10月21日

 今日は、事務所の先輩コンビが企画するライブに出た。


 世間では、有名ではない。


 しかし、事務所内ではネタに定評がある。


 そして、何より後輩に対する的確なアドバイスをしてくれる。


 その方々が、まだ売れないのだから、お笑いの世界は厳しいものである。


 とても嬉しい出来事があった。


 そのライブには、養成所時代に同じ教室で授業を受けていたコンビも居た。


 でも、俺らが一番ウケていた。


 これは、もしかすると、もしかするかもしれない。


 ここから、俺たちの冒険が始まる予感がする。


 まずは、片っ端から賞レースにエントリーだ。


 負けてられない。


 誰に?


 誰とかないよな。


 負けるとかない。


 誰よりも面白くなりたい。


 早速、ネタを書こう。


 日記を書くのは気持ちの整理ができて悪くない。


 ネタを褒められたのだ。


 そして、更に嬉しかったのは、俺のツッコミが特に良かったと言われたこと。


 声がすごくいいから、もっと短く端的にツッコミを入れれば、更に鋭くなると言われた。


 次のネタを作る時には、意識してみよう。


 しかし、面白くないのは、田中である。


 田中はどちらかと言うと、ダメ出しを受けていた。


 せっかくのツッコミが、ボケのせいで死んでいると。


 ネタを書いているのは俺だから。


 とは言ったものの、ネタが悪いという理由ではなかった。


 いわゆる、「間」。


 間が悪いというのである。


 俺は田中を励まそうとしたが止めた。


 嫌味になる気がしたからである。


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