第10話 [骨揚げ] [骨拾い] は、キリスト教徒に恐れられた

 全身を強く打ち付けられた心咲みさきが、意識をとり戻した。


―――と同時に、声帯が壊るほどの悲鳴が、街に響き渡った。


 心咲は その痛み、その苦しみに、まぶたを 腹部を 掻きむしった。

 血が滲み出ては、すぐに回復をする。


抜きとる事のできぬ 毒針 に、終わらぬ苦しみが 心咲みさきを襲った。


 ルトアは痛みに堪え、心咲の元へといずる。


「―――クッ。ここまで、強化されていたとは……」 


 誰に毒づいているのか分からない 独り言 を吐きながら。



 莉拝りはいも全身を打撲はしていたが、やはり回復をしていた。

ただ、脳震盪のうしんとうを起こしていた為に、動けずにいた。


「襲撃、か?」

 

 自分の身体能力を測りきれずにいる 莉拝。

彼にとってみれば、何が起きたのか 全くわからなかった。



 ―――突然の墜落。


 傾いたと思ったら、あっという間に、民家の煙突にぶつかった。

そのまま、勢いよく 屋根や 壁に 身体を打ち付けられてしまった。


 衝撃で、手を放してしまった。

しかし、屋根からの転落時に、頭を手で覆ったので 首の骨を折らずにすんだ。


 神様に身体強化をしてもらっていなければ、今頃は 打ち付けられた トマト のようになっていただろう。もちろん、本人は気づいてやしない。



「おい! おまえ!」



 莉拝に向かって 大声で 話しかけてきた。


 そちらを見ると、心咲を抱きかかえた ルトアがいた。彼女の悲鳴が大きすぎて、向こうから聞き取れるか心配だったようだ。



「今より、私と彼女の時間の流れを止める!

 おまえは、これを持って逃げろ!」


 手には、鶏の卵サイズの 黒い塊 があった。


「それと、コイツを持っていけ!」


 いつものように、何もない空間からアイテムを取り出して、放り投げる。


「これって、何だよ!?」


 ルトアから放り投げられた物をみて、莉拝は驚いた。

それは、[ミサンガ] のような形で、細かくびっしりと文字が書き込まれていた。


「それは、[フェズィーゲルト] だ!

 腕にむすべば、強すぎる力をコントロールできるアイテムだ!

 だが、おまえが本気で殴れば、相手を 吹っ飛ばすこと ぐらいは できる!」


 ルトアは、左手を掲げて見せる。

 そこには、同じの物が結ばれていた。


「いいか! 相手は『人狩り』だ! 捕まったら、殺されると思え!

 遠慮はいらん、ぶちかませ!」



 莉拝は頷いた。

 相手を殺してしまうことがないと判り、安堵した。



「先ずは、南へ向かえ! 7日と歩けば、[イクス・ラスカ] という港町へ出る!

 そこで、『セゾンの騎士』を探せ!

 これを見せ、事情を話せば、必ず おまえのチカラに 成ってくれるだろう!」


 再び、ルトアは [黒い卵] を見せた。


―――そこから 蒼黒い光が 放たれ、呪文の帯が ふたりを包むように 現れて、 ふたりは消えてしまった。


 その足元に 蒼黒い呪文が刻まれた [黒い卵] だけを残して―――。



 辺りは、先ほどの事が嘘のように静まり返った。

 あの騒ぎが、嘘であったかのように…………。





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