第6話 もしくは龍だろうか?
「あれ?なんで………ここに?」
気づけば目の先は、空ではなく天井にあった。
「やっと起きたか」
そう言うシノンが、台所の方から戻ってくる。
多分何か作ってたんだろうな。シノンも結構料理上手いしな。
(スライムが料理出来ないって思うかもだけど、それが案外出来るんだな、凄いことに)
それよか、横たわってんのしんどいな。
横たわりすぎの弊害なんだろう。
………あれ?起き上がれねえ。
「シャルル、君はもう、十三日は寝てたんだよ。流石にエネルギーが足りないでしょ」
ええ!?俺ってそんなにも寝てたの!?
確か………擬似的進化なんて言ってたからすぐ終わるものだと思ってたけど、そんなに寝てたのか。道理で足腰が痛むわけだ。
転生前を思い出すな。大体二十時間以上寝たら背中とかが痛み始めた。
「はい、食え」
作ったお粥を無理矢理口ん中に突っ込まれた。
もっと他に方法があったと思うんですけど!
動かないって言っても全くじゃないし、首より上は全然動くんだから。
「食い終わったら部屋行くよ」
無理矢理食わされる最中にそう言われた。
そして、食べ終わった後に辰爾の部屋へと連れて行かれた。
「これは?」
辰爾の部屋にあったのは、黒い鞘に入った黒い柄の剣──片刃………刀に近かった──と、俺の髪と似たような白いローブ。それには空色に近い青の模様があった。
そして、辰爾が片耳だけつけていた椛の飾りをシノンが髪結い用に加工したものがあった。
「これは、辰爾が自分の死を見越して、君への最後の
好きにしろと言ったのは辰爾だからね。これはシャルルが好きに使えばいい」
ここまで見越してたのか。
俺が遠くへ行こうとしてること、出来れば冒険者のような何かをやってみたいことなんてお見通しってことか。
そうか。
「なら好きにさせてもらうよ。これらを」
剣を鞘から抜こうと試みる。
「………ん?ん?
どうした、これ?なんか、全然抜けないんですけど?あれ?錆てんのか、それとも辰爾が粗悪品を?………後者は無いな」
突き詰めたところで答えは出てこない。
だから、ここで思考を放棄した。
装備手に入れられたし良いじゃない。最初のにしては上出来だしな。
「明日にはもう出発する?」
「気が早いな。
いや、俺は数日間は迷宮に籠もってようと思うよ。
少しは敵とやり合わないと行けなくなるだろうし、それに『レベルアップ』とかいう
「了解。僕も出来ることをしておくよ。準備するに越したことは無いからね」
「じゃあ、俺は寝る」
「さっきまで寝てたじゃんか………。
………まあいいや、お休み」
うわ、シノンさんが呆れていらっしゃる。
良くあるよね?寝た後にもう一回寝ることぐらい。
無いか?………いや、あるハズだ!あることにしよう!
さて、これからしたい事をおさらいしてみるか。
まずは出来るだけ自分の持ってる
次に、それが大体終わったら冒険したいよな。
そして………うん、これが一番大切なことだな。辰爾の復活だ。これを確立する方法を見つけ出さないとな。
────少しの間があり、そして俺は、ふと過去の事を思い出した。
転生前の事である。
そういえば、俺の記憶の最後って十………何歳だっけ?高校一年の誕生日直後だった気がするから十六歳か。
死んだ原因は思い出せんな。ただ単に記憶がそこだけまだ不覚醒なのか、それとも思い出したくないだけなのか。
その他の記憶も結構まだ曖昧だ………。
俺は転生前、
こんな名前だが、ちゃんと男やってたぞ。今はジェンダー平等なんだ!中性名なんて幾らでもあるだろうし、そう不思議じゃないだろう?
俺は………自分で言うのもなんだけど、結構賢い部類に入ってたと思う。
だからといって何か他と違うという事は無い。
漫画、アニメ、ラノベ、ゲーム。これら全てが好きないわゆるヲタクだ。
………チェックシャツは来たことないけど。
順風満帆が似合う高校生………の隣に良く居た冴えない取り巻き、それが俺だわ。
あぁ、言ってるだけで悲しくなってきた。
まあ、そこそこ楽しく過ごせてたけどね!
そして、俺はまだ、高校生だった。
高校生で死んじゃったのである!
ちょっと死ぬには若い気はするけど、もう死んでしまったんだし、何言っても無駄だろうな。
ただの平凡な平均な一般的な俺は一度死に、そして異世界で史上類を見ないの無種族転生者になった………いや、なっちゃったのである。
その頃、世界全土────七つの大陸及びその他全ての場所で即座に辰爾の死は伝達された。
そして、驚嘆と恐怖をばら撒いたのだった。
世界天地開闢300万年、初めて龍種が死んだからである。
***
───一方、『悪食』の亜空間の中にて。
「はあ。なんで、俺は生きてるんだろうな。
死んだハズだよな?聞いてんなら出てこいよ、エレ………今は、インか?」
「元気そうで何よりです。
………そうですね。今は『
それに………白々しい。」
影から、腰まで伸びた髪の女の人影だけが見えている。髪の色は淡い水色と銀の間のような色。
推測して、身長は160前半か。
「相変わらず溺愛だな。
………はあ。格好良く決めて死ねたと思ったのによ、この調子だったらまた戻った時どうシャルルとシノンにドヤされるか」
「あのふたりは貴方の退場の仕方、格好良いとは思ってませんよ?気にもしてませんでした」
「マジかよ………。
あ、そう、一個質問。俺たちが戦ったあの少女──辰爾の年齢からしたら、ね──は何者だ?賢者か何かか?」
「あれは、恐らく異世界人です。
そして、勇者です。それも《加護勇者》なんてチャチな存在じゃなく、最も上位の。
言うなら………聖典勇者とか」
「マジかよ………。人類の最終兵器じゃねえかよ」
勇者は大きく分けて四つある。
強い順に、
真なる勇者
聖典勇者
元素勇者
加護勇者
と。
数で言うと、真なる勇者は史上一人のみ。
聖典勇者は代替わりって感じだが、適任がいない………人類最終兵器に達しないのであれば空白になることもある。
元素勇者は、基本七元素である 炎 水 氷 風 岩 草 雷 に加えて 光 が入る計八人の勇者がいる。因みに聖典勇者の大多数はこの中から選ばれる。
加護勇者はザラにいる。数百はいるんじゃないかとも言われる程には。
「それと戦ったのか。道理で人間にしては異常に強いわけだ」
亜空間の中、死に損ねた辰爾はそう感心していたのであった。
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