一日一首(令和五年四月)

大胆に剪定をせし山茱萸に黄花咲きたり四月に入りて


蝋梅、山茱萸そして連翹の黄の庭に三つ葉躑躅の紫一輪


調律を済まししピアノの和音澄み老いて弾く指ここち良きかな


清明に入りて庭のテラスでランチとり妻の話をうんうんと聞く


ユーチューブで『戦場のメリークリスマス』を繰り返す。いつか弾かむと指真似しつつ


ひらひらと庭飛びまはる一頭の紋白蝶は斥候なるか


雨雲を切り裂くジェット戦闘機は西の空へとスクランブルか


調律師の弾く和音の唸り徐々にきえ我が家のピアノも誇らしげなり


雨なれど自民一強を懸念して投票しに行かむ反原発派に


青森は県議選挙に四割の投票率で何処へ向かふか


肩よせて『さくらさくら』を連弾し金婚式でもと妻と願ふも


雨あがりの庭にあまたの水仙の花の白と黄一斉に揺るる


面接も和やかにすみ週一の仕事に備へ聴診器をみがく


半世紀前の医師免許証ありがたし「賞味期限」なる語とは無縁と自負す


「もういくつ寝たら初出勤」と聴診器をみがく爺医なれども


花散らしかと氷雨の音を気にしつつストーブの前にて短歌(うた)を詠みをり


氷雨うけクリスマスローズ三十輪うすき緑に咲きそろひたり


誕生日の妻に「おめでとう」と箸をとり味噌汁すする老いのよろこび


軽々と梁吊る重機一台にて春風のもと柱建て済む


芽吹きたる楓の木陰で春風に白根葵の数輪ゆれをり


「春風よ」の妻の声して庭に出で繁茂し過ぎし椹の枝打つ


老医として在宅医療に尽くさむと緩和ケアをさらに勉強!


市議選も自民一強を懸念して若き女性に一票入れぬ


パーゴラ這ふモッコウバラの垂れ枝が一斉に芽吹き春風にゆるる


庭先の姫木蓮の花ぬらす春雨の色か薄紫は


庭隅の竹垣に沿ひ連翹と雪柳咲き黄と白の屏風なす


花曇りの庭ながめつつの珈琲タイムに子らの話するわれら老夫婦


縁側の下に桃色の毛氈のごと広がりて芝桜の春


長男の嫁の退院祝ひにとけの汁の具をきざむ妻のまるき背

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