第7話 2つの階段
レベルが上がった私は鼻歌を歌いながら探索を続ける。
今の私はアイスを食べている時と同じくらい気分がいいのだ。
「ふんふふんふふ〜ん♪」
今なら掲示板で嘘つき呼ばわりしてきたやつらを許してあげないこともない。かも?
それにしても階段が見つからないよ。
なんかさっきから何回も同じ道を通っている気がする。
気のせいだったらいいけど……
そう願って歩き続けること約30分。
「もうダメ、疲れて足が取れそうだよ……」
少し休憩しようと思い、私は壁にもたれかかった。
カチッ!
「今の音なに!?」
壁の方からボタンか何かを押したような音が聞こえた。
音にびっくりした私はすぐに壁から離れる。
次の瞬間、耳が痛くなる程の騒音と共に壁が動き出した。
「罠じゃないよね……?」
動き出した壁は左右の道を塞ぎ、私は閉じ込められてしまったと思った。
すると、今度はさっきまでは壁だった場所が奥が見えないくらい長い1本の道に変わった。
「この道を進めってことなのかな?」
左右の道を塞がれた今、進むことしかできない。
進んだ先に何があるか分からないからすごく怖い。
「せめてもう少し明るくしてよ……」
ダンジョンの薄暗さのせいで余計怖さが増す。
一本道を進み始めて1分くらいが経ち、やっと道の先に何かが見え始めてきた。
「あれって……階段?」
さらに進むと階段が2つあるのが分かった。
これを見て私はある情報を思い出した。
ダンジョンには隠し部屋と呼ばれる部屋があり、2つの階段がある部屋のどちらかの階段が隠し部屋に繋がっているという情報を。
「この階段のどっちかが隠し部屋に繋がっているはず! けど灰のダンジョンに隠し部屋があるなんてどこにも書いてなかったよ? 今回も私が初だったりして。さすがにそんなことないと思うけどねー」
私は2つの階段を見比べる。
どこかにヒントが隠されているかもしれないからね。
「んー、2つとも全く一緒だ。こうなったら運に任せるしかないね!」
当たり付きのアイスで、3回連続当たりを引いたことがある私なら当たりの階段を選ぶくらい余裕だよ。
当たりの階段を選べば隠し部屋、はずれの階段を選べば……?
あれ?
もう1つの階段はどこに繋がっているんだろう?
そういえばもう1つの階段については何も書かれてなかった。
普通の階段と同じだったから書く必要がなかったのかな?
「ま、いっか!」
考えても仕方がない。
時間がもったいないし、どっちの階段を降りるか早く決めよう。
「よーし、私は右利きだから右にする、と見せかけて左!」
私はそう言って左の階段を降りていく。
いつもの階段よりも狭くて暗い。おまけに長い。
転びたくないので一段一段慎重に降りていく。
階段を降りた先には今にも壊れそうな木の扉があった。
「やっと着いたぁ! あとはこの扉を開けるだけだね!」
私は勢いよく扉を開けた。
その衝撃で扉が壊れちゃったけど私のせいじゃない。
もともとぼろぼろだったもん。
だから私は悪くない。
部屋の中には下に降りる階段と開いた宝箱が置いてあった。
どうして開いているのかは分からないけど、宝箱があるからここが隠し部屋ってことでいいはず。
宝箱の中を覗いてみるとガラスでできた短剣が入っていた。
「切れ味は良さそうだけど1回使ったら割れちゃいそう。使い捨ての短剣って嬉しくないよ……」
置いていっても仕方がないので持っていくことにした。
リュックに入れたら絶対割れるから手で持っていくよ。
「ふっふーん! これで私も二刀流だよ!」
木刀とガラス製の短剣という変な組み合わせだけどそんなことは気にしない。
短剣以外に何かあるかもしれないと思い、部屋の中を探し回ったけど何も無かった。
探す時、両手が塞がっていたら何も出来ないことに気づいた私は木刀をリュックに入れた。
もうこの部屋に用はないので先に進もうとした時にふと思った。
「来た道を戻ったらもう1つの階段も降りれるかも? どうしてかは分からないけど扉がないから戻れそうだよ」
私やっぱり天才かも?
戻っても階段が塞がってる可能性はあるけどその時はその時だ。
短剣を割らないように降りた時よりも慎重に登ったからさっきの倍以上の時間がかかってしまった。
「階段が塞がってなくて良かった! 塞がってたら今の苦労が無駄になるところだったよ」
降りるのは楽だったけど、上るのは大変だった。
もう一歩も動ける気がしないので少し壁にもたれて休憩することにした。
今回はボタンになっていたりはしなかったので、もたれても何も起きなかった。
10分くらい休憩したからそろそろ階段を降りよう。
「どこに繋がっているんだろうね。たのしみ〜♪」
転ばないように慎重に降りる。
今転んだら短剣が粉々になっちゃうし、刺さったりしたら大変だからね。
階段の終わりにはさっきと同じように木の扉があった。
今回の扉はボロボロじゃなかったのでホッとした。
「この先には何があるのかな?」
私はそう呟いて、ゆっくりと扉を開けた。
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