第10話

 冒険者から聞いた、ゴブリン討伐記を纏めてみる。

 ゴブリンに詳しい人がいて、生態や習性なんかも盛り込んでみた。


斥候スカウトがいるので、まずこいつらを片付けないといけない。群れの大きさを最優先で把握すること……。そして、ホブゴブリンは、舐めていると死者が出る……、と」


 一度下書きをしてから、念動力でペンを動かす。

 まだ、クォリティー的には、手で描いた方が高いけど、速さが違う。

 一晩で、十枚が描けた。

 魔方陣の上に置いて、複製を行う。魔方陣には、ペンの動きのトレースを組み込んである。インクが浮き上がり、自動で紙に吸い込まれて行く。

 水魔法……。こちらも問題ない。


「魔法という技術にも慣れて来たな。今日は、ここまでにしようか」


 私は、灯りを消して横になった。



 朝日と共に起きて、調理の準備を始める。

 特に竈だ。

 温めるのに時間がかかる。これは、火魔法を使ってもだ。もっと高価な竈なら別かもしれないけど。

 ガスや電気のない世界だと痛感させられる。

 ここで、シーナさんが来た。


「おはようございます」


「おはよう」


「今日の食材は、なんですか?」


「……ちょっと仕入れが、上手く行かなくてね~」


 シーナさんが背負っている籠を見る。

 野菜はいいのだけど、肉と魚が少ない?


「なにかありました?」


「……冒険者が、ゴブリンの群れに襲われたんだ。それで、狩猟と採集が中止された。今日……、討伐隊が巣に向かうんだとさ」


 ゴブリンの群れか……。


「大きい群れだったのですか?」


「数十匹らしい。上位個体もいる。街をあげての討伐になるみたいだ」


 不味いな……。


「街の防衛は?」


 シーナさんが、不思議そうな顔をする。


「ゴブリンが、攻め込んで来るってのかい?」


 ダメだな。過去の失敗を学んでいない。



 その後、冒険者ギルドに連れて行って貰った。

 忙しい中、ギルド長が時間を割いてくれる。

 私は、昨日途中まで描いた漫画を差し出す。すると、ギルド長が読んでくれた。


「……ふむ。分かりやすいね。それで……、ゴブリンの逆襲があると?」


 理解してくれるのか。ありがたいな。


「ゴブリン達に知能があるのなら、今は巣を移動させて街の周辺に移動していると思います。上位個体がいたのですよね?」


 ギルド長が考え出す。

 ここで、肩を叩かれた。


「ジャンヌさん!」


「ユージ……、それは過去にあった出来事なのかい?」


「もちろんです。冒険者から聞き取った内容を漫画にしているので」


 ギルド長とジャンヌさんが頷いた。


「作戦を変更しよう」





 今日は、全ての店が休みとなった。

 街の人達は、各家かギルドに籠っている。

 そして、街の半分の冒険者がゴブリンの巣に向かった。

 残りの冒険者は、街の出入り口で待機だ。


 私はというと、携帯食を作り続けていた。

 シーナさんが、包んでくれている。


「なあ、ユージ。本当に街が襲われるのかい?」


「ホブゴブリンや、ゴブリンシャーマンがいるのであれば……、来ますね。それに、巣に向かった冒険者達もそれなりの数がいます。予想が外れても、損害は軽微でしょう」


 ここで、鬨の声を聞いた。予想通りだ。


「……来ましたね」


 街を手薄にしたから、襲って来たんだ。知能があるのを逆手に取った。

 でも、ここからだ……。

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