一日一首(令和二年十月)

雨ふれど十五夜なれば縁に出て〈コロナ払ひ〉と団子を食はむ


国勢調査、五年前には三陸にて書きしを想ふ 海に名月


このところ泥(なづ)み勝ちなる添削に師を案じつつ「一日一首」


コロナ鬱をうち払ふべく商工会の上ぐる花火が明月に対(む)く


硬筆を筆ペンに代へ短歌(うた)詠むに力入れ過ぎ寄席文字となる


ふるさとのテレビ局より取材うけ津軽弁使ひ‘あずましく’語る


秋の夜や107号は「終の部屋」家族を待ちて臨終つげむ


「法政」とふ母校の名前に恥じぬやう法にのつとり政(まつりごと)せよ


池袋暴走事故の老被告! 無罪主張や見苦しかりける


いつの世も服(まつろ)はぬ民への見せしめはお上のなさる常套手段か


日本学術会議任命拒否とふ理不尽に戦前回帰を恐れをるなり


八十路(やそじ)まで先は遥かに遠ければ一念発起し何かをなさむ


ネイチャー誌に掲載されし菅総理 トランプとならび気分良からう


真夜中の電飾てらす涙には金正恩の保身や滲む


さはやかな秋晴れなれどコロナ禍になにがな心うつうつたる日々


日本学術会議の会員六名の任命拒否とふ蛮行許さじ


中曽根大勲位に弔意を示めせと菅総理 忘るるなかれ神嘗祭を


筆ペンに思ひを込めて短歌(うた)を書く心に平安歌人を宿して


岩手山初冠雪は冬を告げダウンベストを急ぎ取り出す


昨今の権力者たちの言動は弱きをくじき強きにへつらふ


寒き夜に看取りをすませ清めの塩 心の冷えて寝つかれざりき


われは医師 名を呼びペンライトを瞳(め)に振れど反応のなく時計を視たり


「弘前でクラスター発生!」保健所の初期対応の遅れを責むべし


官邸のテレビ監視に驚きぬメディアを支配し何処へ向かふや


暦には「霜降」とありベランダのミカンの鉢を居間に入れたり


コロナ禍に出生数は八十万 我らが世代の三分の一とは!


核兵器禁止条約発効に被爆国たる日本は何処


文章のメタボを戒め十八字四十三行に綴るエッセイ


皮むきて軒に吊せる蜂屋柿じんわり色づき渋抜けゆくか


コロナ禍で危ふくなるか国民の三大権利また三大義務さへ


「得意顔」の鼻高々を連想し「特高(とくだか)顔」と、戦後生まれは

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