第15話 油断
探索を再開して、すぐに階段が見つかった。
「ゴブリンも階段も探している時は全然見つからないけど、探してない時はすぐ見つかるよねー!」
どうしてなんだろう?
物欲センサー的なものがはたらいているのかな。
3階層でもう少しゴブリンを倒してから4階層に移動しようと思ったけど、前に同じことをして階段がどこにあったか分からなくなったからやめておいた。
私は階段を降りて4階層に移動する。
降りた先には3体のゴブリンが待ち構えていた。
さっきいたのと同じで全員が木刀みたいな感じの武器を持っている。
ほんとにたまたまいただけだよね?
どう考えても待ち伏せしていたようにしか見えない。
ほんとに待ち伏せる知能がないのか疑わしくなってきたよ……
あと、今の状況って私じゃなかったら結構ピンチ?
だって3対1だよ
レベル9の人が1対1で戦っても勝てるかどうか怪しいのに、それが3体もいるんだよ?
要するに、3対1で勝てちゃう私はなかなかすごいってことだね!
「よーし、やるぞー!」
とりあえず、瀕死の状態にしないと倒しにくいから短剣で喉元を切り裂いていこう。
「はあっ!!」
まずは1体目、短剣を喉に思いっきり喉元に突き刺すとゴブリンはその場で倒れた。
ゴブリンからしたら何が起きたかすらも分からなかったと思う。
「ていっ!」
今度は2体同時に短剣で喉元を切り裂いた。
1体は倒れたけど、もう1体は切込みが浅かったのか倒れなかった。
「グッ、グギャァ!?」
ゴブリンは驚いたような声を上げながら持っている木刀を振り回し出した。
「きゃっ!?」
振り回している木刀が私の頭に直撃して私はその場で倒れてしまった。
「痛い……誰か助けて……」
たった一撃で私のHPの半分以上が削られた。
頭がくらくらして、視界が霞んでいる。
このままだと殺される……
ゴブリンはもう一度、木刀を振り回し出した。
次当たったら私は確実に死ぬ。
「こんなところで、死んでたまるか……!」
私は痛みを必死に堪えながら何とか立ち上がり、手に持っている短剣をゴブリン目掛けて思いっきり投げつけた。
「おねがい、あたって……!」
一直線に飛んでいった短剣はゴブリンの頭に直撃し、ゴブリンはその場に倒れた。
「まだ、倒せてない……トドメを刺さなきゃ…………」
3体のゴブリンがダンジョンの床に瀕死の状態になって倒れている。
でも、まだ生きている。
生きている限りはダンジョンの性質上、少しずつHPが回復していずれは起き上がってしまう。
私はふらつきながらゴブリンに近づいて、頭に刺さっている短剣を引き抜く。
「これでトドメだっ!!」
引き抜いた短剣をもう一度ゴブリンの頭に突き刺す。
1回では死ななかったから何回も突き刺した。
5回以上刺してようやくゴブリンは力尽き、魔石に変わった。
「残り2体……」
私はそう言って残り2体にもトドメを刺しにいった。
トドメを刺し終えたと同時に足の力が抜けて、私はその場にへたりこんでしまった。
「はぁ、もう動けないよ……」
気が抜けた途端、頭に激痛が走った。
最後の方はそんなことも忘れてしまうくらい必死だった。
治癒のポーションを持ってきていたら今すぐ飲むんだけど、今日は力のポーションしか持ってきていなかった。
時間が経てば少しずつ回復するから大丈夫だとは思うけどそれまでずっと痛みを我慢するのはきついよ……
★
数十分経ってだいぶ落ち着いてきて、痛みも少しはマシになってきた。
あの時、ここをこうしていればとかいろいろ考えた。
けど、そんなことを考えても仕方ない。
どんなに頑張っても過去には戻れないからね。
今こうして生きているから結果オーライだよ。
さっきの戦いで隠密の強さを改めて実感した。
それと同時に自分がどれだけ弱いのかも分かった。
隠密があるから自分が強いと思い込んでしまっていた。
だから格上のモンスター相手に油断していた。
「次からは絶対に油断しない!!」
私はそう誓った。
ステータス画面を開き、残りのHPを確認すると7割くらいまで回復していた。
頭の痛みもだいぶマシになってきたし、目も普通に見えるようになってきた。
「そろそろ出発しよう!」
拾い忘れていた魔石を回収して探索を再開した。
4階層にもなるとゴブリンに遭遇する頻度も高くなってくる。
けど、今狙っているのは1体で歩いているゴブリンだ。
それ以外のゴブリンとは絶対に戦わない。
2体でも勝てると思うけど、さっきみたいなことになってからじゃ遅いからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます