第2話 悲劇の序章
「マーカム王様、申し上げます‼︎」
時計の針は、ドラセナが馬人間になる数時間前まで戻る。
ローレンス城・王の間。
片膝をついた先に鎮座するのは、ウマリティ王国第14代王のマーカム・ウマリティである。
15歳。
父の急死に伴い王位を継承したばかりの若き王。
恐縮しきった表情で、兵士は報告を続ける。
「先ほどサロルド軍が、国境を突破しました‼︎次々と主要砦を陥落させ、王国内を進軍中。ここまで80キロ東の距離まで近づいております‼︎」
「なんと……」
その瞬間、家臣団から、
無理もない。
隣国のサロルド共和国は、豊富な埋蔵資源に恵まれた超大国。
一方のウマリティ王国は、馬産業など畜産業を生業にしてきた小国だ。
代々、王女や
だが、前国王のマーキムが急死するとその関係は一変。
同盟を破棄し、混乱に乗じて侵攻してきた。
「サロルド軍の数は?」
マーカム王は問う。
あどけなさが残りながらも、王として気丈に振舞おうとしていた。
「2万にございます」
だが、兵士の言葉にマーカムの顔は引き攣った。
「2万か……それに対し我が軍は2000……」
マーカムは、この国と自らの暗い未来を悟るように
鉛のような重い空気と静寂が城内を包む。
誰もが節目がちで、発言する者はいない。
その時だった。
「マーカム王様、心配はいりませぬ‼︎」
軍部トップのドラセナである。
全員の視線を釘付けにしたままドラセナは続ける。
「お父上も、数的不利な
「ドラセナ……」
マーカム王の瞳に希望の光が宿る。
「戦は数ではございません‼︎このドラセナには、秘策がございます‼︎」
秘策。
ドラセナのその言葉に家臣団がどよめく。
「秘策?ドラセナ、それは何じゃ?」
マーカム王も前のめりとなり聞く。
「今夜中にその秘策を明らかに致します‼︎しばし、我に時間をください‼︎」
ドラセナは丁重にお辞儀をしてから、その場を辞去する。
それが悲劇の序章であるとも知らずに……。
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