一日一首(令和二年三月)

世界では「COVID-19」と呼ぶ‘新コロナ’長期休校させ子供らに媚びる?


‘コロナ’休校のあおりで出勤ままならぬママさんスタッフの不足に悩む


効くと信じ青森ヒバ油をディフューザーに‘コロナウイルス’の防護となすなり


〈ひ〉と〈み〉とで、もったいないに大違い。消費期限か賞味期限か


驚くとともに恐れぬ入所者のすべてが転倒要注意判定なり


転倒事故〈Act of God〉と諦めて「しがだねぇな」と老いの一言(ひとこと)


名を呼べば酸素マスクの揺れしかな 口癖なりし「あ、せんせぇ」と言ひにけむ


「手術は無理」と施設に戻されし九十代の媼は冬越え春宵に逝きぬ


死ぬことを「コロリ」と言ふは不快なり「ネンネンコロリ」や猶情けなき


雨音に窓あけて見て驚きぬ軒の水玉春の香のして


世の中の悪しき空気を鎮めつつ春雨降るは快かりき


しづかなる大阪場所にひびきわたる呼び出し次郎と式守伊之助の声


COVID-19のパンデミックは脅威なり大恐慌の足音さへや


武漢(ウーハン)の火の粉は世界を飛び交ひて人類(ひと)の愚かさ嘲笑ふがに


散歩にて運動不足を解消せむ保存食品の買出しかねて


生物と非生物との狭間にてウィルスめらは生きてゐるとふ


たのしみは「おかえりなさい」と迎へられ甘きものにてお茶を飲むとき


新井満著〈楽しみは〉を読み力得る佳き現代歌をば詠み継ぎゆかな


師の言ひし「トラウマ」の意に戸惑ひて「心的外傷」思ひをるなり


ウイルスの多能性こそ驚くべし胎児を守るヒーローにもなり


しづかなる大阪場所にひびきわたる白鵬くりだす張り手の唸り


しづかなる大阪場所の十日目に金星あげし阿武咲こそ


既にしてカナダは不参加を表明し東京五輪はいかになるらむ


師の詠みし「Exergy」の意味調べ〈Quality of Energy〉浮かびぬ


「延期」とふIOCの決定に金と政治の見え隠れせり


「延期」とふIOCの決定にオリンピズムを愚考するなり


今こそはオリンピズムに則りてパンデミックに立ち向かひたし


子らからの電話で笑ふ妻を見て「ながいなあ~」ともうらやましくも


新婚の娘のくれし動画にはベランダ越しの桜と雪が


このたびの芸能人の訃報には煙草と酒の弊もあるらし


とりあへず延期の東京五輪なり クーベルタンのやきもきしをらむ

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