第52話 最終回


 正式にバロン帝国が南大陸の同盟国に無条件降伏した。

正常な国交をする契約書に署名して、トムは信頼出来る親友のキャバサに帝国を任せてフォーク国に帰ったのです。


 トムたちが帰った後に前皇帝ロバノが戦争犯罪者として処刑されて罪人の服を着た首の無い身体が王城の前の広場に晒されたのだ。


 トムだけが知っている秘密で、晒された皇帝の身体は本当の死罪で首を落とされた罪人の身体でほんとうの前皇帝は平民として名を変えて僻地で農民として監視されながら畑仕事を楽しんでいるらしいのだ。


 新しく皇帝の座に就いたキャバサは奴隷を直ちに開放すように命じて奴隷たちが国に帰る者には路銀を渡し、残る者には仕事を与えたのだ。


 その他にも税金を下げて国民が暮らしやすくなるようにしたのです。


 だが今の帝国にそんな財源があるはずが無く、フォーク国から長期支払いで借り入れを申し込みトムが借り入れに同意したのだ。


 今日は、そのキャバサがフォーク国の見学に来る日でトムはまるで恋人に会うみたいにソワソワしてナナリーナが拗ねて。


「私たちをデートにも誘った事が無い癖に、やっぱりトム様は男の方が良い男色家なのかしら」


 その呟きを偶然聞いたキョウト街の町長のブソンから聞かされたトムは、一大決心をして今までの朴念仁と男色の汚名を晴らして返上する為に婚約者たちをデートに誘う決意をしたのである。


 その日の夕方に着いたキャバサの歓迎会を開き婚約者たちを紹介するとキャバサが驚き、思わず素の言葉で。


「スゲー! こんな美女と美少女の5人も婚約者なのか、俺なんかまだ1人の婚約者もいないのに・・・・・・羨ましいな~・・・・・・」


 トムが思わず。


「キャバサ、お前、本当に彼女の1人もいないのか~」


 ローランが。


「トム様だって自分で口説いた事が無い癖に」


「嘘だろうー! 自分で口説かないのに何でこんなに綺麗な女ばかりトムの周りに集まるのだよ~・・・・・・・・」


 ジエルが。


「それはトム様に魅力があって強いからよ」


 ササリンも。


「いえ、トム様が優しいからよ」


 負けずにサリーが。

 

「違うわよ、トム様が強くて格好良いからだわ」


 ナナリーナが。


「皆の言う事はあっているけど結局は男性としての魅力が溢れているのよ」


 聞いていたキャバサがうんざりして。


「分かったからもう惚気るのは止めてくれ、それよりそこの魅力的な彼女、君の名前を教えてくれないか?」


「えっ?私はミンクよ」


「そうかミンクか、良い名前だ。年は何歳なの?」


 ミンクが怒って。


「失礼ねー! 初対面の女性に年齢を聞くなんて・・・・・・」


「えっ?だって交際を申し込むのに年齢を聞かないと私より年齢が上だったら年下が好きなら後で困るだろう」


 トムが呆れて。


「馬鹿! 最初に女性の年齢を聞くなよ。好きになったら年齢は関係ないだろう、エルフ族や魔族に魔物は成長が遅く100歳以上で俺たちと同じ年齢なのに俺の婚約者の中には100以上、年齢が上の人もいるけれど、俺は彼女たちを好きで愛しているから年齢は気にしないよ」


 隣にいたジエルがトムの言葉に感激して抱き着いてキスをしたのだ。


 見ていた他の婚約者たちが悲鳴を上げて


「キャー! ジエル、ズルい! 協定違反よ。1週間はトム様の側に近寄らないでね」


 ジエルは開き直って。


「早いもん勝ちよ、ウッフフ、・・・・・・」


 此れには皆が呆れてしまったのです。


 キャバサが懲りずに。


「ミンクさん、少しくらい年上でも我慢するから付き合ってくれませんか?」


 ミンクが切れて。


「トム様より女心を理解しない阿呆がいると思わなかったわ。我慢するですって。貴方みたいな阿保とは付き合う気無いわ。お、こ、と、わ、り、よ」


 トムも流石呆れてしまい。


「あのなー! キャバサお前が何で女性に持てないか分かるよ」


「えっ?何で! 俺も子作りする相手が欲しいのに」


「あちゃー! お前な~、そんな露骨な言葉を使ったら女が逃げ出すぞ」


 ミンクが。


「バーカー! アンタなんか一生独身でいなさい」


 同じパーティー仲間だったバンクが。


「なー、もう姉御と呼ばないからいい加減俺と結婚してくれよ」


「良いよ、アホな男を見たらバンクが良い男に思えたから結婚するよ」


「やったー! キャバサ様、引き立て役をしてくれてありがとう~。5年越しの思いが叶った」


 こうして新しい夫婦が誕生したのです。


 トムたち若い者が恋愛の話で盛り上がっている横で今は、亡き奥さんを今でも忘れず愛している大蔵大臣のリーガンは自分には関係ない話だと、刺身と唐揚げをつまみに日本酒を飲み。


「旨い! やっぱり刺身で日本酒を飲むのが最高だ」


 だと言いながら1人で旨そうに酒を飲んでいたのです。


 バロン帝国の新しい皇帝キャバサは次々と帝国を改革して、その手腕を高く評価されているが女性の扱いが余りにも酷いので当分は婚約者が出来そうも無く、女心を理解しないトムでさえ呆れていたのだ。


 その数年後フォーク国は大陸一の経済大国になりトムは婚約者たちと結婚して5人の子供を授かり末永く幸せに暮したのです。



【完結しました、最後まで読んで頂きありがとうございました】

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貧民街に転生した孤児が成り上がり国を興す 三毛猫 @pega77sasu

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