第11話

 シーナさんの店は、二階建てだ。

 その二階の部屋で、カーテンの隙間から街道を確認する。


「……ゴブリンを視認しました。街中に入られていますね」


「もうかい? さっき、大きな音が聞こえたばかりじゃないか?」


「街道以外の場所から侵入されたんでしょうね。数百匹が街を囲むのであれば、柵を乗り越えて来る個体も多いですよ。街道から隊列を組んで来るのは、人間くらいかな」


 シーナさんは、真っ青だ。

 さて……、私はどうするか。


 街中での戦闘が、始まった。

 冒険者は、はぐれない様に数人で行動している。


「……知識の共有は、できていそうだな」


 一対多でなければ、ゴブリンはそれほどの脅威じゃない。

 討伐は、順調そうだった。

 そう思った時だった。

 派手な音がした。そちらを確認する。


「ホブゴブリンか……」



 私は、シーナさんを置いてホブゴブリンに向かった。


「身長は2メートルくらいで、鈍いが膂力がある……。そして、知能は低い」


 まだ、漫画にしていない知識を再確認する。

 4人の冒険者パーティーが相手をしていた。

 棍棒で地面を叩かれるたびに、地震が起きる。


「一度下がってください!」


 私の大声に、冒険者パーティーが従ってくれる。

 私は、大量の紙をバラ撒いた。


「念動力発動!」


 紙がホブゴブリンを襲って行く。

 そして、顔に張り付き出した。

 数枚は落とされたけど、視界を奪い、鼻と口を塞いでいる。

 ホブゴブリンは、紙を剥がそうとして必死だ。

 だけど、その一瞬で十分だった。


 一人の冒険者が、背後に回り脊髄を切断した。

 ホブゴブリンは、まだ生きているけど、もう動けそうにない。


「そいつは、次期に息絶えます。それよりも、街の中心に行きましょう。餌に食いついているかもしれません」


 冒険者達は頷いてくれた。





 私は、実際のところ戦えない。一応、包丁を持って来たけど、ゴブリンを倒せると思えるほど自惚れてもいない。

 冒険者に守られながら、街の中心へ移動した。

 街の中心には、私が作った炊き出し用の料理が並んでいた。

 それに群がっているゴブリン……。

 知能がありそうだったけど……、そうでもないかな?


「思ったよりも多いですね……」


「ここまで侵入されちまったか。ジャンヌさん達が戻って来るまで持つかな……」


 時間との勝負だな。


「それで……、どれくらいで効くんだ?」


「十分程度と聞いています」


 私が、そう答えた時だった。

 ゴブリン達が、お腹を抱えて蹲り出した。


「あれが、採集で間違って採られていた毒草の効果になるんですね……。ギルドが過敏になるのも納得です」

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