一日一首(令和四年五月)

土用とて土公神さまの祟り恐れ庭仕事できず〈数独〉する妻


長男の電話に妻の声はづむ「武者人形を飾らなくっちゃ」


はやばやと届きしゴーヤーの苗なれど「八十八夜の別れ霜」を警戒


唸る風に揺るる木蓮の枝先に花は音なきハンドベルのごとし


七十四年前の鯉のぼりを日干しして立夏に鍬ふり畑をたがやす


「来年は金婚式だね」と朝食で。さは言へコロナ禍やまぬ鬱気よ


満開の満天星の下占めて鈴蘭水仙も白花ほこる


子らからの祝ひの帽子のツーショットを腕のばし自撮りす目つきゆがめて


菜の花の黄におほはれし休耕田を農夫ら眺む何思へるや


田水に映る岩木山ごと代かきするトラクターには農神やどらむ


通勤路の両側に広がる林檎樹はいま白き花、赤き実をまつ

 

「反抗」とふ花言葉のシャガも顔負けなりその日陰にさへスギナは繁茂す


ライラックの花咲けば想ふ夭折の友のふるさと北海道を


雨あがりの庭にゴーヤーの苗植ゑて「ごちゃまぜ」料理の「チャンプルー」思ふ


庭先まで茗荷が地下茎伸ばしたり因果を含めて裏庭に移す


朝昼の寒暖差が二十度もあるゆゑに通勤服えらびは妻の手借りて


『明鏡欄』へ三か月ぶりに掲載され妻の評価もソコソコなりき


我がエッセイ更に南下し仙台市の季刊誌『みちのく春秋』にも載る


うち払ひし庭木の枝は妻により池坊流に華麗に活けらる


爺医われ被災地における体験よりポリファーマシー見直す津軽でも


雨のなかキッチンガーデンのコンテナに大根の双葉は二列にならぶ


時は‘小満’、オイル塗られしウッドデッキに陽の差し庭はレース透き明るし


キッチンの隅にてキタアカリの芽を出せば半分に切り植ゑしが如何に


だだちゃ豆、ズッキーニそしてオクラの苗、ならべてはみるが畑せま過ぎ


岩木山は残雪どんどん縮小し濃き緑が山頂へかけあがりゆく


「三十度!」にゴーヤーの苗は喜びて今日の津軽は真夏なるらむ


裏庭に移しし茗荷の地下茎より五つ芽の出づ雨に濡れつつ


真夏日が一夜明くれば寒空にゴーヤを気づかふストーブの部屋にて

 

冷雨やみ初夏の日差に蘇生してゴーヤの苗は蔓を絡ます


ピン札の原稿料を仏壇に供へし妻の読後感まつ


早苗田に強き雨降り映りゐる逆さ岩木山容姿おぼろに

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