一日一首(令和二年六月)

「俺こんな国はいやだ」との替え歌あり 政治の不実はわれも見てゐる


のちのちの話の種に取りおかむアベノマスクに恨みなけれど


‘コロナ’には「誰もが感染しうる」と言ふ達増知事が岩手を鎮めむ


人民の血を流したる天安門事件は六月四日 今も悪夢なり


筒井康隆著〈創作の極意と掟〉に学びしが吾が短編に進歩見られず


棚ぼたを頼むはいかにも能なきことセレンディップの王子のやうに


「コロナ禍の埋草」といふ企画にて連載ふゆれば意欲もいや増す


行間にも思ひを籠めてつづるなり 筆力衰へぬ間にと急ぎて


断定の「なり」は用言の連体形と体言に付くこと今に知りたり


梅雨入りしてはや土砂降りの激しさに垣根の薔薇らうなだれてをり


風つよき高層階のベランダにアッツザクラのルビーの輝き


葉牡丹の中央伸びて咲く見れば菜の花つまりアブラナ科なりき


「女帝とは誰のことかしら」と睨付(ねめつ)ける東京都知事の素顔は知らず


『文藝春秋』の〈三人の卓子〉に投稿しわれも文士の端くれとなる


老健で「三密さけよ」は無理なこと 接触なしでは介護は出来ぬ


コロナ予防のステイホームの煽り受けあまたの医院が窮してをるらし


歳とれば合はなくなると思ひしが「小百合」のままで喜寿になるらし


従妹より古希記念の冊子が届きたり〈ベオグラードにて〉とふ回顧録なり


父の日に五島の蒲鉾とどきたり電話に娘の新妻ぶりも


「寝覚めよき事こそなさめ」と後藤新平 良き言(げん)なれど実行難し


岩手山を高度九千(ft.)のチェロキーから撮りしとふ八十路の友の送り呉れたり


コロナ渦中で選挙せむとの医師会には北里柴三郎がドンネル(雷)落とさむ


「廃止とは知らなかった」と尾身先生。〈専門家会議〉は幻となる


コロナ禍でマスク姿の絶えざれば季節感さへくるひをるなり


医師会長選挙の投票は感染予防の異様なる姿で。新旧交代す


テレワークの旗振り役が官邸のテレビ電話の不調を訴ふ


甘夏の種をためしに鉢に埋め今朝驚かさる双葉出でゐて


古希すぎて生命保険のやめどきを語りあふ日の茶のしぶさかな

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