ただいま南下中?

 次の日から「メリーさん」は毎日インスタを更新するたびにメッセージを送ってきた。


「☆.。.:*・°あたしメリーさん.:*・°☆

⚘♡゚・。いま青森にいるの⚘♡゚・。」


「☆.。.:*・°あたしメリーさん.:*・°☆

⚘♡゚・。いま秋田に着いたとこ⚘♡゚・。」


「☆.。.:*・°あたしメリーさん.:*・°☆

⚘♡゚・。盛岡に来たよ⚘♡゚・。」


 その都度インスタをチェックすると、それぞれの街の名所での自撮りや見た目も美しい名物料理やスイーツの画像が大量にアップされている。


「各県の県庁所在地に寄って観光しながら南下しているのか?」


 大きな瞳を三日月に細めて楽し気な姿は見ていて心が和む。一つ一つに「いいね」を押すと、間髪入れずにお礼のメッセージが届く。

 ただ「いいね」を押しているだけなのに、そんなに喜んでくれるとこそばゆい。

 とは言え、気になる事がひとつ。


「あちこち観光してるけど、お金は大丈夫?」


「え?」


「電車や船に乗ったり、うまいもの食べたりすると金がかかるよな?」


「あ、うん。大丈夫」


 それは充分用意してあるから大丈夫だという意味だろうか?それとも……


「まさか人間じゃないからって無賃乗車してないよな?」


「もちろんだよ」


 いつも返信は早い方だが、今回は特に早かった気がする。もしかしてごまかそうとしていないか?


「バイトでもしてるの?」


「うん、次の仙台でもバイトするよ。ちょっとゆっくりしたいし」


 少し食い気味の返信。

 なんだ、単発バイトでまかなっていたのか。疑ってしまって悪い事をした。

 それにしても、怪異にマイナンバーなんてないだろうに、どうやって雇用契約を結んでいるんだろう?


「そうか。友達できるといいな」


「うん」


 ささやかな疑問は食い気味の返信にすぐに押し流されてしまった。


「バイト始めたらインスタにアップしてくれよ」


「もち」


 きっとバイト中も楽しそうにしているのだろう。投稿を見るのが少し楽しみだ。


「それじゃそろそろ寝るから」


「うん、おやすみ」


 いつも通り、布団にくるまった少女のスタンプ。

 少しだけ胸が温かくなって、その日はよく眠れた。

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あなたとつながるメリーさん 歌川ピロシキ @PiroshikiUtagawa

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