一日一首(令和二年四月)

「異常なし」が急に「多臓器不全」とは申し訳なく思ひをり候


タウン誌の『医者の繰り言』が延長され繰り言のネタをさがしをるなり


〈失敗の本質〉なる書を読みかへしマスク二枚が竹やりに思ふ


お役所の無謬主義には都合よき「想定外」とふ言葉も常添ふ


コロナ禍に動画チャットを楽しむ妻 娘の顔観てウルウルしつつ


朝刊紙上の〈モリオカNOW〉も五十号 せめて百まで書き続けたし


「やった」と言ふアリバイ作りの宣言では緊急事態の本質伝はらじ


覚悟なき緊急事態宣言のこの軽さでは危機伝はらじ


大判のわがハンカチをマスクとしスーパーに行く妻やありがたき


八割の外出自粛要請に「代議士は無理」と逃げし幹事長よ


花言葉は「私の不安をやはらげて」クリスマスローズの翠(みどり)がうつむく


感染が一目で判断つくならばホラー映画のやうになるらし


とつぜんのふとき饂飩におどろきぬ老師がうたに朱のくはふれば


老健をテレワークでと思へども対面が主ゆゑそれは空論


いつの日か〈ポツンと…〉ばかりになり果つればパンデミックはゆめ起こるまじ


コロナ禍を数理モデルで予測すれば四十二万の死者が出るらし


頼りなき為政者のもと民たちが消耗するは昔日の如し


ウイルスは「さまよへる遺伝子」まさにいま爆発的に世界をかけをり


原敬首相のスペイン風邪罹患は招かれし北里研究所の宴にてと思はる


人類の傲慢に対する警鐘を先住なるウイルスが鳴らすと覚ゆ


コロナ禍の憂さ晴らすべく老健のメニューをふやす 検食うまし


大戦を知らぬ世代の我らとて‘コロナ’の大本営発表に危惧いだくなり


Googleの人移動監視ソフトにより‘コロナ’拡大阻止は可能か


コロナ禍の不安・恐怖が駆りたつる偏見・差別こそなほ恐ろしき


感染の恐怖がさせる悪弊か感染者をバイキン呼ばわりするとはなにごとぞ


官邸は「保証なき自粛要請」で命か金かを民に問ふだけ


コロナ禍に紙面の行間広がりて吾がエッセイ欄もサイズ広がる


うつせみの人の世はいつか絶ゆれどもウイルス消ゆることのあるまじ


ウイルスは人類より前に地球に生(あ)れ人類滅亡のあとも生きゆかむ


目に見えぬウイルスさへも「不潔」とふ医学用語は見た目にあらず

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