第51話 バロン帝国で


 トムがバロン帝国に降伏させる為に行く事を婚約者たちに伝えるとササリンが。


「もしもの時に備えて聖魔法の使える私が一緒に行きます」


 ローランが反対して。


「帝国は、人族以外は奴隷としてしか認めていないからササリンが行ったら馬鹿にされるから私が行くわ」


 皆もローランに同意してローランが付いて行く事になり、3人で行く事になったのです。


 翌日に獣人国に移転して行き、そこからはライザーの背中に乗ってバロン帝国に向かい、バロン帝国のサバリン帝都の上空に行くとサバリン帝都の住民は、見た事の無い大きなドラゴンに驚きこの世の終わりのように騒ぎ逃げて家の中に閉じ籠ったのだ。


 そんな騒ぎの中ライザーが帝城の上空に行き、ライザーの背中に乗っているトムが魔法でサバリン帝都の全住民に聞こえる大きな音量の声で。


「俺は、フォーク国の国王トム・バンドウだ、住民に危害は与えるつもりは無いから安心しなさい。皇帝に次ぐから良く聞け、貴様は他国を侵略して、罪の無い人々を残虐に殺した事は許せない、帝国全土をドラゴンのブレスで焼け野原にされるか、降伏するか選びなさい。返事は10分以内だ、返事が無い場合はお前の住む帝城を焼く」


 突然、現れて降伏を迫られた皇帝、ロバノ・バロンは上空を飛ぶドラゴンを見て驚き側にいた宰相に。


「爺や、どうすればいいのだ。わしは降伏をしないぞ」


「陛下、落ち着いて下さい。貴方はドラゴンに焼かれて死ぬつもりですか?まずは降伏すると伝えて城内に誘い込んではどうです」


「そうか、誘い込んでフォーク国の国王とやらを殺せば良いのだ」


 皇帝の返事を聞いた宰相もやはりそんな事をしたならドラゴンが怒って帝国を本当に焦土になるとは考えない、うぬ惚れた人だった。


 宰相が城の窓から白旗を振りながら上空のトムに向かって大きな声で。


「降伏するから、城の中に来てくれー・・・・」


 降伏すると聞いたトムたちが白旗を振っている窓の部屋にライザーが人化して瞬間移動で部屋に入ると、部屋にいた皇帝と王族や集まった貴族たちが驚いていたのだ。




 まさか、ドラゴンが人化してトムたちと一緒に移転して部屋に来ると思っていなかった人たちは腰を抜かして床に座り込み、中には小水を漏らしている者もいたのです。



 あの皇帝を思いの儘に操っていた爺やと呼ばれていた宰相は、泡を吹いて白目を剥いてショック死してしまい、皇帝が城の玄関から入って来ると思い急いで暗殺する為に兵士を配置していたのが意外な事になり皇帝は。


「爺やー! わしはどうすれば良いのだー!」


 泣き叫びライザーが。


「五月蠅いー! 静かにしろー!・・・・・・」


 ライザーの怒鳴り声で静かになった所でトムが皇帝と思われる男性に。


「お前が皇帝か」


「わ、わしが皇帝のロバノ・バロンだ。無礼は許さんぞ」


 皇帝の返事に呆れてトムは。


「お前、自分の立場が分からないのか?降伏すると言ったのは嘘なのか」


「降伏などするものか! 者どもこいつらを殺せー・・・・・・」


 皇帝の命令に誰も動かずトムが皇帝を殴り飛ばして。


「馬鹿者―! 貴様はそれでも皇帝かー」


 トムが呆れているとライザーが皇帝の服を破って口に詰めて話せないようにして破った服で縛り動けないようにしたがそれを止めようとする帝国人はおらず見ていたのだ。


 見ていた者の中から高位の貴族と思われる女性が進み出てトムに頭を下げてから。


「私は皇妃のサザンカ・バロンです。夫の陛下はそこで死んでいる宰相の操り人形で自分では何も出来ない駄目な皇帝です。息子は宰相のやる事、特に戦争と人族以外を奴隷にすることに反対して皇太子の身分を剥奪されて幽閉されております。どうか息子を助けて下さい」


 皇妃のサザンカの思いがけない告白にトムは驚き直ちに幽閉されている子供を出すように言い、皇妃のサザンカから帝国の事情を聞き出す事にしたのです。


 男性の自分より同性のローランの方が話しやすいだろうと思いローランに聞いて貰う事にしたのだ。


 皇妃のサザンカが話した内容は、先代の皇帝は争いが絶えない小国を併合して各国にあった奴隷制度を禁止し、税金も安くして善政を行った良い皇帝だった。


 その皇帝が亡くなると、皇帝が亡くなる前は真面目で皇帝に忠実だった宰相が後を継いだ今の皇帝が宰相を頼り切っていたのを良い事に。


「陛下は大陸全土を帝国の配下に置いて大陸の王者になれる実力をお持ちです」


 そう言って、その為に税金を上げて奴隷制度を復活させて自分は贅沢三昧で、祖父を尊敬する皇太子が宰相の政策に反対し出すと皇帝に皇太子は実力が無く平民の女を無理やり犯したりする馬鹿な男だと嘘を吹き込み、皇太子の身分を剥奪させて幽閉させたのだと言い。


 その他にも自分に反対する良心的な貴族に冤罪を着せて身分を剥奪させて牢屋に入れていたとローランに話したのです。


 その話を聞いたトムは嘘の話でないか確かめる為に街に出て住民と冤罪で牢に入れられている人たちから自分で実際に話を聞いたのだ。


 その結果、サザンカ皇妃の話は全部事実だと分かり、幽閉されていた皇太子に会い話してみる事にしたのです。




 面会する部屋で待っていると、幽閉されてやつれているが20歳くらいの青年が部屋に入り礼儀正しくトムに向かって頭を下げた後、毅然とした態度で。


「初めまして、私はキャバサ・バロンと申します。この度は幽閉から救い出して頂き感謝してお礼を申し上げます」


「俺はフォーク国の国王、トム・バンドウだ。型苦しいのは嫌いなので気楽に話してくれないか」


「ハッハハ! 母上が言っていた通り気さくな方ですね」


「そうか、君の母上から聞いたが君は先代の皇帝を尊敬して父親の皇帝のする政策に反対して幽閉されたと聞いたが間違いないか?」


「はい、その通りです。父上は、性格は悪くないのですが、気が弱く死んだ宰相の操り人形でして平民に生まれたなら良かったのですが・・・・」


「皇帝の息子に生まれたのが悪かったみたいだな」


「はい、その通りです。どうか命だけは助けて名前を変えて平民として田舎で農作業でもして暮らせるようにして頂けないでしょうか?」


「ウーン、それは難しいな、宰相や邪心王に操られたとは言え多くの罪の無い人命を奪ったのだからな」


「もっともです、私もトム様の立場でしたら同じ返事をしたと思いますが、一応私の此の世に1人だけの父親なので・・・・・・・・」


「分かった、皇帝の公表は死罪で首を切った事にしよう。後は君が上手くやれ」


「ありがとうございます。ダメもとで言ったのですが、あの馬鹿親父は死罪で死んだ事にして誰にも分らないように致します」


「それでだが、君は皇帝になる気はあるのか?」


「えっ?・・・・私が皇帝に、ですか? 何の実績や功績も無く力の無い私を国民が認めてくれるでしょうか」


「それは此れからの君次第だろう、最初から国民に支持される国王などいないよ」


「分かりました。頑張ってトム様のように英雄と呼ばれなくても良い皇帝がと言われるようにします。


「オイ、オイ、俺は英雄ではないぞ」


「アッハハ! 母上から聞きましたが南大陸ではトム様を英雄と呼んでいるみたいですよ。落ち着いたらトム様の国を見学に行きますので助言をお願いします。所でトム様は何歳なのです

か」


「俺は来月で19歳だ」


「ええー! 私は20歳ですから年下なのですか、5歳くらい年上だと思っていました」


「俺はそんなに老けて見えるのか」


「すみません、そんな老けて見えるのでは無くする事が凄いからですよ」


「慰めなくても良いよ。ハッハハ、俺は初対面でこんなに気分よく話せた同年代の男性は初めてだよ、此れからも友達付き合いをしてくれないか」


「私も同じですよ、友達と言わず何でも話し合える親友として名前も呼び捨てでつきあいましょう」


「じゃ、キャバサ此れから宜しくな」


「トム、私こそ宜しく」


 トムに初めて同年代の男性の親友ができたのです。

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