第3話 君とパン
金平糖のかき氷を食べたあとは5人で少し遊んだ。僕は結局、ユーフォーキャッチャーで特に収穫はなかった。けど、4人は何かしらのもの(キーホルダーとかお菓子とか)を獲得していた。僕だけ階段を踏み外してしまったかのような感じがしたけど、心は満たされていたし、5人で遊ぶのは楽しかった。
今はご飯も食べ終わり、お風呂も入ったので、スマホを見ながらベッドでごろごろしている。この時間が自分にとってのルーティーンになっている感じがする。
ユーチューブで李希がオススメしていた動画を見ていると、LINEが来たことを知らせる着信音が何の前触れもなく(それは当たり前なのだけど)鳴った。
誰から? と思ったけど、それは思ってもなかった相手――桜菜さんからだった。桜菜さんとは1年のとき、係の仕事の関係でLINEを交換していたけど、2年生になってから桜菜さんからLINEが来るのは始めてだった。
『大希くん、何も聞かずに3日間、質問に答えてほしい。なんでこうしてるのは今度ちゃんと話すから。少し答えづらい質問もあるかもだけど、お願い』
なんだろうかとは思うけど、僕はなぜこうするのか聞く勇気なんてどこにもない。そう思ってるとLINEの続きが来た。
『今日の質問
大希くんはパンとご飯どっち派?
パンが好きだとしたら何のパンが好き?』
どういう意図があるのかは分からないけど、とりあえず指示通りに答えればいいんだろう。僕は小さい頃から朝はパンと決まっているし、パン屋を見つけるとすぐパン屋に入っちゃう謎の習性をもってるからパンのほうが好きだな。特に好きなのはクロワッサンかな。あの食感と味が好きなんだよな……。
『パン派でクロワッサンが好きだよ』
『本当!? 嬉しいな』
えっ、僕がパン派でクロワッサンが好きで何で嬉しいんだろう。桜菜さんもパン派でクロワッサンが好きだから仲間がいて嬉しい、とか? それとも何か別の意味が……?
『あ、ごめん! 何でもない。じゃあ、おやすみなさい』
僕がそういうことを考えていると訂正するように――焦っているかのようにそう返信が来た。
『うん』
何か桜菜さんの心の箱には秘密というか何かが隠されているんだろうか。僕にもう少しだけ黙っていたい? あと2回の質問? 僕の心の今のカラーは多分白なんだろう。つまり広いところにいるような……。
――その日はさっきのもあるのかパンが出てくる夢を見た。
お菓子の家ではなく、パンでできた家にいる。パンのあの焼き立ての、人を幸せにする香ばしい匂いが家のどこからもプンプンと漂ってくる。その中に1つだけ見たことないようなパンがあった。なんだろうと思い、これでもかと手を伸ばすけどあと少しのところなんだけど届きそうにない。もう一度伸ばすとさっきよりもそのパンとの距離が近くなった。あと少し――。
――パンを取れた、のではなくこの強い朝の日差しに体が反応し、目が覚めたのだ。まだ少しパンの匂いがするような気が、する。
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