第12話

 街を襲って来たゴブリンは、順調に討伐されて行った。

 だけど、数が多過ぎる。

 毒草の煮込み料理も、看破されてしまって、もうゴブリン達は手を付けようとしない。

 食中毒を理解する知識はあるみたいだ。

 だけど、痺れて動けなくなったゴブリンは結構な数だ。

 それらを、冒険者が討ち取って行く。


「まだ、半分くらいかな」


 私はどうするべきか……。

 シーナさんを守りに戻るべきか。知識で冒険者のサポートを行うか。

 私にあるのは、拙い火魔法と念動力、そして料理の知識だけだ。


 ここで、雷が落ちた。


「ゴブリンシャーマンかな……」


「ユージと言ったな。君は……、できればゴブリンシャーマンに向かってくれ!」


 ……行った方がいいな。ゴブリンシャーマンを倒せれば、ゴブリン族の撤退もあり得る。

 私は、数人の護衛を伴って、雷が落ちた方向に向かった。



「……被害甚大だな」


 冒険者が、数人倒れている。

 今対峙している冒険者も近づけていない。

 焔の壁を纏っている……。ファイアウォール?

 ゴブリンシャーマンは、面倒くさそうだ。


 ここで、騎兵の一団が、ゴブリンシャーマンの背後から現れた。


「ジャンヌさん!」


「下がっていろ!」


 ジャンヌさんの剣が、眩い光を放った。あのまま、錐型の陣での突撃かな?

 大規模魔法の警戒は? 漫画にしたんだけどな。

 包囲した方が、良さそうだけど。

 それと、後一手欲しいな……。


「なんか、デバフ効果を……」


 でも、紙はファイアウォールで焼かれそうだ。

 ふと、地面が気になった。


「石畳……」


 私は、近場に落ちていた小石を拾って、石畳の平らな表面に書いてみる。

 引っ掻いたようなキズができた。


「行けるか?」


 私は、石畳にサラサラとあるものを描いた。


「念動力発動!」


 石畳が浮き上がる。だけど、推進力がないな。しょうがない。

 私は、石畳を握って、投げた。

 私の腕力と、念動力による推進力。肩が抜けそうなほど痛いけど、我慢だ。


 石畳は、ゴブリンシャーマンに向けて飛んで行く。ファイアウォールも突き破った。

 そして、ゴブリンシャーマンにぶつかる寸前で、杖により落とされる。

 ゴブリンシャーマンって、格闘もできんのね……。


 ――パン


 ここで、大きな音が鳴った。

 私が、石畳に刻んだ絵からだ。風魔法の魔法陣を組み込んでいた。

 不意を突かれた、ゴブリンシャーマンが一瞬たじろぐ。

 その硬直を見逃さずに、ジャンヌさん達が突撃した。


 勝負は一瞬だった。

 ジャンヌさんが、腕を切り落とし、他の冒険者の槍が急所に刺さった。ジャンヌさん達に多少の火傷が見られるけど、覚悟の上なんだな。まあ、治療魔法に期待しよう。


 数を頼りにするゴブリン族が、上位個体だからといって、単独でいるとそうなる。

 その後は、簡単だった。

 ジャンヌさん達が、街を周回すると、ゴブリン族が一掃された。彼女等は、精鋭部隊だったんだな。


「だけど、殲滅はできていないのか……。これから掃討戦か。面倒だな」


 周囲を確認する。皆、疲労困憊だ。


「さて……、携帯食を配給して行くか」

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