一日一首(令和二年九月)

九月朔 夕日の彼方よりサイレンの唸りとどきて不安を掻き立つ


数学の〈離散集合〉と似て非なる〈離合集散〉は政治屋どもの


一日一首の短歌を詠みきて今日555首目! 勇気を呉れる数ではあるよ


〈東奥文学賞〉にいざ応募せむ百枚の『ときをただよふ』を大安の今日こそ


秋田から夜汽車で上京せし少年 僥倖といはむつひに総理に?


早池峰の尾根にただよふ白雲を朝日の透けゐる盛岡の秋


コロナ禍のキャンペーンに首かしぐ「Go To!」のあとに「With CORONA」とは


「忘れやすい」と「記憶しづらい」は似て非なり記憶せざれば物忘れもせず


世の中に脳トレの類(たぐひ)は多々あれど「記憶難」に効き目のありや


認知症の予防の術のなかりせば我が余生こそ思ひ和(のど)むれ


日本の一億余人の現住民、千年後には数千人とふ


食ひ違ふ〈いすかのさし〉をよくみれば左右差あれど種子をよくとる


冷蔵庫の食材つきし金曜日「今日もどる」とふ妻の声や佳き


ベランダの満艦飾なす洗濯に我ら夫婦の幸せのみゆ


全米オープンを抗議の7枚マスクにて制覇せしかな大坂なおみ


自民党総裁選とふ茶番にて日本の総理の誕生せしか


「宰相の資格」を語る次期総理・菅氏に求む真つ正直であれと


思へらく首班指名の菅義偉は〈本能寺の変〉の秀吉ならむ


コロナ禍で凍てし心を溶かしける大坂なおみのメッセージと笑み


〈目標〉を公表せざれば〈失敗〉もなく完璧なりけり嗚呼無謬主義


秋晴れの彼岸の入りにゴマおはぎ食べつつ話題は来む金婚式


副総理の「かん内閣」と呼びけるは単なるボケか深層心理か


副総理の「かん内閣」と呼びけるを〈他山の石〉と聞き流しをり


秋晴れのベランダに餃子を包みつつ「敬老の日だね」と夫婦で笑み交はす


秋分の日に家中の鉢物をベランダにならべくつろぎてをり


四連休ステイホームであつと過ぎ「今日から仕事!」と張り切り準備


誤嚥性肺炎こそは老衰の兆しなるゆゑ心して食まむ


噎(む)せもせず咳も出ぬまま密やかに誤嚥かさねて肺炎となりき


寝返りして腰痛あらば徴(しるし)なり骨粗鬆症性椎体骨折の


湯舟にて熱唱すれば気のはれて誤嚥予防の鍛錬にもなり


若き女優の自死を報ずる新聞見て老健へ向かふ寒き秋の朝


師の詠みし「美貌の女優X」に謎のままなるXの解


月刊『弘前』の連載を終へ安堵せしが故郷つがるの遠くならずや

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る