探してたと思えば石油ファンヒーター作ったの?爆発しない?」

 

「発売とキャッチコピーが決まってますし、ちゃんと運転試験と稼働時間はクリアしてるらしいです」

 

「あら?それじゃ私の仕事はないじゃない?って言いたいけど、不具合見つけるのが仕事だし、ぶっ壊しますか」

 

「人の苦労して作ったのをぶっ壊すのは、何度やっても最高です!!『どんな寒さにも負けないで使える暖かさ』なんてキャッチコピーの以前に不良品なのを証明してやりましょう」

 

「そうね」

 

「「あーはははは」」

 

 やっぱりこの仕事は趣味と実益知的好奇心を満たせる上に壊すほどボーナスまでもらえる。やめられないわ。

 

「まずは、連続運転やりますか。ざっとノンストップで1000時間ゴー」

 

「室長、結果が出るまで暇ですし高温試験やりましょう♪二台目は室温45℃で運転開始っと」

 

「そうそう、10メートル落下試験とか耐震試験もしないとね」

 

「水没も忘れちゃだめですよ」

 

 滅茶苦茶な試験をするけど、安全装置がきっちりと仕事をして壊れても想定外な動作はしない。


 それどころか、燃料変えたり異物混入させても、銃弾で撃ち抜いてぶっ壊しても安全装置が発動してトラブルは起こらない。


「これはムカつくほど、完成度高いわ」


「冷やす以外で安全装置の穴は思いつきません。ぶっ壊すのは楽しかったですけど」

 

「そうね、ガス漏れ検知までして停止する高性能すぎるわ。出世頭の慢心天才くんだし基本が抜けてそうなのよね」


英 優央はなぶさ ゆうおうの作ったドライヤーなんて、ハイパワー過ぎて髪をチリチリにしましたから(笑)」


「あれは慢心天才くんの最高失敗作だったわね(笑)」

 

「では冷凍庫マイナス20℃!!やってやります」

 

 冷凍庫くらいでは石油ファンヒーターは問題なく起動して全力で室温を上げていく。

 

「むむぅ、これより気温って下がります?」

 

 後輩くんが心配そうにする。

 

「何言ってるの?塩水はこのくらいまで温度が下がるのよ?流氷とかもっと寒いに決まってるわ。ならば次はドライアイスのマイナス80℃ね」

 

 部屋にドライアイスを敷き詰めて、石油ファンヒーターを起動すると、二酸化炭素が固体化したドライアイスなので、気化した二酸化炭素に満たされており石油ファンヒーターの不完全燃焼を予防するための安全装置が起動する。

 

「あちゃー、高性能な安全装置ですね。どこかにバグないのですかね?」

 

「そうね・・・。冷たくて燃える物って何かしら?あっ液体酸素なら、ふふふっ」

 

「あれ?液体窒素じゃなくて酸素?酸素は燃えませんよね?」


「液体窒素は燃えないけど、酸素は助燃剤、もっといえば酸化剤だから火が大きくなるわ。しかも気体よりも密度が高いからより素早く激しく灯油と反応するわ。しかもマイナス183℃完璧な冷却材よ」

 

「なるほど、確かに燃える条件は可燃物と酸素と熱源でした。これなら安全装置に勝てるかもしれません!!」

 

 液体酸素を石油ファンヒーター用の実験アクリルケースに満たしていく。

 

「いつ見ても青い液体酸素はキレイね」

 

「初めて液体酸素見ましたけど、淡い青色で不思議ですね。そして点火前の石油ファンヒーターで沸騰してるのも不思議です」

 

「沸騰は液体酸素の沸点がマイナス183℃だからよ。室温の石油ファンヒーターは、水に200℃以上の焼け石を入れたようなものよ。冷えるのを待ちましょう」

 

「なるほど、液体酸素は室温の石油ファンヒーターには熱すぎるのですか。火がないのに沸騰してるの光景は不思議です」

 

 後輩くんは、目をキラキラさせて液体酸素を魅入ってる。かわいい奴ね。


「液体酸素は色があるし、磁性つまり磁石にくっつくから面白いわよ。触るときは凍傷と爆発に気をつけなさい」

 

「へぇ~へぇ~へぇ~、さて石油ファンヒーターが冷えて沸騰が止まったので点火します!!」

 

「普通に考えたら燃料の灯油が凍ってるし、点火しないけど、どうなるかしら?」

 

 無駄に高性能すぎる石油ファンヒーターはどうにかして灯油を保護していたらしく液体酸素中で着火してしまい、ズガーン!!と大爆発を起こして石油ファンヒーターは砕け散った。

 

「あれ?これはだめですね(笑)先輩勝ちました!!」

 

「逆にあれで爆発させる方が難しいと思うけど(笑)冷やし過ぎると爆発したからキャッチコピーに問題ありで突き返すわ」

 

 失敗作として突き返した翌日、内線が鳴り電話にでると英 優央はなぶさ ゆうおうであった。

 

『あの報告書おかしいだろ?液体酸素に浸かることなんかありえない』

 

「あら?『どんな寒さにも負けないで使える暖かさ』というから冷やしたのよ?キャッチコピー直すか安全装置を改良しなさい。爆発する製品が悪いのよ」

 

 そして反論を許さず内線をブチ切り、私達は勝利を祝うのであった。

 

 そんな祝賀ムード中に、上司のハゲが眩しい部長からお呼び出しがされる。めんどうだと思いつつも部長室へ向かったのだった。

 

「失礼しまーす。何かご用ですか?」

 

「ご用じゃない!!あんた、ばかなの?ねぇ、ばかなの?ばかだったな」

 

「ばか呼ばわりは傷つきました。パワハラで訴えますよ(笑)」

 

「全くばかなりに、少しは反省しろ!!新製品の性能耐久試験ではなく会社の資金で開発の邪魔をする君はクビだ!!何が液体酸素中で爆発するファンヒーターだ!!どこの家庭に液体酸素があるのか教えてほしいものだ!!とにかくクビだ」

 

 あら?液体酸素くらいで、激おこぷんぷん丸な部長は心が狭いけど、天職を手放すつもりはないわ。

 

「お言葉ですが、今やネットの時代です。液体窒素はマイナス196℃、空気中の酸素はマイナス183℃で液化しますよ?もしYou T○b○とかが入手しやすい液体窒素を、これでも使えるのか?とかキャッチコピーみて、かけて液体酸素が生成されたら爆発しても良いと?それに奴らは資格があれば手に入れて液体酸素かけて映える動画をとか考える連中ですよ?」


 液体窒素なら空気中の水分が凝固して固まるから爆発するとは思えないけど。そして液体酸素使える人ならヤバさを知ってるからかけることなんてないでしょうね。

 

「そんなものは使用範囲外だ!!我が社に責任はないしYou T○b○以外の一般人は液体窒素も手にはいらん!!」

 

 チッこれくらいでは誤魔化せないか。

 

「何を舌打ちしとる!!ととっと荷物をまとめて我が社から去れ!!」

 

「例えば、すごく寒いからこそ『どんな寒さにも負けないで使える暖かさ』の石油ファンヒーターを工場で使いますよね?そして工場なら液体窒素や液体酸素はありますよ?なにかの手違いで漏れてしまえば大爆発を起こしますよ」

 

「むぅ、それはありうるが我が社の責任よりは液体酸素の管理が問題だろう?」

 

「はぁ、そんな頭でよく部長やっていけてますね」

 

「ハゲとるがこれは苦労と君達からのストレスでハゲ散らかしておるのだ!!今まで守ってきたがもう許せん!!我慢の限界だからな!!」

 

「そもそもですが、あの石油ファンヒーターは酸素濃度が高いときの安全対策が無いのです。つまり市販の酸素ボンベとか、溶接の酸素ボンベとかエアコンプレッサーとかで酸素を送り込むと、どんどん火力か上がり燃えて火事になりますよ?最悪は風の強い日に換気で窓を開けて火事になるかもしれません。そもそもマイナス183℃の液体の中で点火できる方がおかしいですし」

 

「いや液体酸素は無いからな!!どこにマイナス183℃になる要素が・・・待て待て、強風で火事になるのか!?」

 

「空気の21%は酸素ですから液体酸素よりは遥かにマシです。ですが新製品は高性能過ぎてどんだけ100%酸素を送り込んでも、失火しませんから、どんどん火力が上がりますね。灯油が凍るはずのマイナス183℃の液体酸素でキンキンに冷やしても大爆発を起こせるので、当たり前でしょう?液体酸素がかかれば爆発する危険性を知ってて発売すると?」


 酸素を吹き込んだらそもそも、使い手側の問題だし、火事になるほど強風で酸素を送ったら風速が早すぎて失火、着火を繰り返すだけだと思うけども。そんな試験してないからしらんけど。とりあえず液体酸素は危険物だからそこらに存在しないし爆発はないでしょうね。  

 

 後、風で火事になるとは言ってないわよ。何度も着火を試してそのうち壊れて火事になるかもね?その前に燃料無くなるでしょうけどね。


「ふむ、一見無駄に思えるが必要な試験だったな。むしろ液体酸素で冷却しても消火できないのは問題だ。対策させよう。クビはなしだ下がりなさい。これからも励むように、ボーナス査定はプラスにしておこう」


「分かりました。これからもあらゆるものをぶっ壊しご期待にお答えします( ^ω^ )ニコニコ」


 この部長やっぱり頭悪いわ。本当にこんなので部長が務まるわね?この会社大丈夫かしら?液体酸素は消火剤じゃないし(笑)

 

「はぁ、なんでここまでおまえは、ばかなんだろうか?」

 

 サクッと部長の悪口は無視する。凡人に理解されようとは思わないしね。まぁ安全装置が優秀だから普通に消化器とか水かけたり、蹴って揺らせば停止する。たぶん液体窒素なら酸素なくなって消えるし。

 

 こうして私は後輩くんと仕事として合法的に、天才な設計者達が苦労して作った物を会社の金と設備で壊す遊びを楽しみ続けたのであった。

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