一日一首(令和二年五月)

あすからの五連休に思ひをり退職ののちは有難かるや


失策を民の誤解と言ひ逃るる無謬主義にや浅ましさの見ゆ


コロナ禍にて運動不足と徒歩により九階までの昇降を妻と


「遺憾」とは責任逃れの便利語でなく「不徳の致すところ」と言ふべし


はや五月 ステイホームのつれづれに随想七千二百字をものせり


はや五月「ステイホーム!」のつれづれに曝書がてらの読書三昧


失策を民の誤解と言ひ逃るる大臣の弁に浅ましさの見ゆ


みちのくの巌鷲山なる頂きの雪形の鷲や飛び立たむとする


目のまえの空気をつかみ腕をふり百六十段を下りまたのぼる


雨ふりて階段昇降も断念し〈雷(いかづち)の男〉を読む日曜日


伝記なる『ドンネルの男』を読みながら明治大正の世界に浸る


大臣は「知らない」と言ふ死亡者数19人から171人に変更されしを


コロナ禍で渉猟できず楽しみはアンリミテドのキンドル本のみ


習近平が「病毒」と呼ぶウイルスで中国責めるトランプ政権


書きあげし九万五千字を読みかへし自信をもちて投稿しけり


Eスポの悪戯ならむ春の午後 九州からのラグチューつづく


武漢発「新型冠状病毒」は未だ岩手に達せじと聞く


医者として後藤新平は任果たす二十万余の帰還兵の検疫


ウイルスのホストジャンプの奇怪さは擬人化されしアニメキャラ並


札幌の老健施設でコロナ・クラスタ- 感染八十五人、死者十一人とふ


混乱の〈アカシアハイツ〉の患者移送 家族らあはれただおろおろと


コロナ禍の今 後藤新平の〈国難来る〉を読みつつ学ぶこと多きを知りぬ


後藤新平の『国難来』はいつの世も明瞭に映す鏡と言はむ


コロナ禍は天の意思かもと思へども人生百歳、目指して頑張る


〈言霊(ことだま)のさきはふ日本〉に生きてきて歌詠む楽しさ難しさ知る


〈言霊の幸ふ〉日本に生きてきてその精神は吾にも浸透す


〈言霊の幸ふ〉といふ万葉の言葉に惹かれ詠みこし五百首余


コロナ禍にあけくれて早も世は初夏に されど半袖を着る気にならぬ


「第二波にそなえ取っときましょう」と届きしアベノマスク2枚に妻は


百歳の媼の書きしエッセイの〈五月晴れ〉には青春さへみゆ


日々一首詠み続けたし一万首、吾も百寿の歌詠みとならむ

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