第14話「俺からの愛を期待をするな」

―― …… モリの先端が、徐々に輝きを増し始める ――。



 その光の塊が、次第に大きくなっていく。



 それは、莉拝の目に光が飛び込んでくる。眩しくて、目がチカチカと痛くなるほどの眩い光がモリを中心にを包み込んでいく。やがて、莉拝の脳に直接語りかけてくる。

「これが、我が力。長きにわたる、修練の結晶ぞ」――そう語りかけてきた。

まるで、身体中が光に満たされていくようだ。


(凄い……っ)


莉拝は、感動していた。


「では行くぞ」


 マハロの身体からだ全体を覆うように、オーラのようなものが立ち上っている。

精密で緻密な機械仕掛けのような複雑さが、莉拝にも伝わってくる。


マハロは構えていたモリを空高くに突き上げ、『必殺技』を解き放つ。

「【波動】!!」

掛け声とともに、莉拝の目の前に衝撃波が生まれた。


空気を震わす衝撃音と共に、『ゴオォンッ!!』と音が鳴り響く。



 莉拝は、恐るおそる、目を開けた―― …… 。



 そこには、なんと! 預言者マハロが2人いるではないか!?


「は? どゆこと??」


マハロが モリの柄を 地面へ叩きつければ、もうひとりのマハロも同じように モリの柄を 地面へと叩きつける。


「これぞ、我が生涯掛けて修得した技。

 神々は、これを【遠隔会話】と名付けたもうた!」


 ――凛とした声が地を響き渡り、緊張で張り詰めた街へ木霊する。


「これが、わしのチカラの一部なのだ。この世界の理では説明できないものじゃ。

 お主は、わしの力を受け継ぐことで、この世界において最強となったのだ」



 預言者が、自信満々に言い放つ。莉拝は驚いた。光の波動が自分の身体を通り抜けていく感覚が未だに残っていた。これが、預言者マハロの『必殺技』なのか……、スゴっ、くない、、、。


「いや、それ。ただのリモート会議みたいなモノだろう!

 カメラとモニターを搭載したパソコンやアイホンで、誰でも当たり前に使えるヤツじゃん!」



 その轟音ツッコミによって発生した風により、辺り一面が砂埃に包まれた。

 莉拝は、続けざまにえた。


「『すごいっ!!なんだこれっ!』と興奮した俺の気持ち、返せよ!」



 その反応を見て、マハロは愕然とする。


「なんじゃと!?

 わしが数十年間も、血を吐くような努力をして得た『必殺技』が、誰にでも出来るとはどういうことか……? 魔王軍との戦いや天地戦争で大いに活躍した、この技が……。カメラ? モニター? なんだそれは? 勇者殿のおられた世界は、いったい、どうなっておるのじゃ?!」


「科学だよ。か、が、く」 莉拝は、地団太じだんだを踏んだ。



――つまり、この世界で 最高 と呼ばれた『必殺技』のひとつが、広く一般に普及しているということらしい。


「………………、まぁよい! この力は、今やこの世界でお主しか扱えぬ」


――それは、他の誰も持っていない、特別な力だという意味だった。


 預言者マハロは光り輝くその右手ミーディアムを、莉拝の心臓へとゆっくりと押し流していく。


「さあ、勇者殿よ! わしが授けた力で、奴らを一掃してくれようぞ!」

「いや。その前に、まずは作戦会議をしよう」


――莉拝は、冷静に答えた。


「なんと……?お主、まさか臆したわけではなかろうな?」


預言者は黒々とした口髭を触りながら、

「情けない奴め……」という目つきで莉拝を見下ろした。


莉拝は、「ちげーよ」と言い返しつつ、

頭の中で考えていたことを、そのまま言葉にした。


「俺には、わかるんだ……。アンタのチカラを授かったみたいだけど、それでもやっぱり勝ち目は薄い気がする。アンタが体験した努力が、ゆっくりと俺のなかに流れ込んでくるだ。何度も何度も履修した経験や、悩んだり苦しんだりした思い出が伝わってくる。

 でもっさ。こんなんじゃ、あの太った肉ダルマみたいな巨漢ダニディスに 勝てる気が しないんだ。だから、ここは一旦引いて対策を練った方がいいと思う」


 莉拝は、預言者に向かって指をさし、さらに続けた。


「でも、ここで逃げても何にもならない。だから、――――――」


 その先を、続ける事は出来なかった。


――預言者の顔が、青ざめていく。恐怖が視線となって、莉拝に絡みつく。


 ゆっくりと振り返れば、脂肪の塊のようなかおが莉拝を舐めるような視線で見つめていた。徹底的に相手を見下し、余裕の表情を見せ付けている そのかお は、見たら忘れるはずもない。あのオークの上位種の - ウルク - によく似た貌ダニディス だ。


「でっひっひ。


   みぃ~つけ、たぁ~」




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