第7話 旅は始まり、

 朝起きると、横には剣と、ローブが置かれている。昨日、俺がここまで待ってきたヤツだ。


「ハァ、結局寝れなかった。13時間しか」


 ※後で、寝過ぎだ、とシノンに体当あたられました。


 あれから10日、迷宮で戦闘経験を積み、能力スキルの情報を集めた。

 それで分かったことは、『レベルアップ』という能力スキルには経験値という概念があるらしい。

 魔物やモンスター(注:ダンジョンから出る魔物をモンスターと特別に呼称する)を倒したりすると手に入るらしく、俺はLv.13まで上げた。

 今まで行ったことがなかった洞窟にも潜り、多くの魔物を討伐した。


 ダンジョンは発生しなかったので、モンスターはまだ一匹も倒せていないけど。


 シノン曰く、ダンジョンは急に発生する現象だそうで、放置するとダンジョンブレイクなるものが起こり、モンスターが外に出てくるらしい。

 すると街や村、下手をすれば国も滅びるかも知れないので攻略するんだとか。

 その攻略戦をレイドと呼ぶ。


 そうやって鍛えた俺は、前よりは少し強くなったんじゃないかな?実感ないけど。


 そんなことを考えながら居間に行くと、そこにシノンがテーブルの上でうたた寝をしていた。俺が来たら起きてしまったが………うん、可愛かった。






「それじゃ、行こうか」


 俺が着替え、ローブとその他諸々を装備し、剣を腰──腰椎ら辺──に刺す。

 椛の髪飾りで髪を結う。

 シノンは………スライムなので何も準備は無しで。


 そして、俺たちは歩いていく。

 シノン曰く、最近の街は西微南にあるそうで。

 それまでどれくらい歩くんだ?

 なんか、感覚が分からんな。数時間歩いて付くなんてヤワなもんじゃ無いだろうし、数日から数週間くらいはかかるか?


 ある程度──三時間ぐらい?──歩いて、森が今より少しだけ深くなった頃、衝撃的な出遭いをした………したというか、してしまったというか………。


「そ、そこでお止まりください………。そ、それ以上動かれるのでしたら、い、射ります………!」


 その声が聞こえると、足を止める。唐突に聞こえてきたからでもある。(止まれと言われたからでもあるんだけどね)


 おん?どっからこの声が聞こえるんだ?

 んー、道は先数十メートルまで誰もいないし、魔力感知にも反応が無い。気配………はあるんだけど、気配探知なんて高度な事できないし。


「おーい、どっから話しかけて───」


『忠告。上に気を付けて』


智慧の処女エレイン』に忠告された一秒後、俺の1メートル左を矢が飛んできた。


「うわ!何で撃ってくんだよ!言いつけ通り止まってるじゃねえか!

 というか、隠れてないで出てこいよ!俺、お前らが全く見えて無いんだよ!」


 全く見えない姿形を現すよう促した。

 全く見えてないんじゃ埒が明かないからね。


 ………最初少しキレかけてたのは内緒だよ?


「す、姿が見えないのですか………?

 貴方ほどの強者ツワモノが、我らを認識出来ていないのですか………。そんな、お戯れを………」


 へ?なんでコイツはこうも驚いているんだ?

 別に見えないことぐらいどうってことないだろうに。逆に、弓使いとか狙撃手からすれば見えないほうが良いんじゃねえの?

 それに、強者なんてどこに居るんだ?俺ら以外気配しないけど、一体どこに?

( ↑ コイツ、阿呆な勘違い野郎です!強者とはちゃんとコイツのことです!)


「ねえ、シャルル。

 自分の妖気オーラに気づいてる?」


「何よ唐突に。俺から妖気オーラなんてそう大量に出てる訳無いじゃんかw」


 昔、辰爾から妖気オーラを抑える方法を教えてもらったことがある。

 その時は、狩りなで隠密する為だった。


「なんか、勘違いしてない?確かに妖気オーラは漏れてるけど、そんなビビるほどのモノじゃないよ。

 今言ってるのはその質。一度見てみ」


 シノンが俺に視覚の感覚共有をしてくる。客観的に、俺の魔力を見るために。

 そして、『魔力探知』を少々『智慧の処女エレイン』がイジって妖気オーラの質が見えるようになった。


「………え?何だんだ、これはッ!?」


 目に見えたのは、俺から溢れた魔力が作用して、魔素を強制的に結合させ魔力に変換しているところだった。


「これが、相手が警戒してる理由だよ」

『これが、相手が警戒してる理由です』


 マジか。これか。


『空中で魔力を練成するのは異質です。

 妖精人エルフのように魔素感知・魔力感知に秀でた種族ならば恐怖及び警戒の対象となります』


 異質………って!妖精人エルフ!!

 え?今、どこかに隠れてる人たちって妖精人エルフなの!?

 俺の記憶でいう妖精人エルフって、こう、長寿で賢明でそれで加えて男性ならイケメンで、女性ならえっちい感じで!

 やっぱイメージ通りなのかな?どうなのかな?


 まあ、それは後にして、今はこの状況を何とかするのが先か。

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