第4話 ノルポ村

 「いてて、ナナめ……なにも本気で蹴る事はないだろ」


 「団長何かあったんッスか?ナナさんえらい不機嫌ッスけど」


 「あ、あぁ気にするな大した事じゃない」


 空気の読めないアリサにさっきの件を知られると厄介な事になる。

 ……ここは何も無かった事にしておこう。


 「ふーん、そんな事よりもあそこに見えるのがノルポ村ッスか?意外と大きな所ッスね」


 アリサの指差す方向には外敵や灰の流入を防ぐ為だろうか、少しお粗末な城壁に囲まれたそこそこの大きさの集落が存在していた。

 

 (家屋の数からして大体200人は住んでいそうね)


 これほどの人間の住む集落は現在帝国でも数える程しかない。

 場所を地図に記して特産品なども確認しておくのもよいだろう。


 「よし、取り敢えず門番と話をして村に入る許可を貰ってこよう、お前達は外で待っててくれ」


 ………………


 検問はスムーズに終える事が出来た。

 ただ帝国の騎士という身分を明かすと門番達は「女騎士キタコレ」「くっ殺ヤバスギンゴ」とよく分からない方言で話し始めた時は少々焦ったがどうやら問題は無かったようだ。 


 こうして私達はノルポ村へと足を踏み入れた。


 「おおーやっぱりそこそこ大きい村だけあって道も綺麗だし水路も整備されてるッスね」


 「あらアリサそこの側溝は近付かない方がいいわ、ドブスライムが通行人のスカートに悪戯するためにに隠れてる事が多いらしいわ」


 「ひゃあ!ナナさんそれを早く言ってくださいよ……スカートの中を弄られたッス」


 なんだそのスライムは……生きている価値はあるのか?

 

 「あぁそっちの壁は壁尻ゴーレムよ」


 「どひゃああああ!」


 「あっそこには踏まれると喜ぶマタンゴが生えてるわ」


 「ぎえええええええ」


 いや、さっきからナナはクスクス笑ってるし、わざとやってるよね?

 てかこの村何かがおかしい気がするのは気のせいなのか。


 「……外に出ているのは危険な気がするな」


 「どうかなさいましたか?イル様」


 この村はレミナには教育上悪い気がするし早めに宿屋に泊まる事としましょうか。


 「おい、みんな聞いてくれ今日はゆっくり疲れを取るために早めに宿泊しようと思う」


 「いいッスよ」「いいわ」「はい!」


 みんなの同意も取れたし早速門番に紹介された宿屋に……到着したが。


 「やけにカラフルッ!!」


 そこに建っていた建築物はどぎついピンクに塗りたくられネオン看板が輝く見た事もない宿屋であった。


 「まっ、まぁ外観は色々じゃないッスか!大事なのは中身ッスよ中身!」


 そうだよな、アリサの言う通り大事なのは外面じゃない!


 「そ、そうだな。何はともあれ受付に行こうじゃないか」


 受付立っていたのは少し小太りの至って普通の女将だった。

 

 (本当に良かった、普通の人で)


 「あらー!!騎士様女の子同士で宿泊なんてキマシタワねー!!しかも四人でだなんて凄いわぁ!!……丁度大きな部屋が空いててね!お安くしとくわよー」


 「は、はい……ありがとうございます」


 「フフフ、イル……楽しみね」


 なんだナナその獲物を狙う野獣の目は……。


 宿屋の女将に何か盛大な勘違いをされているような気もしないが、部屋自体は王宮の一室と言っても過言ではない程に豪華で更に宿泊費を半額にしてくれるとまで言われると利用せざるを得ない。

 見かけは非常に近寄りがたいが随分良心的な宿屋だ。


 「それと一つ気になったんだけど、騎士様その鎧随分とボロボロじゃない?」


 「これは、お恥ずかしい……ここに来る前の戦闘で損傷してしまいましてね」


 「そういう事ならここから右に三軒目に腕のいい武具店があるわ……あなたなら恐らく割安で、下手したら無料で新しい武具を拵えてくれると思うわよ」


 女将はそう言うとこちらにウィンクをしてから受付業務へと戻っていった。

 果たしてそんな旨い話があるのか?

 就寝にはまだ早い時間であったので取り敢えずその武具店へと足を運ぶ事にしてみた。


 【世界ヱロ装備開発事務局ノルポ支店】


 「……怪しいんですけど」


 しかし無料で腕のいい職人に装備を作って貰えるかもしれない!

 そんな甘言には耐えられることもなく店の扉を開きゆっくりと店内へと入っていく。


 「あのーお邪魔しまーす」


 店内には量産品ではない精巧に作られた一点物の武具が所狭しと並んでいた。

 防具の布面積が少ない事を除いても優れた職人というのは間違いないだろう。


 「らっしゃい……ん?」


 店の奥から店主らしき巨漢の男が顔を出す。

 

 「ん?……貴方!」


 「あ、ああこれか、オレは半機械人間マッドマンさ。まぁそんな事は気にすんな……見た所その鎧だろ?そうだよな!」


 店主は体の半分が機械によって構成されていたのだが、本人が気にするなと言った事に触れるのは野暮というものだろう。

 ていうか少し店主のテンション高くないか?


 「そうよ、鎧の修理に尋ねてきたの……出来るかしら?」


 「いやそりゃ無理だ。だがそれ以上のもんを……作ってやるよ……お代は取らねえ」


 確かに宿屋の女将の言った通りだ、しかし何故だろうか?


 「何故そんな親切を?騎士に命でも救われたのかしら?」


 「いいやそんなんじゃねぇさ……オレはな、銀髪ロングの巨乳美人騎士のエロ装備を作る事が夢だったんだあああああ!」


 「はぁ!!なんじゃそらああああ!!」

 

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