第8話 エクストラボス
私はゆっくりと部屋の中に入っていく。
バタンっ!
後ろで扉が閉まる音がした。
扉が閉まると同時に部屋中に声が響いた。
『エクストラボス サラマンダーの討伐 制限時間は30分です』
『30分後、10階層に転移します』
声が聞こえなくなると部屋の中に魔法陣が出現し、そこから炎を纏ったトカゲのようなモンスターが現れた。
大きさは2mくらいあり、纏っている炎によって周りの物がどんどんと灰に変わっていく。
「こんなの無理だ、倒せるわけがないよ……」
サラマンダーを見た瞬間、もう1つ階段について何も書かれていなかった理由が分かった。
こっちの階段を選んだ人たちはエクストラボスに殺され、ダンジョンから帰って来れないからだ。
もし違っていたとしても、私にはそうとしか思えない。
私は相手のステータスが分かるようなスキルを持ってないから感覚でしか分からないけど、Eランクダンジョンにいるモンスターの強さじゃない。
Bランクダンジョンのボスレベルはあると思う。
そんなモンスターと同じ部屋に30分。
普通なら諦めるしかない状況だ。
「普通ならねっ!」
私はサラマンダーに木刀を投げつける。
回転しながら飛んでいった木刀はサラマンダーに触れる前に灰に変わった。
けど、サラマンダーがこっちに気づいた様子はない。
私の手から離れても少しの間なら隠密の効果は残るのかな。
それか当たらなかったから気づいてないのか。
「どっちにしろ倒すのはやっぱり無理だ……それなら30分後にある転移まで待つしかないね」
待つだけなら余裕だ。
最初はそう思っていた。
「暑くて頭がくらくらする……」
サラマンダーが現れてから15分くらいが経過した。
サラマンダーが放つ熱気で部屋の温度がどんどん上がっていく。
「いま、なんど……?」
温度計アプリを開いて確認すると42度と書いてあった。
「しんじゃう……よ…………」
★
「………………私生きてる?」
目を覚ました時、私は見覚えのある場所にいた。
正確に言えばここに来たのは初めてだけど、同じような場所に昨日行ったからね。
「目の前にボス部屋の扉があるってことはここって10階層? だよね?」
私は急いで状況を把握する。
今の時間は16時、私がエクストラボスの部屋にいたのが13時だから3時間も気絶していたってことになる。
それと手に持っていたはずの短剣が無くなっている。
「さっきの部屋に置いてきちゃったのかも。でもどうしてスマホはあるんだろう?」
無くなったのは残念だけど、考えても仕方ない。
そんなことよりも先にボスを倒してダンジョンをクリアしよう。
「ダンジョンボスは確かワーウルフだったはず……」
ボス部屋の扉を開けると二足歩行の狼のようなモンスターがいた。
サラマンダーを見た後だとものすごく弱そうに見える。
私は木刀を構え……
「あっ、そういえばサラマンダーに投げたから無いんだった! どうやって倒そうかな……」
リュックの中に武器になりそうな物がないか探してみる。
「これなら倒せる、かも?」
私はワーウルフに近づき、魔法瓶の水筒で頭を何度も叩く。
30回以上叩いてやっとワーウルフは倒れて魔石に変わった。
『レベルが上がりました』
レベルが3に上がってからワーウルフしか倒していないのに、またレベルが上がった。
「【成長の指輪】さまさまだよー!」
ワーウルフの魔石を回収してから報酬部屋に入る。
『ダンジョン初クリア 報酬:【スタミナのポーション(大)】』
『ダンジョンクエストのクリアを確認』
『ソロ クリア報酬:【スタミナのポーション(小)】』
『1分後、ダンジョン入口に転移します』
私は報酬をリュックに入れ、転移を待つ。
「早く帰ってアイスが食べたいよ〜!」
入口に転移した後、私は魔石をボックスに入れて家に帰った。
魔石は合計2900円になった。
アイスが20本くらい買えるけどこのお金は貯金することにした。
あれを買わないといけないからね。
家に帰ってすぐに洗濯機を回す。
火トカゲのせいで服が汗で汚れてしまったからね。
その間にシャワーを浴びる。
シャワーを浴びたあとはこれしかない。
「やっぱりお風呂上がりのアイスは最高だぁぁぁ!!!」
アイスはやっぱり至高の食べ物だよ。
ここは天国なのかもしれない。
私はいつの間にか5パックくらい月見大福を食べてしまっていた。
朝1パック食べたから残り2パック。
「アイスが無くなる前に呼ぶしかない!」
けどその前に洗濯物を干し、パジャマじゃない服に着替えて、お給料を用意する。
貯金するって言ってた気がしなくもないけど気にしたら負けだよ。
ダンジョンに行けばある程度なら稼げるもん。余裕だよ。
「準備おっけーだね! 早くLEINを送ろう!」
『緊急クエスト、アイスをお願いします』
あとは既読がつくのを待つだけだ。
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