四 甘い香り

 犬神明神の小白丸の案内に従って、モモは暗い森をかき分けながら、山を下りていきました。

彼女は一度、小白丸が山を下りてしまったら、今まで彼が防いできた、村の周りの妖怪などがまた増えたりするのではないかと心配しました。けれども彼女がそういう風に話すと、小白丸は首を横にふって言いました。

「ぼくがこの辺りに来たのは最近だから、大した影響は出ないと思うよ。もともとこの山は、人をおそう妖怪は少ないみたいだ。きっと山の神様の力が強いんだろうな」

 モモはそう言われて初めて、自分が今まで山に守られて生きてきたことに気がつきました。そしてそのことをしみじみありがたく思うとともに、これからここをはなれなけらばならないことを、改めて心細く思ったのでした。

 そうしてモモと小白丸が進んでいくうちに、ふいにそれまでの森の太い木々が、ぱったりととぎれました。二人がしげみをかき分けて下り坂をかけ下りると、その先はススキなどの枯野が遠くまで広がっており、所々に竹林や雑木林が見えました。モモはとうとう、山を下りきったのです。

「さてと、モモ。改めて、ここからどうしようか。とりあえず一休みするかい?」

 小白丸がモモを見上げて言いました。モモはここまで歩きながら、小白丸に、村を出る時に嘘をついていること、それゆえ知り合いのいない所に行きたいこと、なるべく目立たないように暮らしていきたいこと、などを話しています。彼女は少し空を見上げた後、視線を下ろして小白丸に言いました。

「天気はいいし、まだお昼前だよね。今のうちに、もっとこの山からはなれておきたいな」

「へえ、たくましいな。じゃあ、どっちに行く?」

 小白丸が周りに目を向けて言いました。モモも改めて周囲を見わたしながら考えます。

「……じゃあ、南は……?」

 モモはためらいがちに言いました。

「南東の方にね、海があるの。天気のいい日は、山から見えてたんだ。切りこんだ入り江になっててね。そんなに遠くじゃないと思うけど、せっかくだから……」

 小白丸は笑って言います。

「あははっ! いいね! それじゃあ行ってみようか。でもモモ。ここからはきみもぼくも、未知の世界だ。用心して行こう」

「……うん。分かった」

 モモはそう言うと、小白丸との出会い以降、改めて帯に差すようにした例の短刀の柄を、左手でぎゅっとにぎりしめたのです。


 二人は山地のふもとに沿って、枯野を南東へと進んでいきました。この山地はモモが住んでいた山に、もう少し低い山々が連なってできているもので、二人の進んでいく方向には、山の側にも平野の側にも、人の村は見当たりませんでした。時折小屋などは見かけたものの、知り合いに出くわすことをさけたいモモは、そういう小屋に近づく時は、かくれるようにして先を急いだのでした。

 しだいに日は高く上り、正午もすぎて、春の陽もかたむきかけてきました。途中何度か休憩ははさんでいましたが、すでにモモはかなり疲れています。彼女はつぶやきました。

「……もうそろそろ、今夜どうするか、考えなくちゃ……」

 すると先頭に立っていた小白丸が、ふり返って言いました。

「さすがのきみも、疲れてきた? ふつうきみくらいの女の子なら、とっくのとうに音を上げてるよ」

「……それもわたしが、ふつうじゃないからかも……」

 モモは暗い声で言いました。小白丸はあわてて取りなします。

「ああ、ごめんっ。そういうつもりで言ったんじゃないんだ。ただ感心してただけだよ。だってさ、ふつうとかふつうじゃないとか、ぼくみたいのが気にするわけないだろ?」

 モモは笑って言いました。

「フフッ。そうかもね。ありがと。……それで、どうしようか? かなり遠くまで来たけど、できればまだ、他の村のお世話にはなりたくないな……」

「けど、食べ物だって、キビ団子があと少しと、後は……」

 と、小白丸はそう言ったところで、ぴたりと止まりました。モモが不思議そうにその顔をのぞきこむと、彼は鼻をぴくぴく動かして、何かのにおいをかいでいるようなのです。

「何か、いいにおいがする! 食べ物のにおいだ! ……けど……」

 小白丸は目をかがやかせて言った後、顔をしかめました。

「けど?」

 モモも顔をしかめてたずねました。小白丸は考えながら、少し声を落として言います。

「甘くておいしそうな、いいにおいがするんだ。あっちの小山の方。……だけど、周りに人間のにおいがほとんどしない。……代わりに、変なにおいがする……。獣のにおいだと思うけど、今までかいだことがないやつだ……」

 これを聞いて、モモははっとしました。

「それって……! ひょっとして、鬼や妖怪のにおいじゃないっ……? 食べ物っていうのは、人間の食べ物なの?」

「うーん……。食べ物の方も、初めてかぐにおいなんだよな……。おいしそうだけど……。やっぱりよく分からないし、なかったことにして通りすぎようか」

 小白丸はそう言って、用心深そうにモモを見つめました。モモはしばらく頭を悩ませた末、声を落としてこう言いました。

「……もう少し、近くに行って、探ってみない……? もしかしたら、そこに暮らしてた人間が、妖怪におそわれたのかも……」

「……血のにおいとかは、しないんだよ? むしろ、何かの罠ってことの方がありえる……」

 小白丸は迷いながら言いましたが、モモはかえってはっきりと言います。

「血が出てなくても、命が危ないってことはあるでしょ? だれかがひどい目にあってるのかもしれない……!」

 小白丸はうつむいてしばらく考えると、顔を上げてモモにこう言いました。

「……分かった。もう少し、そばまで行ってみよう。だけどきみが危なくなりそうになったら、その時点で退却だからな?」

 モモはこくりとうなづきました。こうして二人は、ふたたび山の中に分け入っていったのです。


 木々をかき分けて坂を上っていくにつれて、小白丸はため息をつくようになりました。

「……小白丸、どうしたの……? まずいことに、なってるの……?」

 モモはいたたまれなくなってたずねました。けれども彼女の方をふり向いた小白丸の顔は、緊張しているというよりも、むしろしまりがなくなっていました。彼は言います。

「においがさ……、すごく甘くておいしそうなんだ。どんどん強まっていく。これが罠だったりしたら辛いなぁと思って。モモはまだ分からない?」

「……甘くておいしそうなにおい、ねえ……」

 モモはそう言って、進行方向に意識を集中させました。すると間もなく、においよりも先に、彼女は木々の奥にある物を、その目でもって発見したのです。

「あっ! 小白丸……! 家……! 小屋があるよ……!」

 小白丸も浮き上がって前を見ました。周りを杉の木に囲まれる中、一軒の小さな家が建っています。二人は顔を見合わせてうなづくと、用心しながらその場所へと近づいていきました。

 小屋は屋根まですべて丸太でできていて、そばにも丸太が何本も積まれています。どちらもツタなどにおおわれていて、手入れはされていないようでした。モモは近づきながら言います。

「……きっと、木こり小屋だね……。小白丸、中に人はいそう?」

「……いや、いそうにないな……。だいぶ前に立ち去った、って感じだ」

「じゃあ妖怪が一人で、甘いにおいを出してるってことかな……。あっ、見てっ……! 湯気が出てる……!」

 モモの言った通り、小屋の屋根に空いた穴から、白い湯気が上がっています。小白丸がしきりに言っていた甘いにおいというのも、今やモモにも分かるようになりました。

「……たしかに、おいしそうなにおい……。ぶどうみたいな……。春なのに……」

 その時でした。小屋の中から、しわがれた低い声が聞こえてきたのです。

「ヒーッヒッヒッヒッ……! もうすぐじゃ……。もう少しで完成じゃ……!」

 木こり小屋の周りは木々がなく、少し開けていました。モモたちは小屋から一番近い木のかげにかくれて、様子をうかがいます。しわがれた声はさらにしゃべり続けました。

「間もなくじゃ……。長い時間と多大な力をそそぎこんだ……。それも間もなく、報われる……。神々さえうらやむじゃろう……。わしの究極の……」

 モモは声をひそめて小白丸に言います。

「……何だろう……?」

 と、その時。小屋の声がぴたりとやみました。そして次の瞬間。

「だれじゃっ!」

 ものすごい大声が、小屋の中からひびきわたったのです。

「まずいっ! モモっ、逃げようっ……!」

 小白丸が言いました。モモも同じ考えです。しかし彼らが走りだすよりも先に、小屋から猛然と出てくる者がありました。

 それは全身を赤黒い毛におおわれた、猿のような怪人でした。腕が長く、体をかがめていますが、実際の背丈は人間の大人の男ほどもあるでしょう。尾はなく、頭は大きくて、彫りの深い顔つきをしています。その妖怪は戸口に立って、モモたちをにらみつけました。

 モモたちはすぐに妖怪に向かって身構えました。モモは短刀の柄に手をかけ、小白丸は彼女の前に出ます。すると、猿の妖怪は歯とするどい牙を見せて笑いました。

「ヒーッヒッヒッヒッ! そうか……! おぬしら、この甘い香りに引き寄せられてやってきたのじゃな? 人の娘と、犬神明神か! ヒッヒッ! 妙な組み合わせじゃわい。わしが人に危害を加える存在かどうか、それを知りたいというわけか!」

「なんだ? 気味の悪いやつめ……!」

 小白丸は相手をにらみつけて言いましたが、モモは体がふるえそうになるのを必死でこらえています。怪人はさらに大声で言いました。

「ヒッヒッヒッ! けなげじゃのう! 妖怪退治で人助けか。母の遺言でな……!」

 モモはおどろき、うろたえました。

「そんな……! 何もかも、お見通しみたい……!」

 小白丸もたじろぎます。一方、猿の妖怪はくちびるがめくれ上がるほど口を横に広げて笑いました。

「ヒーッヒッヒッヒッ! その通り! わしにはおぬしらの心が読める! わしは妖怪、狒狒ひひじゃ! こんなこともできるぞ! ほれっ!」

 狒狒と名乗った妖怪が手で目の前をあおぐようにすると、突然つむじ風が巻き起こりました。モモや小白丸がのけぞるほどの勢いです。モモのかぶっていた笠は吹き飛ばされ、着物のすそがめくれます。

「キャアッ!」

 モモがさけぶと、狒狒はいっそう笑いました。彼のくちびるはめくれ上がり、目をおおいそうなほどです。

「ヒーッヒッヒッヒッ! これはこれは、かわいらしいおじょうさんじゃわい! 十六、七かと思ったが、顔つきを見るに、まだまだ子供じゃな。じゃが、じきにいい女になる。モモとやら。わしといっしょに、ここに住まぬか? 木こりの娘には逃げられてしまったのでな」

 これを聞いて、モモは声を上げました。

「なっ……! 木こりの娘さんを……! あっ、ひょっとしてっ!」

 小白丸はいぶかしがります。モモは狒狒をにらみつけて、さらに言いました。

「聞いたことがある……! 山の中に、若い女の人ばっかりねらって付け回す、赤い男が出るって……! それがあなたねっ? 木こりの娘さんや家族を、どうしたの!」

「ヒーッヒッヒッヒッ!」

 狒狒はふたたび目をおおうほどにくちびるをめくり上げて笑いました。一方、小白丸は牙をむいて低くうなります。モモは思いました。

(やっぱり人をおそう妖怪だったんだ……! なんとかしなきゃ……。ああやって、くちびるで目がふさがってる隙に……!)

 モモはかがんで地面から石を拾いました。が、狒狒はとたんに笑うのをやめ、とびはねて言います。

「おっと! 急に勇ましくなったが、むだじゃよ。心が読めるわしに、攻撃を当てることはできん。ところで、わしは人をおそうわけじゃあないぞ? わしは人間の娘っ子が好きでな。追っかけ回しとるだけじゃ。木こりの一家は恐がって逃げただけよ」

「最低な男だな」

 小白丸がはき捨てるように言いました。モモも声を荒らげます。

「ほんとだよ! 人を恐がらせて……! それで、もし鬼が出たら!」

 しかし、狒狒はけろりとして言いました。

「その時はその時じゃ。それよりモモよ、わしのたのみを聞いてくれ。どうかわしといっしょに、ここに住まぬか? お願いじゃ、わしと……」

「住みませんっ!」

 モモは即答しました。狒狒は表情を固まらせ、そして間もなく、どういうわけか、笑みを浮かべだしました。

「フヒッ……! スミマセン……、とな。ヒヒッ! ここには住まないの『住みません』と、お断りしてごめんなさい、の『済みません』をかけてるわけか……! ヒヒッ……! ヒヒヒッ! ヒーッヒッヒッ……」

 狒狒は勝手に大笑いし始めました。そのくちびるが、彼の目までめくれ上がった、その時です。

(今だっ!)

 モモは先ほど拾った石を、狒狒の顔目がけて思いきり投げつけました。

「ヒギャッ!」

 石は狒狒の上くちびるに、したたかに当たりました。彼は地面に引っくり返ってわめきだします。

「ヒーッ! ヒーッ! 痛たたたた……!」

 モモと小白丸は急いで狒狒に近づきました。狒狒がようやく落ち着いて上半身を起こした時、すでに小白丸は彼の目の前で牙をむき出しにしていて、モモはそのわきで刀を抜いていました。狒狒は苦笑いをして言います。

「ヒッヒ……! こりゃやられたわい。おぬしら、このわしをどうするつもりじゃ? いや、聞かなくても分かる。どうするかはこの妖怪しだい、そう考えておるな?」

 モモは表情をこわばらせて、狒狒に言いました。

「……そう。だから正直に話して。女の人を追いかけ回したり……、あげくの果ては、わたしにいっしょに住めとか言って、いったいどういうつもりなのっ?」

 すると狒狒はため息をついて言いました。

「ハァ~……。じゃから、言ったじゃろうが……。好きなんじゃよ、わしは。人の娘が。わしと、夫婦めおとになってほしくてな」

 モモは開いた口がふさがりませんでした。小白丸は声を上げます。

「こいつっ、本気か? 妖怪が人間と……! おかしいだろっ!」

 狒狒は笑います。

「ヒーッヒッヒッヒッ! おかしいとも言えるし、おかしくないとも言えるな。なぜって、人間の女子おなごは美しく、愛おしいじゃろうが。妖怪が人間を好いて何が悪い? 現に小白丸とやら、おぬしだってモモを……」

「「なっ……!」」

 小白丸とモモが同時に声を上げました。モモは顔を赤らめ、小白丸はさけびます。

「でたらめ言うなっ! お前っ……、そうだっ! 女の人を、恐がらせてたんだろっ? 好きならどうして恐がらせるんだっ!」

 モモもうなづいて狒狒をにらむと、彼は苦い顔をして言いました。

「……恐がらせたくて、恐がらせたわけじゃないわい。わしは妖怪じゃぞ? どれほど誠意をつくして、心の内を伝えようとしても、ほれた女子に信じてはもらえぬ。聞く耳すら持たれぬ……。相手の女子の気持ちは、手に取るように分かるのに、な……。文を書いたこともある。ヒヒッ……。和歌をのせたり、花をそえたりもしてな。じゃが、同じことじゃ。わしの姿を一目見たとたん、女子は泣きさけんで逃げだすわい。……そんな時、わしの耳にはな……、女子のおびえた声や嫌悪の声が、実際の何倍も聞こえてくるのじゃ……」

 モモと小白丸は、今やあわれみの目で、彼を見つめていました。狒狒は皮肉っぽく笑って、さらに言います。

「ヒヒッ……! どうやら、わしの話を信じてくれるようじゃな。ん? 人の娘を好きになるのを、やめればいいのにと思うのか? ヒッヒッ! それができれば、とっくにそうしとる! しかしそれがしたくともできぬのが、そう、恋……」

「ちょっと、一人でしゃべらないで……!」

 モモが苦笑いをしながら言いました。彼女は刀を下ろすと、鼻から少し息をついて、狒狒に言いました。

「話し相手くらいなら、わたしがなってあげるから。……妻にはなれないけどね」

 小白丸が顔をしかめて、モモに言います。

「モモっ……! こいつ、放っておくの?」

 モモは小白丸を見てから、狒狒に向かって言います。

「……さっきも言ったけど……、あなたが人を恐がらせることで、鬼が現れることもありえるの。だからできれば、そういうことがないようにしてほしいんだけど……」

 すると狒狒は真顔になって、モモの顔をじっと見つめました。やがて彼は地面の上で居住まいを正すと、両手でひざをパチンとたたいて、声高に言いました。

「良かろう! ならば、こうしようではないか! わしはおぬしらといっしょに行くぞ。ヒッヒッ! そうすりゃわしの欲求不満は多少なりともいやされるし、他の女子がわしにわずらわされることもなかろう。それに事情はさておき、妖怪退治、鬼退治の旅に、おぬしら二人だけでは心もとない。せっかくのいい女を、見殺しにするようなものじゃからな。……おお、もちろんじゃ。いい女というのはモモ、おぬしのことじゃぞ? 道中わしが、もっといい女にしてやろう。ヒヒッ! いや、なぁに。戦えるよう、きたえてやるということじゃ。ヒーッヒッヒッヒッ!」

 モモはあきれましたが、小白丸は怒ります。

「お前っ、ぼくのことばかにしてるのか? 負けたくせに、勝手なこと言って……!」

「ヒッヒッヒッ! おぬしとはいずれ、決着を付けねばならぬかもしれんな!」

 狒狒は笑いながら小白丸をなでようとしましたが、小白丸はさっと身をかわして、それからモモの方を見ました。苦笑いをしていたモモでしたが、やがて彼女は小白丸と狒狒を交互に見ながら、こう言いました。

「わたしはこんな風だから、いっしょにいてくれる人が……、人じゃないけど……、多い方が、うれしい。だめかな? 小白丸……」

 小白丸は少しまごついた後、鼻からため息をついて、モモに言いました。

「……きみがそう言うなら……、いいよ、モモ。……いろいろ心配だけど、ぼくが見張っとくから」

「ありがとう、小白丸。……じゃあ狒狒さん、よろしくお願いします。あっ、妻にはなれませんけど」

 モモはそう言って、狒狒に向かってぺこりとおじぎをしました。狒狒も座ったまま大げさにおじぎをすると、それからとび上がるように立ち上がりました。やはり人間の大人の男ほどの体格があります。彼はモモと小白丸を代わる代わる見ながら言いました。

「わしの名は、赤兵衛じゃ。よろしくたのむぞ、二人とも。ヒヒッ! さて、それはそうと、おぬしら、今日はくたびれたじゃろう」

「だれかさんのおかげで、特にな」

 小白丸が狒狒の赤兵衛をにらんで言いましたが、赤兵衛は笑って言います。

「ヒッヒッヒッ! じゃがそのだれかさんが、寝床と夕食を分けあたえてやれるぞ?」

 モモは思い出したように言います。

「そうだっ。結局、この甘いにおいはなんなの? 罠ってわけじゃないんでしょ?」

 小白丸も思い出したようににおいをかいで、顔をほころばせます。赤兵衛は笑いました。

「ヒーッヒッヒッヒッ! たまらんじゃろう? これはこの時期だけの、わしのとっておきのごちそう。すなわち、『いもがゆ』じゃ」

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