第16話 溜息
「えいっ!!」
頭に短剣を突き刺すとゴブリンが魔石に変わった。
『レベルが上がりました』
「ようやく私もレベルが二桁になったよ!!」
さっきレベルが上がってから、まだ5体しか倒していないのにもうレベルが上がった。
【成長の指輪】が無かったらまだレベル6くらいだったんじゃないかな?
そう考えたら【成長の指輪】って思ってたよりもチートな装備なのかもしれない。
まあ私が知らないだけで経験値が3倍とか4倍とかになる装備もあるかもしれないけどね。
家に帰ったら調べてみよう。
今調べたいけど、ダンジョン内は圏外になっちゃうから調べられないんだよ。
そんなことを考えながら進んでいると階段を見つけた。
これを降りると次は5階層だ。
5階層からはゴブリン以外に、ハイゴブリン、ゴブリンシャーマン、ゴブリンスライムも出現するようなる。
「さらに気をつけて進まないといけないね!」
私は深呼吸してから階段を降りた。
降りた先には何もいなかったので少し安心した。
ここから先も1体でいるぼっちのゴブリンとしか戦わないことを徹底していれば負けないはずだ。
「どんどんレベルを上げていこ〜!」
★
探索を始めて1時間以上が経った。
私はすでに9階層まで来ていた。
けど、まだレベルは1つも上がっていない。
レベル10からはレベルが上がりにくくなっているとかそういうのではない。
レベルが上がっていない理由は単純で、まだ1体もゴブリンを倒していないからだ。
倒していない理由もちゃんとある。
それは1体だけでいるゴブリンが全くいないからだ。
「5階層からはどうしてぼっちがいないの? みんな仲間意識高すぎない?」
このダンジョンで5階層を過ぎてからぼっちなのは今のところ私だけだ。
こんなスキルを持っているうちはずっとぼっちだよ……
「はぁ……」
溜息をつきながらとぼとぼと進んでいく。
左の道の先にはハイゴブリンとゴブリンシャーマンがいて、右の道の先には階段がある。
戦うか少し悩んだけどやめておいた。
ここで死んだら元も子もないからね。
私は右に進み、階段を降りていく。
階段を降りた先には見慣れた扉がある。
「ついにボスだ。念の為あれを使っておこう!」
私はリュックから【力のポーション(小)】とお茶を取り出し、【力のポーション(小)】をいっきに飲みほす。
「まずぅ……」
すぐにお茶を飲んで口の中からポーションの味を消す。
「お茶がなかったらこんなもの飲めないよ! ――ってそんなこと言ってないでポーションの効果が切れる前にボスを倒そう」
力のポーションの効果どれでも1分しか持たない。
変わるのは攻撃力の上昇する割合だよ。
私はすぐに扉を開けてボス部屋に入る。
ポーションのおかげでいつもよりも扉が軽く感じた。
部屋の真ん中には剣を持ち、鎧を着ているゴブリンがいる。
たぶんこれがゴブリンナイトなんだろう。
大きさは私よりも少し大きいくらい。
鎧を着ているからお腹とかに攻撃をしても意味がない。
「狙うなら関節部分だね」
普通だったら関節部分に攻撃を当てるのが難しいんだろうけど私なら余裕だ。
「気づかれていない1回目の攻撃で倒してやる!」
私は短剣を構え、ゴブリンナイトにゆっくりと近づていく。
サラマンダーですら私に気づかなかったのだ。
それよりもはるかに弱いゴブリンナイトが私の存在に気づけるわけがない。
私はゴブリンナイトに攻撃が届くところまで近づいた。
「またねっ!」
私はそう言いながら鎧が無いゴブリンナイトの首に短剣を振るった。
ポーションで強化されている私の攻撃でゴブリンナイトの首は胴体から離れ、宙に舞った。
胴体の部分は魔石に変わり、切り離された首の部分は大きな牙に変わった。
『レベルが上がりました』
ついに目標だったレベル11に上がった。
ステータス画面を見ないと分からないけど、たぶんこれでスキルポイントが100になっているはずだ。
やった〜!! これでついにあのスキルが手に入るよ〜!
って言って喜びたいけど、それはダンジョンから出てからにしよう。
私は魔石と牙を拾ってリュックに入れる。
この牙はモンスターを倒した時、稀に入手することができるドロップアイテムと呼ばれるものだ。
ドロップアイテムは武器や防具したり、高値で売れたりするものもある。
私の場合は売りにも加工にも行けないからお蔵入りかな。
「せっかくドロップしたのにー!!」
私は文句を言いながら報酬部屋に向かった。
『ダンジョン初クリア 報酬:【治癒のポーション(大)】』
『ダンジョンクエストのクリアを確認』
『ソロ クリア報酬:【守りのポーション(小)】』
『1分後、ダンジョン入口に転移します』
「報酬が思ってたよりもしょぼい……」
苦労してクリアしたのポーションだけってあんまりだよ。
楽しみを減らさないためにネットで報酬を調べずに来たのに……
「はぁ……」
今日、私は何回溜息をついたんだろう。
「もうヘトヘトだよ。早く帰ってアイスが食べたい……」
この後はいつも通り謎の光に包まれ、入口に転移した。
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