第25話

 イフリートは、魔王軍を裏切り、リッカに下った。

 その衝撃は、国中に伝わる。

 人の国だけではない。魔族の国にもだ。


「えへへ。リッカあねさん。次は、何処に行きやす?」


 姐さん? リッカは、聖女だぞ? なんか、族長になっていないか?


「……イフリート。精霊界に戻っていなさい。用ができれば召喚します」


「サー、イエッサー!」


 イフリートが消える……。


「リッカは、召喚士でもあるのか?」


「ステータスの割り振りで、"精霊との契約"を取りました。でも、召喚士を名乗れるほどではありませんよ」


 イフリートは、上位の精霊ではないのか?

 私は召喚士と組んだこともあるが、とても小さい精霊を使役する程度だったぞ?


「まあ、聖女なのだ。私には理解できないんだろう。そうだな、サポートジョブと言ったところか……」


 目の前には、ゴリマッチョなゴツイ銃を携えた、屈強な回復術師がいる。もはや、兵士ソルジャーだ。

 攻撃は、凶悪と言うしかない弾を撃ち出し、膨大な魔力による回復、そして、精霊の使役か。

 そうか、これが異世界の聖女か。その真の姿なのだな……。異世界なので、前の世界のイメージを持っていて混乱していた。修道女ではないのだ。


「ふう~。しかし、私はやることがないな……」


 リッカの成長後、私は正直暇だ。


「それならば、次はヘーキチさんが戦いますか?」


「む? いいのか?」


「そうですね。次は、風の砦に行きましょう。ガルーダがいます」


 久々に働くか。私は、指を鳴らした。





 野を超えて、山を登ると風の砦が現れた。


「あそこにいます」


「あれか……」


 ここで、鳥の魔物が襲って来た。空を覆い尽くすほどの大群だ。

 私は、斧と戦槌を握った。


「物凄い数ですね~。手伝いますか?」


「全て叩き落す!」


 私は突撃した。


 百匹、千匹、一万匹、十万匹……。魔物の死骸で地面が見えない。

 しかし、小鳥が多かったが、鳥の群れと言うのも手強いものだな。

 陣形を組んで攻撃されるとは思わなかった。

 始めは、魚鱗の陣で突撃して来たが、先頭を叩き潰してやった。次は、鶴翼の陣で包囲して来たが、乱戦は私の得意とするところだ。数が半分になるまで倒して行く。


 その後、上空からの魔法攻撃に変更して来た。司令官がいるみたいだ。

 私は飛べない。確かに有効だが、投石にて対処する。銃は使わない。弾丸は高いのだ。こんな雑魚には、使いたくない。

 次々に落としていったが、ここでリッカが動いた。


 ――ドカ~ン


 目も眩む一撃が空に向かって放たれると、魔物が一掃された。


「リッカ。今日は私の番じゃなかったのか?」


「うふふ。余りにも時間がかかっていたので~。つい~」


 うーむ。魔法攻撃力特化と言っても過言ではないな。

 翔んだ聖女もいたものだ。



 砦に着くと、ガルーダも降伏して来た。

 それもそうだな。あんな威力を見せられたら、戦う気も起きないだろう。

 今日は、私の番と思ったが、リッカに美味しいところを持って行かれてしまった。

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