第4話 イタズラ

 アプリでスキルポイントの使い方を調べてみるとこう書かれていた。


『スキルポイントを使用するとスキルを獲得できる。スキルによって必要なスキルポイントの量が変わってくる』


「スキルはステータスを獲得した時以外でも手に入るんだ! 10ポイントで獲得できるスキルってあるのかな?」


 獲得できるスキルについても調べてみたけど、最低でも100ポイント必要らしい。

 レベルが1上がって10ポイント貰えたから、100ポイントためるには最低でもあとレベルを9も上げないといけない。

 ベビースライム50体とスライム1体でレベル1上がったから、単純計算でベビースライムを450体とスライムを10体倒さないといけないことになる。

 でも、レベルが上がるにつれて必要経験値も上がっていくはずだからこの倍くらいは倒さないといけないと思う。


「そんなのんびりレベル上げなんてしてられないよぉ! もっと経験値が多いモンスターがいるダンジョンって近くになかったっけ?」


 地図アプリを開いて近くのダンジョンを調べてみると歩いて行ける距離にあるダンジョンでクリアできそうなダンジョンは2つしか無かった。


 1つはスライムダンジョンと同じEランクダンジョンの灰のダンジョンで、もう1つはDランクダンジョンのゴブリンダンジョン。


「ここはルーレットで決めよう!」


 私はルーレットアプリを開き、項目のところにゴブと灰を入力する。


「よーし、スタート!」


 スタートボタンを押してルーレットが回り始めた。

 回っているルーレットが少しずつゆっくりになっていき、灰の方に止まった。


「ルーレットだし、仕方ないね……」


 Dランクダンジョンに行ってみたかったから少し悲しい。


 このあと、スライムダンジョンにもう1回行こうか悩んだけど、やっぱり家に帰ることにした。


 魔石は各ダンジョンに3つくらい設置されている魔石換金ボックスみたいなのに入れてきた。

 ベビースライムの魔石が51個で2550円、スライムの魔石が1個で300円、クエスト報酬で貰った魔石(中)は500円もした。

 合計3350円だからアイスが20本以上も買えてしまう。

 ダンジョンはやっぱりアイス天国だね。


 ポーションとかはダンジョン近くの買取ショップで高く売れるけど私は隠密が解除できないから売りに行けない。

 解除できたとしてもポーションは必要だから売らないけどね。


 それとクエスト報酬でもらえた【成長の指輪】は装備すると経験値が2倍になるという効果だった。

 どれくらいのレア度なのかは分からないけど、無くさないように指にはめておくことにした。


 家について、すぐにシャワーを浴びた。

 髪をドライヤーで乾かしながら、今日ダンジョンであったことを思い出していた。


 初クリア報酬は【成長の指輪】だったけど、クリア報酬は何が貰えるんだろう。

 もう1回いけば貰えたりするかも?

 でもクエストクリア報酬は1人1回だけしか貰えないからやっぱ無理かなぁ。

 あとでアプリにある匿名掲示板にでも未遭遇クエストのことを書き込んでおこう。

 これでちゃんとクエストがあることの確認ができたら報酬金というのが貰えるらしいから書き込んでおいても損は無い。


「スライムダンジョンで『モンスター未遭遇』というクエストを確認しました。よしこれで書き込み完了っと!」


 私は掲示板に書き込んだあと簡単な夜ご飯を作って食べた。

 そのあと、食後のデザートにアイスを食べようと思って冷凍庫を開けた時、事件が起きた。


「アイスが1つもない! 早く買いに行かないと死んじゃうよ。でも隠密のせいで行けないんだった。こうなったら友だちに頼んで買ってきてもらうしかない」


 私は急いで友だちの一ノ瀬 涼花いちのせ すずかにLEINを送った。


『緊急クエスト、アイスを買って私の家に持ってきて!』


 1分もせずに既読がついた。


『めんどくさいからやーだー。自分で買いに行きなよ』


『月見大福を10パックお願い!』


『人の話を聞いてる?』


『お給料払うから!』


『まかせて! 秒で買って来るから』


 15分くらいしたら家のインターホンが鳴った。


『玄関の前に置いといて。後で取りに行くから』


『ほかりんもしかして今家いないの? お給料ほしいんだけど!』


『いるけどいない』


『ほかりんが壊れた。いつもの事だけど』


『壊れてないよ。あといつもの事とはなんだ!』


『そのまんまの意味です』


『お給料あげないよ?』


『もー、冗談に決まってるじゃん。ほかりんはいつもかわいいよ!』


『えへへー、ありがと』


『そんなことは置いといているなら早く取りに来てよ。久しぶりに会いたいし』


『いや、その、それはだめなの!』


『なんでダメなの? あ、鍵開いてるじゃん』


「お邪魔しまーす」


 玄関の方から声が聞こえた。

 勝手に入ってくるなよって思うけどいつもの事だ。

 けど今日は少しイタズラしてやる。


『ほかりん早くリビング来なよ。アイス溶けちゃうよー』


 涼っちは気づいていないけど私は既にリビングにいる。


『やだ。最近リビングで誰もいないのに音がしたりするから行きたくないの……』


『幽霊がいるって言いたいの? そんなのいるわけないじゃん』


 涼っちの言う通り幽霊なんかいない。

 私が幽霊のフリをして脅かすだけだ。


 手始めに冷凍庫を開けてみよう。


「冷凍庫が開いてる? そうだ、冷凍庫にアイス仕舞っておいた方がいいよねー」


 まさかのスルー!

 今度は電気を消そう。


「停電? それかブレーカーが落ちたのかなー? ほかりんに聞いてみるかー」


『停電なんてしていないし、ブレーカーなんか落ちてないよ』


『なんでリビングにいないのにほかりんがそれを知ってるの?』


 あっ、どうして先に言っちゃったんだ私。

 ここは無視してもっと驚かせてやる。

 今度ドアを閉じたり開いたりさせよう。

 これで驚かない人はまずいない。


「風強いみたいだけど、窓でも空いてるのかな」


「気づいてよ!」


 なんか疲れたし、もう諦めよう。


『ほかりん早く来なよー』


『私ずっとリビングいるよ』


『ずっと隠れてたの?』


『隙あり、これでもくらえ!』


「ちょ、やめて、くすぐったっい、ねぇ、ほかりん、ギブだって、あれ、誰もいない!?」


『ふっふっふー、今度はこれだー!』


「ちょっ、胸を揉むなーー!!!」


『幸せだよ〜!』


「やめろーーー!!!!」


 このあとLEINで隠密について教えてあげた。

 それとめっちゃくちゃ怒られた。

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