隠密少女は気づかれたいっ!

ぽん

第1話 コンビニ監禁事件!?

 現在時刻は7月28日の23時59分50秒。

 あと5秒で7月29日に日付が変わり、私は16歳の誕生日を迎える。



 5、4、3…………。



『ステータスを獲得しました』


 日付が変わったと同時に、私の頭の中に機械のような声が響いた。


「あ、部屋の時計少し遅れてた! せっかくカウントダウンしたのに台無しだよぉ……」


 と、私は少し落ちんだ。

 けど、すぐに気を取り直してステータス画面を開く。


「お願いっ! 固有スキルきてっ!」


 ――――――――――――――――――――――――

 穂刈 琴音ほかり ことね 16歳 レベル1 スキルポイント0

 状態:正常

 HP:10

 攻撃力:9

 防御力:10

 固有スキル:「隠密」

 スキル:なし

 装備:なし

――――――――――――――――――――――――

「隠密」

 効果:使用者、使用者が身に纏っているもの、使用者が手で触れているものが周りの人、モンスターから認識されなくなる。(例外あり)

 また、感知系スキルなどによって感知されなくなる。 

――――――――――――――――――――――――


「えっ!? ほんとのほんとに固有スキルだよね!? 私の見間違えとかじゃないよね!?」


 私は驚いて声を上げた。

 それから、ステータス画面を何度も開いたり閉じたりして見直してみた。


「やったぁ! ほんとのほんとに固有スキルだ!」


 私は嬉しくなり、ついベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねてしまった。

 そのせいで、ベッドからギシギシという音が聞こえた時はさすがに焦ったよ。


 でも、ついつい飛び跳ねてしまうくらい固有スキルが手に入る確率は低いらしい。

 ステータスを獲得する時にスキルか固有スキルのどちらか1つを手に入れることができて、スキルが手に入る確率が99%、固有スキルが手に入る確率が1%と言われている。

 けど、固有スキルが手に入った今の私にはもう関係のない話だ。


 そんなことは置いといて早くスキルを使ってみよう。

 スキルの使い方はとっても簡単で、スキル名を声に出すか心の中で言うかのどちらかをすれば発動することができる。

 解除したい時もそれ同じことをすればいいだけだから簡単だね。


「隠密!」





















「……?」

 

 使ってみたけど、特に何かが起きたり変わったりはしていない。

 これってちゃんと発動してるのかな……?


 そう思ってステータス画面を開いて確認してみると、状態のところの表示が正常から隠密に変わっていることが分かった。

 ちゃんと発動してるみたいで良かったよ。

 けど、家で試しても私しかいないから効果を実感できないのが残念だ。


「よーし、それなら今からコンビニ行こっと!」


 コンビニなら夜中でも開いているし、店員さんがいるから誰もいないなんてことにはならない。

 服はパジャマのまんまだけど、隠密があるから気づかれないはずだ。

 気づかれたらかなり恥ずかしいけど、私は隠密を信じる。




 コンビニまで向かう途中、3人の人とすれ違ったけど誰にも気づかれなかった。

 隠密はまあまあ優秀なのかもしれないね。


 特に何が起きることもなく、無事コンビニに到着した。

 家からコンビニまでの距離はゆっくり歩いて15分くらいだから割と近いと思う。


 そんなことより、入口の横ら辺に同じクラスの人が3人もいるのはどうしてだろう。

 もう夜中の12時過ぎてるんだけどなぁ……

 まあ私には関係ないことだし、気づかれてないみたいだからいいけど、もしパジャマ姿を見られていたら恥ずかしくて学校に行けなくなっちゃうよ。

 そう考えたら隠密は結構優秀かもしれないね。


 不良になりかけの人たちはほっといて私はコンビニの入口に向かった。


「いざ、店内へ!」


 ――ドンッ!


 店に入ろうとした私は透明な壁にぶつかった。

 ゲームのバグとかでよくある透明な壁とかじゃなくてただの自動ドアだ。痛い。



 結構大きな音がしたから気づかれたと思って焦ったけど、3人に気づいた様子はないみたいで一安心。

 隠密は音も振動も遮断してくれるみたいだ。


 でも困ったこともある。

 隠密のせいで自動ドアが開いてくれない。

 自動ドアの前を何度も行ったり来たりしたけど、自動ドアはピクリとも動いてくれない。


「うーん、どうしよう……」


 隠密を解除したら店には入れるとは思うんだけど、それはできない。

 だってクラスの人にパジャマ姿を見られてしまうんだもん。

 私の高校生活のためにもそれだけは絶対にだめ!

 3人には悪いけど、早く帰ってもらいたい。




 それからしばらく悩んでいると店の中からお客さんが出てきてドアが開いた。


「ラッキー!」


 私はそのタイミングを逃すことなく、店の中に入ってアイス売り場に直行した。


「この新作のバターアイスがおいしそう! でもこっちもとちしそう……」



 色々悩んだ結果、新作という二文字に押され、私はバターアイスを持ってレジに並んだ。

 けど、私の順番が来ても店員さんに気づく気配がない。


「すみませーん」


 呼んでも返事がない。

 まるで屍のようだ。


 このままだとアイスが買えない、やばい、ピンチだ!

 なんてことにはならない。

 なぜなら、このコンビニにはセルフレジというものがあるからだ。



 ちゃちゃっとセルフレジで会計を済ませた私は最後の試練に挑む。


「ひらけ〜ごまっ!」


 そんなことを言ってもやっぱり自動ドアは反応しない。


 こうなったらさっきと同じで、他のお客さんが開けてくれるのを待つしかないね。

 今は店内に私と店員さんしかいないから誰か来てくれるまで待たないと……




 10分が経った。

 アイスが溶けてきたから急いで食べた。

 バターをかじっているみたいでおいしかった。




 それからさらに20分経った。

 同じクラスの3人がついに帰った。

 店員さんも今は見えるところにはいない。

 私はこのタイミングをずっと待っていたんだよ!


「解除するなら今しかない! 隠密解除!」


 そう言ってみたけど、自動ドアに反応はない。


「もしかして故障かな?」


 念の為、ステータス画面を開いて確認してみると、状態の表示が隠密のままになっている。


「声が小さかったのかな? 隠密解除!」


 さっきより大きな声で言ってみた。

 だけど隠密の表示は変わらない。


「どうなってるの!?」




 それからさらに30分が経った。

 何回も隠密を解除しようとしたけどなぜか解除できなかった。

 スマホで友達に来てもらおうと思ったけど、充電が無くなっていた。

 コンビニから出れなくなるなんて人生初の経験だよ。


「お願いだから早く誰か来てぇ…………」

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