第4話

 人ごみの中をかき分けながら、美織先輩を捜索する。

 これだけの人ゴミではあるものの、小柄な体が幸いしてスムーズの人の隙間を掻いくぐっていく。だが先輩と思しき姿を見つけることはできなかった。


(先輩、どこにいるんですか……!)


 あたりをキョロキョロと見回す。

 もしかするとグループが向かった方にいるのかもしれない、そう思った瞬間、なぎのスマホから音が鳴った。

 確認すると、美織みおからのチャットだった。

 ホッとして確認したのもつかの間、彼女からのチャットが送られてきたのは、今回の花火大会用グループではなく、凪個人に対してだった。

 もちろん、会話をしたこともないのに互いのアカウントを知っている筈がない。どうやらグループから友達登録をしたらしかった。

 すぐに確認する。

 そこには、こう書かれていた。


【屋台の上の神社に来て】


「えっ」

 

 どういうことだろうか。

 混乱しつつ、何度かスマホを確認するが間違いなかった。

 屋台が並ぶ河川敷、その裏山には神社があるのだが、そこへ来いと先輩直々に指令が届いたのだ。


(どういうこと……かな?)


 先輩との初めての会話(?)が神社に来るようにであったことに若干の戸惑いを感じつつも、凪は指示された神社に向かうべく、神社へ続く石段を登り始めたのだった。

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