第07話:実は耳かきしたかったんです

 お、お待たせいたしました。シャワーをお借りしました。

 あと着替えの服もありがとうございます。どうですか? 先輩の服、私にも似合っていますか? ふふっ。こうやって実際に服をお借りしてみると、先輩って私に比べてこんなに大きいんですね。


 ……えっと、先輩に相談があります。シャワーと服をお借りしたお礼として、私が先輩に耳かきをしてあげたいのですが……良いでしょうか?

 ……「なんで耳かきなの?」ですか? さっきシャワーをお借りしながら考えたんですけど、その……どれだけアピールしてもアプローチをかけても全く先輩が私の気持ちに気づいてくれないのは、もしかしたら先輩が私の声を聞き取れていないのかと思いまして……。

 だったら、私が先輩の耳を綺麗に掃除をして、私の言葉が届きやすくなるようにしようかな~って考えたんですよ。

 ……まぁ、簡単に言ってしまえば、私が先輩の耳掃除をしたいだけなんですけどね。えへへ。


 さ、さぁ! 覚悟は決めました! まずは、ひざ枕からです! どんと来てください!

 ……ひゃあ。ご、ゴメンなさい。来ると判っていても実際に来ると驚いてしまって……。

 こほん。それでは気を取り直して、耳かきを始めさせてもらいますね。いきますよ~。


 カリカリ……。ゴソゴソ……。

 カリカリ……。ゴソゴソ……。

 カリカリ……。ゴソゴソ……。

 カリカリ……。ゴソゴソ……。


 ……え? 「このカリカリゴソゴソって何なのか?」ですか? 耳かきをする時って、カリカリゴソゴソって口ずさみませんか? ……え? 口ずさまないんですか? ……もしかして、ウチの家だけのルールだったんでしょうか? し、失礼しました……。恥ずかしいです……。穴があったら入りたい気持ちです……。……あ、いえ、先輩の耳の穴に入りたいって意味じゃないですってば!

 それでは、カリカリゴソゴソは無しにしますね……。

 …………。

 ……えへへ。いざカリカリ、ゴソゴソと口ずさまなくなっちゃうと、何を話せば良いのか迷っちゃいますね。


 痛くないですか? 痒いところとかありませんか? くすぐったかったりしませんか?

 ……あ、この辺りが気持ち良いんですね。「なんで判るのか?」って、先輩の反応を見てればすぐに判りますよ。えへへ。

 そんなに私の耳かきって気持ち良いですか? ……えへへ。先輩に褒められると嬉しいです。耳かきはやり過ぎると病気になっちゃいますから毎日は出来ないですけど、耳かきして欲しいときはいつでも呼んでくださいね。誠心誠意、真心を込めて耳かきさせていただきますから。

 あと、耳かきも気持ち良いですけど、耳のマッサージもすごく気持ち良いんですよ。なんでも耳には100箇所以上のツボがあるらしくって、健康にも良いらしいんです。ストレスや肩こり、目の疲れに利くツボなんかなら私にも分かるので、もし先輩がよろしければ耳かきが終わった後に耳のマッサージもしましょうか?


 こちら側の耳はもう少しで綺麗に掃除し終わりますよ~。カリカリカリカリ~。……はい、最後の獲物が取れましたよ。じゃあ、息を吹きかけますね。ふぅー。

 それでは、こちら側は終わったので反対を向いてもらえますか?

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