第5話 私は嘘つきじゃない

「ほかりんって写真にも写らないのかな?」


 涼っちが急にそんなことを言い出した。

 でも、確かにそれならいけるかもしれない。

 冒険者登録する時の自撮りには問題なく写ったもん!


『確かに写真なら写るかも! 早速やってみようよ!』


 私の声は聞こえないからLEINで伝える。


「分かった。今から撮るからほかりんは冷蔵庫の前に立って」


 そう言われたからすぐに冷蔵庫の前に移動する。




「ほかりんまだー?」


『もう移動してるよ?』


 どうやらカメラに写っていないみたいだ。

 自撮りした時はちゃんと写っていたのにどうしてだろう?


「とりあえず、撮ってみるねー」


 ――パシャリ!


『私写ってる?』


 そう聞いてみると涼っちは首を横に振った。


『自撮りだったら写るかも?』


「一応やってみたらいいんじゃない?」


 冒険者登録の時は自撮りだったし、たぶん写ると思う。

 とりあえずやってみよう。


 スマホのカメラを開いてインカメにする。

 画面には自分の顔がちゃんと写っている。

 自分の顔をずっと見ていたくないから早く終わらせよう。


 ――パシャリ!


 撮れた写真を見てみるとしっかりと写っていた。


『問題なく写ってるよ。涼っちにも写真送っておくね!』


「ほんとだー。ちゃんとほかりんのパジャマ姿が写ってる! かわいいからこれは保存しなくちゃ!」


 あっ、忘れてた!

 急いで送信を取り消したけど手遅れだった。

 私のパジャマ姿が…………


『消さなかったらくすぐりの刑』


「消します! だからそれだけは……!!」


『早く消して』


 消しているところを私に見せながら消させた。

 そうしないと不安だからね。


「まあ、あと10枚くらい保存してるから大丈夫だけど……」


『胸揉むよ?』


「分かった! だから早まらないでおくれ……!」


 そう言っている涼っちを無視して私は胸を揉んでやった。

 そのあと写真も全部消させた。

 私は何も悪くない、悪いのは保存した涼っちだよ。


「ほかりんに揉まれるの、悪くないかも……」


 よく分からないことを言い始めた人はほっておいて私はアイスを食べよう。

 もちもちの皮にバニラのアイス。

 最高の組み合わせだ。

 いろんな味があるけど、やっぱりバニラが1番だと思う。



「ハズレスキルでも固有スキルが手に入ったのはラッキーだと思うけどねー。私も固有スキル手に入ったらいいなー」


 アイスを食べていたら涼っちがなにか言い出した。

 ラッキー、うーん、どうなんだろう。


『そういえば涼っち誕生日まだだったよね。誕生日プレゼント何欲しい?』


「誕生日プレゼント何がいいって普通は本人に聞かないと思うよ」


 そうだけど要らない物をあげるよりはいいと思う。


「いいからいいから」


「欲しい物、うーん……今は特にないかなー」


『なら欲しい物が出てきたら言ってね。言わなかったらプレゼントは無しになるよ!』


「それはひどい。でもあと1ヶ月くらいあるし、何か考えておくよ」


 隠密のせいでいちいち文字を打たないといけないのが大変だ。

 話すぐらいはいずれできるようになるといいな。


『そういえばアイス代払ってなかったね。何円くらいしたの?』


「別に払わなくていいよ、アイスは誕生日プレゼントってことで」


 神か? もしかして神様なのか?


『涼っちありがと!!!大好き、アイスの次に』


「ほかりんはアイスで餌付けできると、メモメモ。でもアイスには勝ちたかったよ……」


『私は涼っちのペットじゃないからね!?』


「サイズ感はまんま小動物だよー」


 笑いながら言わないでよ!


『うが〜!!』


「あ、ほかりん怒った。よし、このタイミングで帰ろう」


『待て〜!!』


「まったね〜」


 そう言って涼っちは走って帰っていった。


「仕方ない、今日のところは月見大福に免じて許してあげるとしよう!」


 私は冷凍庫からもう1パック取り出す。

 残り8パックもあるなんて幸せすぎる!


「おいひぃー!!」


 やっぱりこの味、最高だよ!


 食べながらさっき書き込んだ掲示板を覗いてみる。

 みんなの役に立っていたらいいんだけど、どうだろう。


 108 名無しの冒険者

 スライムダンジョンで『モンスター未遭遇』というクエストを確認しました



 112 名無しの冒険者

 >>108

 不可能だろ



 113 名無しの冒険者

 >>112

 それな

 途中で遭遇しなくてもボスがいるから無理



 114 名無しの冒険者

 誰か検証よろ



 116 名無しの冒険者

 >>108

 もっとマシな嘘つけよww



 117 名無しの冒険者

 あったとしてもスライムダンジョンの報酬とか絶対ゴミ



 118 名無しの冒険者

 108はスライムダンジョンしかクリアできない雑魚なんだよ

 だからそんな夢みたんだよね



「嘘じゃないのに……!」


 悲しくて泣きそうになった。

 嘘じゃないって書き込もうと思ったけど、今書き込んでも意味なんかない。

 むしろ悪化するだけだ。


「こっちの通知はなんだろう?」


 通知を開いてみるとダイレクトメッセージが6つも届いていた。


『イキリ乙www』


『女の子?』


『雑魚にはスライムダンジョンがお似合いw』


『運営に通報しました』


『しょうもない』


『50年みつかってないクエストがそんなすぐみつかるわけwwww』


 私はすぐにダイレクトメッセージを閉じて、布団に潜り込んだ。


「今日はもう寝よ……」

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