第19話

 ジャンヌさんの、ドラゴン討伐の話が聞けた。

 それを脚色して描いて行く。もちろん、漫画でだ。

 プロットを練る……。小説でもいいかもしれないな。まあ、後から考えよう。


 ピンチを演出して、機転を描く……。

 そして、注意点もだ。

 ドラゴン退治の注意点……。掠っただけで、瀕死になる攻撃を避け続ける……。

 いやいや……。ジャンヌさんの話だけでは、物語にならないな。


「住処までの危険な場所とその対応。ドラゴンのブレスの対処方法や、飛翔時に散会して被害を抑えること……」


 ネームが切れた。いい冒険譚だと思う。


「これで、今回はいいかな」


 この街に編集者はいない。

 出版社はあるんだけど。

 主人公のモデルになる、ジャンヌさんに見て貰うくらいだな。

 ペン入れはそれからだ。


「ユージ。起きていたのかい?」


 丁度いいや。


「シーナさん。これを見て貰えますか?」


「うん? 漫画を描いていたのかい?」



 シーナさんが、読んでくれている。それをじっと待つ。


「う~ん。ジャンヌが強すぎだね。真似する馬鹿が出るんじゃないかな? 3時間、攻撃を躱し続けて、翼と手足、尻尾を負傷させてから、急所に一撃か~。普通は、ドラゴンの鱗に傷すらつけられなものだよ?」


 ドラゴン退治の真似ですか……。

 命知らずな冒険者……。自己責任だと思うけど。


「そうですね……。ジャンヌさんのパーティーメンバーの装備も書いておきますか」


「装備だけじゃないんだけどね。それと、『最低でもB級冒険者で組んだパーティー』と注意書きした方がいいよ」


 ふむ……。メモを取る。


「それじゃあ、今日はもう寝な。急いで作りたいのかもしれないけど、これでユージが寝不足になったら、ジャンヌが怒るよ。料理が不味くなったら、激怒だね」


 回りくどく、私を心配してくれている。

 寝るか……。





 3日が過ぎた。

 『ドラゴン討伐物語』を喫茶店シーナの本棚に置くと、奪い合いになる。

 魔法で複製して行くけど、ボロボロになって返って来た。

 毎日作り直しだ……。


 5日後にジャンヌさんが来たので、漫画を見て貰う。

 5日間……、領主やら王家に呼ばれて忙しかったらしい。


 細部を修正して、合格を頂く。


「ありがとうございます。これで、清書しますね。これからペン入れだ」


「……噂になってたけど、今までのは?」


「ネームと呼ばれる、下書きでしたよ?」


「それでも、読まれるんだね~」


「この世界は、ドラゴンが人気ですからね~」


 互いに笑い合う。

 ドラゴン討伐物語は、喫茶店シーナの本棚の一棚を埋めるほどの大人気作品になった。

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