第13話 自然に還す時間を供養の時間


「なにが、預言者だよ! 希望が一瞬にして、灰になったわ!」莉拝は怒りに任せ、

「……うむ。そういうのを“元の木阿弥”というのだ」マハロは、知識を披露した。


「やかましいわ! そもそも、神託っていうのは相手を導くモノなんだろう?

 なんで、2択なんだよ?」


 莉拝りはいは、自身の置かれている立場を見失った。


「……うむ。そうさのう。この状況でそのような事をお聞かれなさるとは、なかなか肝が据わっておられるようだな……」


 マハロは、莉拝りはいの“ツッコミ体質”を勇敢な姿勢と勘違いして、話し始めた。


「そもそも”神託”とは、『神のお言葉・思想を聞き預かり、代弁者として人々に語り伝えること』を差します。決して、すべてが正しい解決方法とは限りませぬ。神々が生物すべてのバランスを憂慮なさった結果の妥協案が多ございます」


「………なら。さっきの2択は、いったい?」 やや理解が追いついてこない。


「あれは、このマハロが状況を分析して出した、スペシャルな2択でございます」

「あぁ~、スペシャル~っ……?」


「はっはっはっ。気に入りましたな。

 この言葉の響きパワー。最先端 の 異文化交流 ワードですぞ」今度は、どや顔だ。


(あぁ。この流れは、駄目なヤツだな)と莉拝は瞬時に理解した。



「―――して、勇者殿。のんびりと考えておる時間はございませぬぞ。

 南の方角から、ふたり。先ほどの『召喚来術くも』を破られたことに驚き、こちらに向かって来ておるようじゃ」


 その言葉に、莉拝は現実に戻された。確かに気色の悪い虫は消えたが、味方がいない状況は、何も変わっていないのだ。


 見つかれば、殺されるかもしれない。だからといって、人殺しはしたくない。自分が助かる為だけに、大勢のひとをあやめるなんて、もっての他であった。


 だが、このような切迫した状況下で神がかり的な解決策がでるわけもない。


かくなるうえは――――。


「頼む!」 莉拝は、預言者 マハロに土下座をした。


「俺は、勇者だから。勇者として生きる覚悟がある……この世界は救わないといけないと思う。それに、助けたい人たちがいるんだ。だから、お願いします……!

 どうか、力を貸してください!」預言者 を ヨイショ することにした。


「ふぅむ。わしは神ではないからな。あまり過度な期待をされても困るのだが……。

 この世界に干渉するには、神々たる『大神七星』様方の承認が必要である。

 だが、 あの腐りきった者どもは、わしも気に食わん。………まぁよい。

 これも何かの縁じゃろ。わしの力でよければ、喜んで貸してしんぜよう」

 


 ヨイショ の結果。預言者は、やや態度がデカくなった。



「本当か……!?」 莉拝は驚きに満ちた。


「うむ。わしが、お主に力をあたえよう。わしのチカラをな。

 さて、まずは これを渡しておく」


 マハロは、自身の『心臓』へと 右手をさし込む。

そこから光り輝くモノを取り出し、莉拝の目の前に見せた。


「これは、この世界でいうところの『必殺技』や『 決め技フィニッシュブロー 』という代物で、わしの力の結晶でもあるのだが……この世界の理から外れているゆえ、お主ならば扱えるはずだ」


「必殺技……?そんなのが、あるのか……?」


「うむ。人は誰しもがそれを持っておるのだ。そう、得意な武術・学問・芸能などについての素質や能力を磨き続ければ、必ず努力が報いるのだ」


「必ず………?」


「そう。必ずだ。そして、必殺技には、いくつかの段階がある。

 この世界にある武器の技であったり、魔法であったり、スキルの技であったり……

それらを複合させて使うことで出来ることもある。


 例えば、わしの『必殺技』であれば、このように発動する」


 預言者は、モリを構え実践してみせる。


眉間に深く皺が刻まれ、集中力を一点へと。モリの刃先から光を纏わせていく。

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