第2話 ハズレスキル
コンビニの外をずっと眺めているけど、人が来る気配が全くしない。これっぽっちも。
「疲れてきたよ……」
ずっと立ちっぱなしで誰か来るのを待っていたから、足が痛くなってきた。
というわけで椅子があるイートインスペースに移動することにした。
夜中はイートインスペースの使用は禁止になっているけど、今日だけは許してほしい。
座ってから、しばらく待っているとだんだん眠たくなってきてしまった。
やばい、ほんとに、眠気がやばいよ。
「ここで、寝たら、ダメ…………」
★
気がついた時には外は明るくなっていた。
私は結局眠気に負けて寝てしまっていたみたいだ。
起きたら隠密が解除されていたなんてことはなく、寝ぼけて家に帰ろうとして自動ドアに頭をぶつけてしまった。痛い……
そのおかげで目が覚めたから、まあ結果オーライかなぁ……
大きな欠伸をしながら、コンビニの時計を確認してみるともう8時を過ぎていた。
今が夏休みじゃなかったら余裕で遅刻しているところだったよ。
もし学校があったとしても、隠密のせいで欠席扱いになると思うから、どっちでも良かったと言えばそうなんだけど。
それから、喉が渇いてきたので、私はセルフレジアイスコーヒー買った。
そして、コーヒーを飲みながら待つこと数分。
ついにお客さんが来て、自動ドアが開いた。
「これでやっと、やっと家に帰れるよ!」
誰か知らないお客さんに感謝しながらコンビニを出た私は、急いで家に帰った。
途中、車に轢かれかけた時は焦ったけど、無事に帰ることができてよかった。
「やっと家に着いたぁ……」
帰った私は手を洗ってからすぐにスマホを充電する。
0%から1%になるまでの時間っていつもより長く感じるよね?
これって私だけかな?
「早く〜!」
私がそう言ったと同時に0%の表示が1%に変わった。
すぐに電源を入れて、スキルの解除方法について調べる。
『固有スキル 解除 方法 』で検索してみるといろいろな情報が出てきた。
「さっすがグーグル先生!」
それからしばらく探しているとそれっぽい記事が見つかった。
記事の内容はこんな感じ。
『スキルと固有スキルの中には100万人に1人くらいの確率でハズレスキルと呼ばれるスキルが手に入ることがある。ハズレスキルにはデメリットしかないスキル、発動条件が厳しすぎるスキル、解除できないスキルなどが今のところ確認されている』
「100万分の1に選ばれたみたいだけど、これじゃ全然喜べないよ……」
これが宝くじの当たりとかだったらめちゃくちゃ嬉しいんだけど、低確率のハズレを引いてもね、うん……
そのあとも解除方法とか色々調べてみたけど、今のところは分かっていない、ということしか分からなかった。
でも、その中に一つだけ気になるのがあった。
『Sランクダンジョンに解除できるアイテムとかがあるらしい。誰もクリアしたことがないけど、昔おじいちゃんが言っていた。おじいちゃんはダンジョンが出現して1番最初にAランクダンジョンをクリアした人だからかなり信憑性はあると思う』
もし、そんなアイテムがあったとしても、私なんかがSランクダンジョンをクリアできるわけがない。というか、おじいちゃんが言ってたとか信憑性の欠片もないよ……
私の人生終了のお知らせだ。
だけど、まだ諦めたくないという気持ちも私にはある。
このままだと妹にも会いに行けないし、学校にも行けない。
やっぱり学校はどっちでもいいや。
でも妹には会いたい!
可能性が0じゃないなら試してみる価値はあると思う。
「こうなったら、何がなんでも、絶対、Sランクダンジョンをクリアして隠密を解除してやる!」
とは言ったものの今すぐSランクダンジョンに行ってもクリアできるわけがない。
瞬殺される未来が見える。ハッキリと、高画質で。
ならまず最初はEランクダンジョンに行ってレベル上げをしないとね。
あっ、その前に冒険者登録をしなくちゃ!
「やらなきゃいけないことがいっぱいだよ!」
けど今の時代は冒険者登録はスマホアプリでできるからそこまで大変ってわけでもない。
必要なのは顔写真、ユーザーネーム、年齢、それと死んでも責任は取れませんみたいなのに同意するだけ。
ステータスの登録は任意でいいみたいだからしないでおこう。
「顔写真は今撮るとして、ユーザーネームはどうしようかな。友だちにはほかりんとか言われてたからそれにしようかな。けど自分で言うのはすごい恥ずかしい……」
私の脳みそをフル回転させて悩んだけど、いい案が思い浮かばなかったからほかりんにした。
どうせ気づかれないんだし、ユーザーネームくらいで時間をかけていられないよ。
「顔写真OK、ユーザーネームOK、年齢OK、同意してから送信っと!」
『登録が完了しました』って表示が出てきたからこれで今日から私も冒険者だ。
よーし、早速ダンジョンに出かける準備をしよう。
必要な物はだいたいアプリに書いてくれているから助かるね。
「私が今から行くのはEランクダンジョンのスライムダンジョンだから、必要なのは武器になりそうなものと飲み物くらいかな。ポーションとかは持ってないし、Eランクダンジョンは無くても大丈夫みたいだね」
水筒にお茶を入れて、武器は家にある木刀を持っていこう。
剣とかそういった武器はアプリで買えるけど、私の持っているお金で買える額じゃない。
買ったとしたら翌日に送られてくるみたい。
それにダンジョンのモンスターからドロップしたり、初クリア報酬やダンジョン毎に設定されているクエストクリア報酬とかで貰えることがあるみたいだから急いで買う必要はない。
服は高校のジャージで行こうかなと思ったけどダサいからやっぱりやめた。
誰にも見られないけどダサいのはやだからね。
ダンジョンに向いてそうな服なんて持ってない私はいつも着ている私服で行くことにした。
私服いずさいこー!
それから、スライムダンジョンに向かっている途中、また車に轢かれかけた。
隠密、許さない!
そのあと人にぶつかったりすることもなく、無事ダンジョンに到着した。
夏休みだからか人が多い。
同じ学校の人もちらほらいる。
「痛っ、痛い、ぶつからないで、ちょっと……私はここいるんだよぉ……」
人が多いと今みたいに高確率でぶつかってしまうから隅っこの方に避難した。
「ここまで来ればたぶん大丈夫……」
念の為、アプリを見てスライムダンジョンについての情報を確認しておこう。
スライムダンジョンみたいにランクが低いダンジョンはどんなモンスターが出るかとか、ほとんどの情報を書いてくれているからありがたいね。
情報によるとスライムダンジョンは10階層まであって、9階層まではベビースライムだけしか出現しないみたいだ。
ちなみにものすごく弱いらしい。
10階層はボス部屋になっていてボスはスライムだ。
ちなみに弱いらしい。
どのダンジョンでもボス部屋はボスか自分かのどちらかが死ぬまで出られないようになっている。
緊急の脱出アイテムもあるけど1つ500万円とかするから買えるわけがない。
スライムダンジョンのクエストは30分以内にクリア、ソロでクリア、パーティでクリア、武器を使わないでクリア、ベビースライムを50体以上倒してクリアの5つが今のところ分かっている。
50年間で5つしか分かってないってことは、たぶん5つしかないんだと思う。
「確認も済んだことだし、早速ダンジョンに入ろう」
ダンジョンの入口の横にある機械にアプリの画面をかざすと入口が開くようになっている。
ダンジョンの入口は転移ゲートになっていて、通るとダンジョン内に移動する。
転移先のダンジョンはパーティの人以外とは同じにならないようになっている。
仕組みは解明されていないけど、そのおかげでモンスターが狩り尽くされていたりすることがなくなるのですごくありがたい。
「よーし、どんどんレベルを上げていこ〜!」
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