第10話 お母さんっぽい
『お給料あげるの忘れてたー!!』
送った瞬間に既読がついた。
涼っち、歩きスマホはよくないよ。
『ほんとだ! すぐ取りに行くね!』
30秒後くらいに玄関のドアが開いた。
「お給料ー!!!!」
戻ってくるのが早いし、うるさいよー!
『pimoは1パック150円くらいだから3000円。ていうのは嘘で4000円あげるよ』
「え、そんなに貰っていいの?」
涼っちは驚いた顔をしている。
『私のせいで遠くまで買いに行かせちゃったからね。あと少なすぎたら次買いに行ってくれなさそうだし』
「ほかりんありがと……? え、次も買いに行かなきゃダメなの?」
『涼っち以外頼める人いないもん』
「そうなんだ……それなら私に任せてよ!!!」
涼っちはどうしてドヤ顔をしてるんだろ。
謎すぎだよ。
『じゃあまた今度〜! おやすみ〜!』
「明日も呼ばれそう。一応予定空けとくかぁ。ほかりんもおやすみ!」
今度こそ涼っちは家に帰った。
「私はそろそろ寝ないと明日のダンジョン探索に影響が出ちゃうから歯磨きだけして寝よう」
夜ご飯は食べてないけど、pimoでおなかいっぱいだからいらないかな。
不健康な気がするから明日はちゃんと食べよう。
『おやすみ!!』
もう一度LEINを送ってから私は眠りについた。
★
翌朝。
LEINの通知で目が覚めた。
『おっはよー!』
『起きた?』
『おきて!』
『おきろ』
『ねえーはやくー!』
みたいな感じのやつがひたすら送られてきていた。
『おはよー。涼っち起きるの早すぎだよー』
『そんなことないよー。ほかりんが遅いだけだよ』
そんなことないはこっちのセリフだよ。
だってまだ7:30だよ?
夏休みに7:30起きってそんなに遅くないと思うんだけど……
『5:30起きって睡眠時間足りてるの?』
最初の『おっはよー!』が5:30に送られてきていたからそう思った。
徹夜していた可能性もあるけどね。
『もーまんたい! 5時間は寝てるからねー』
5時間しか寝てなくても問題無いっていいなー。
私は8時間以上寝たのにまだねむいよ。
『おやふみなさう……』
『二度寝しないの!』
だって眠いんだもん。
夏休みくらい寝かせてほしい……
『おやすみ』
『ねーるーなー!!』
お母さんみたいなこと言わないでよ。
『もうアイス買ってこないよ?』
『おきた』
『ほかりんはやっぱちょろいなー』
ちょろくなんかないけどアイスのためなら仕方ない。
『ダンジョン行く準備するからまた後でね』
ていうのは嘘で、二度寝する。
7:30起きは眠たいよ。
『りょ。あ、でも二度寝したら許さないからね』
さっそくバレちゃったよ。
涼っち鋭すぎない?
『しません!!!』
しょうがない、ちゃんと準備するよ。
数分毎に送られてくる涼っちのメッセージに既読をつけながらリュックに必要な物を詰めた。
て言っても今日はスライムダンジョンに行くだけだからたいした準備は必要ないんだけどね。
『忘れ物してない? 大丈夫?』
涼っちが完全にお母さんになっちゃってるよ。
『大丈夫!』
『無茶しないでね』
『うん。ありがと!』
これでよしっと。
さっそくダンジョンに向かおう。
★
スライムダンジョンに到着した。
今の時間は8:30過ぎ。
この時間帯はそこまで混んでないからいいね。
「今日もはりきってこー!」
今日の目的はレベル上げよりもクエストのクリアだ。
パーティでクリアは無理だけど30分以内にクリアはボス以外を無視していけばできるはずだ。
私はダンジョンの入口を通り、ダンジョン内に転移する。
今日はたまたま転移先にベビースライムがいた。
1階層でモンスターに会うのは初めてだね。
1体くらいなら倒してもあんまり時間はかからないけど、それをしだすと2体なら、3体ならってなりそうだからやめておく。
「サクッと階段を見つけてクエストをクリアしちゃおう!」
私は走って階段を探す。
1階層も2階層も1分くらいで階段を見つけることができた。
この調子なら余裕でクリアできそうだね。
と思ってた。
今は4階層。
体力の限界で死にそうだ。
今言ってる体力はHPのことじゃなくてスタミナ的な意味の体力だ。
「もう歩けない……私こんなに体力無かったけ……」
最近運動もあんまりしてなかったし、アイスいっぱい食べてたし……
「私太った……? まさかそんなことないよね? うん、ないない。気のせいだよ、きっと!」
涼っちがそんなことを言ってたから意識してしまったよ。
次会った時はくすぐりの刑だ。
少し休憩してからまた階段を探し始めた。
最初の方で結構時間を稼いだからまだ間に合うはずだ。
途中で出てくるベビースライムは全て無視だ。
こんな時に限ってベビースライムが大量に出現する。
「なんとか間に合ってー!!」
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